第170話 三聖人の昔話

「エルシーさんはなんであんな事を...」


 私が訳も分からないあの行為について真剣に考えていると、エリサが私の頰を突いてこう言ってきました。


「まあまあ、何かと見間違えたんでしょ、人間に過ちは付き物だし今回は見逃してあげたらいいと思うよ」


 彼女はそう言い笑っていましたが、私は彼女の真意が知りたいのです。

 どうしても今頭の中に残っている言葉があったので、彼女に質問してみることにしました。


「ねぇエリサ、エルシーさんが言っていた輪廻教徒って何?」


 私がそう呟くと、彼女はポカ〜ンと3秒ほどフリーズしてしまいました。


「もしかしてカリンは輪廻教を知らないの?」


「うん...」


「学校で習うと思ったけど、あれは四年生からかな?、ちょっと早いけど私が教えてあげよう」


 彼女はどこからともなく取り出した黒板に白チョークで書き足していく。

 正直そんなに上手くはないイラストだが、ないよりかはわかりやすいと思うことにした。


「輪廻教、それは7年前の戦いの時魔女側についた軍団の一つ、他には新鋭隊と永遠教ってのがあって、どれもが等しく魔女様を崇高していたのでした」


 そのままの勢いで説明を続けて行く彼女を真剣な表情で見つめる私。


「だけれど魔女様はこう言いました「私はお前達が思っている様な永遠の存在ではない、お前達が追い求めているような神ではないのだ」と、ですがこの三教徒達はそれを信じず、魔女様を王にしようとクティル王国と戦争を始めたのです」


「それで、どうなったの?」


 彼女は一旦話を止めて、一呼吸置いたのちに再開しました。


「魔女教徒と王国軍の戦いは魔女教徒優勢に話が進んだのですが、それには理由があります、魔女様には内緒で教徒達が戦争に勝つために禁忌を犯したからです」


 ささっと魔法陣を描き禁忌の呪法の内容を語ってくれました。


「それは魔神の召喚でした、在ろう事か教徒達は異界の魔神を召喚し手なづけたのです、魔神の能力は圧倒的であり、鍛え上げられたクティル魔法騎士団ですら歯が立ちません、そんな魔神扱う魔女教徒達に抗うため、王国軍は三聖人に助けを求めたのです」


「三聖人?」


 一応復習の為に聞いておきます。


「剣聖フォロス、賢聖エルカ、拳聖レイン、この3人は王の命令の元徴収され正義の名の下に粛清を始めるのでした」


(母さんと父さんの名前がある...)


 息をごくっと飲み込みました。


「集められた三聖人の能力は凄まじく、劣勢だった王国軍は戦況を優勢に運んでいき、ついに魔神の撃破に成功、残すは魔女様と残党だけになったのですが、魔女様の力は凄まじく、三聖人ですら倒すことはできませんでした」


「その後魔女はどうなったの?」


 ここからが本番だなと思って期待が膨らむ。

 なんだろう、とてつもなく凄い魔法で吹っ飛ばしたとかかな?。

 ワクワクしながら答えを待ちます。

 ついに彼女の口が動きました。


「魔女様と三聖人の戦いの最中に、突如として現れた金髪の勇者に魔女様はワンパンでノックアウト、今では王城クティルの宝物庫に魔女様は魂を封印され、晴れてクティル王国に平和が取り戻されたのです、めでたしめでたし」


「はぁ!?」


 私は思わずエリサに飛びかかってしまいました。


「ちょっと!!勇者のあたりから全く意味わかんないんだけど!!」


「意味わからないって言われてもこれが教科書に載っている全てで嘘は言ってないよ」


「絶対嘘でしょ!それ!!、良いよもう!!自分で調べるから!!」


 私はプンスカ怒って教会を出て行きます。


(途中まで本気にした私が馬鹿みたい!、いいもん!母さんに直接聞いた方が早いから!)

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