第230話 実食
「いただきま〜す!」
私はつきたてのお餅をほおばりました。
びよ〜んとのびるその食べ物にどんどん惹かれていきます。
歯で噛んだ瞬間のパリッとした食感が楽しい。
総合して私の出したここ食べ物の評価は。
「美味しい!」
でした。
やっぱり食べ慣れた味ってやつは良いですね。
ちょっぴり醤油をつけてパクッと食べるという、日本人のオーソドックスな食べ方はこちらでも人気なやようです。
辺りを見回してみると、きな粉を付ける人や豆を混ぜる人など、様々な食べ方があるのは面白いと思えました。
まあ、前世から思っていましたけどね!。
どうでもいい事を沢山吐露しましたが、やっぱりお餅は美味しいという事が言いたいだけですよ〜。
「ふふっ...」
私が懐かしいこの味に笑みをこぼしていると兄がそっと手を頭の上に置いてこう呟きました。
「美味いか?」
「うんっ!、とっても美味しいよ!」
嘘偽りない本音を吐露します。
実際このお餅は日本の物と比べてみても勝るとも劣らない味と食感で私を歓迎してくれていました。
私があまりにも美味しそうに食べるのを見たアアルが頭の上から「僕も食べてみた〜い」とヨダレを垂らしていたので、彼の一口サイズにちぎって食べさせてあげます。
ハフハフと口を動かしながらゆっくりと飲み込んでいく彼。
「美味しい?」
「うんっ!とっても美味しい!もっと頂戴!」
「ハハッ、アアルは食いしん坊さんだな〜」
面白くなってきたのでどんどんちぎって食べさしてあげました。
あげるたびに嬉しそうな声をあげる彼を見ているとこっちまで楽しい気分になってきますね...。
(平和だな〜...)
ほのぼののんびり...。
思えばこんなにのんびりしたのは久しぶりだったかもしれません。
日本でいた時には母親の私に対する期待値が低すぎて辛かったのを覚えてますけど、カリンの母さんはそんな事がないので本当に良いです。
まあ、単純にカリンという少女のスペックが高いのが理由かもしれませんがこの体になってわかった事があります。
全ての人にはその人だけの器のような物があって、その中に収められる分だけしか人は手に入れられないということでした。
カリンになってからの私は、様々な事にチャレンジしてもだいたい上手くできていますが、餅月林華だった私は何をやっても上手く出来なかったのを覚えています。
そう思うとため息が出てしまうのでした。
(神さまって...、なんで1人1人にこんな格差を与えるのだろうか...)
私の世界に神さまはいませんでしたが、こちらの世界には女神クティルと呼ばれる神様が存在するらしいので、一度くらい会ってみたいものです。
...、すみませんなんだか暗くなっちゃいましたね。
餅月林華なんてこっちには存在しないも当然なので、こちらの世界を楽しまないと...と思う私なのでした。
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