第281話 エレネアという少女⑥
「お前...何で...」
俺は思わずエレネアに声を向けました。
「さあね...、ただカリンを助けたくなったから...、とでも言っておきましょうか?」
「...ああ!充分だ!」
気力だけで復帰した俺は、力を振り絞り妹を抱きかかえながら脱出を試みる。
「逃すか!」
鋭い咆哮を上げながら、ルクルの奴が反撃してくるが、それらを全てエレネアが魔法で食い止めてくれた。
「あなたの相手は私!、カリンには手を出させないから!」
俺の貶した植物少女が、俺の妹の為に戦ってくれている姿を見た俺は、思わず笑みを浮かべた。
(なんだよあいつ...、本当に良い奴じゃんか...、キメラ計画...、後で調べてみるか...)
彼女の行動はどう考えても
あれだけ毛嫌いしていた彼女に助けられた事により、少しキメラという存在に興味が湧いてきたのです。
「エレネア...、任せた!」
彼女は何も言わずに親指を立てる姿を見た時、俺はもう一度笑みを浮かべました。
(ありがとう...、今度会えたら一杯奢ってやる!)
〜施設の外〜
「ハァ...ハァ...」
俺は全速力で走ってきましたが、所詮は傷を負っている人間の全速力。
あまり長距離を逃げれたような気はしません。
「くそっ...、思ったよりも早く走れねぇ...」
それに背中の痛みがジンジンと広がって行くのが分かる。
(いてぇ...、くそ!何弱気になってんだ俺!、俺が騎士団だぞ!民を守る騎士!それが俺だ!)
心で自分を奮い立たせ、もう一度逃げようと足を進めようとすると...。
「逃がさないよ...、2人ともね!」
例の声に俺は背筋が凍る。
(まさか...いや...だったらエレネアは...?)
恐る恐る後ろを振り向くと、そこにエレネアはいませんでした。
ただ...、彼の手には植物の苗の様な物が握られていたのが気になります。
「おいお前...、その手に持ってる物は何だ?」
「ああ...、これ?、これは特別なキメラが瀕死状態になるとこういう形態になって自身を守るんだけど...」
彼はその苗を上に投げ、黒いスライムが空中でプレスしたのです。
「木っ端微塵になっちゃったら意味ないよねw」
俺の目の前であいつはエレネアの命を奪った事に気がつき、不思議と怒りが込み上げてくるのでした。
「この...やろう!」
俺は怒りの感情のみが湧き上がり、いつのまにか奴に突撃していました。
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