なぜか異世界に幼女で転生してしまった私は、優秀な親の子供だったのですが！！

第304話 暖かいスープ

　〜私の部屋〜

「んっ...」

　薄暗い部屋の中、私は目覚めました。

　机の上やベッドの周りにはリタが置いて行ったと思われる人形たちで溢れ返っているのが見えます。

「お腹空いた...」

　そう呟きながら体を起こそうとするのですが、一歩も動けない程疲弊している事が分かりました。

(動けない...、だったら...)

「アアル...」

　力ない声で彼の名前を呼ぶと、どこからとも無く見慣れた白い小鳥が姿を表しました。

「カリン！！、やっと目覚めたんだね！」

　嬉しそうな声を上げる彼を眺めながら、私はゆっくりと口を動かします。

「アアル...、母さんを呼んできて...」

「分かった！、カリンはそこでゆっくりしてて」

　なんとか声が出たので一安心する私。

　ほっとして窓から外を見てみると、雲の色が悪く雨が降っています。

(なんか嫌な感じがするな...)

　なんとなくですが嫌な気配を感じる私は目線を動かして扉の方を見ていると...。

「カリンちゃん！！、目が覚めたのね！！」

　嬉しそうな表情を浮かべながら、扉を突き破ってくる母さんの姿がありました。

「母さん...」

　母さんの姿を見ると少し安心します。

　やっぱり親が近くにいるというだけで凄く心強いと思ってしまうのは、子供特有の本能なのでしょうか？。

　でも...何故でしょうか？。

　さっきまで嫌な気配があったにも関わらず、出てきたのは母さんでした。

　私が母さんの事を嫌だと思った事はあまりない為、やはり違和感がありますね。

「カリンちゃん！大丈夫！？」

　心配そうな表情でこちらに駆け寄ってくる彼女の姿は、まさしく母親と言った所でしょう。

　私の体調を確認した後に欲しいものがないかと聞いてきたので答えました。

「母さんの作った暖かいご飯が食べたいな...」

　それを聞いた彼女はすぐさま下に駆け下りて行きます。

「ちょっとだけ待っててね！、お腹に優しいスープを作ってくるわ！！」

　ササッと動いてくれたのか、スープが出てくるまでにそう時間はかかりませんでした。

「入ったわよ！、ゆっくり飲んでね...」

「うん...」

　母さんの作ってくれたコーンスープを少し飲んでみると、体全身に栄養が循環する感触が直に感じられたので驚きます。

「美味しい...」

　全く栄養のない体に母親の愛が染み渡っていくような感触は心地いい...。

「母さん...ありがとう...」

　それを飲んだのはたったの一口でしたが、関係ありません。

「少し...疲れちゃった...」

「カリンちゃん！？」

　その一口で充分満たされた私は、息を引き取るように眠りにつくのでした。