第142話 皆浮かれすぎなのよ!

「あ〜もう!!」


 私は頭を掻きながら町を見下ろします。

 ここはクティル城のテラスで、聖人の二人と共に呼ばれていたのでした。


「あら、姉さんそんなに怒ってどうしたの?」


 妹が私の方を見ながら声をかけてきたのですが、怒って当然な事が今起きているのです。


「そりゃ怒るでしょ!護衛対象の姫様がここにいないのに6日目の謁見式と、最終日の封印際について話し合うなんて正気の沙汰じゃないわよ!」


 私はふーふーと息を荒げていると、フォロスの奴が優雅にお茶を楽しみながら声を発しました。


「プラム殿、そう怒らないでほしい、パニラ様も毎日城の中でいて退屈なされたのだろう、少しは外で遊ぶことを許しても問題はなかろう」


「人の子だと思ってその態度はないでしょ!、あんた一応騎士でしょうが!、姫様を守らないで何が騎士よ!」


 最もな意見を述べる私だったが、彼はお茶を飲みながらゆっくりしている。

 その態度が気に触った私は、彼に罵声を浴びせたのだが、その後彼はゆっくりと立ち上がりこう言い返してきた。


「では、今パニラ様がどこにいるかわかるのか?」


「それは...、わからないけど...」


「そう、今は分からない、だが町中には今頃兵士達が血眼になって探しているだろうから、いずれ見つかる」


「まあそうかもしれないけど、貴方が探しに行かない理由にはなってないわよね?」


「探索魔法も持たない私が行っても無駄足になるだけの確率が高い、ならばエルカに任せるのが妥当というものだろう?」


 確かに彼の言い分は間違ってるとは言い難いのだが、流石に妹でもこの町全土の中から一人の少女を探し出すのは苦労するだろう。

 現になかなか探索が終わらないので、それが私のイライラの原因になっていたのです。


「エルカ、まだ探索は終わらないの?」


「もうちょっと待ってね、流石に微弱な魔力しか持たない特定の人物を探し当てるのは難しいわ、どこかでパニラ様が魔法を使ってくれればすぐに飛んでいくけるんだけどね」


 そう言いながら王に用意されている洋菓子を頬張っている姿を見ると、力が抜けるような感覚に襲われるのは私だけだろうか?。


「皆浮かれすぎなのよ!、クティル王国祭はただの年中行事じゃないって皆知っているわよね!?」


「勿論知っているわ、けれどもう魔女が滅んで7年が経っているの、私がいる限り封印も問題ないしね!」


 可愛くウィンクをする妹を見ていると呆れてしまいます。

 そう、1番重要な事に気がついていない彼女に...。


「貴方が生きている間はいいわよ、けれど貴方が居なくなった後の事は考えてる?」


「えっ?」


 妹の表情を見る限り、そういった事は考えていなかったのでしょう。

 私はため息を吐きながら彼女にこう呟きました。


「エルカ、貴方も私もいつかは死ぬ、年老いて最後にはね...、そんな時に新たに魔女を封印し続ける存在が必要なの、例えば...、カリンとかね」


「それはダメ!」


 急に大きい声を上げながら真剣な表情で私の方を見てきました。


「姉さん、カリンちゃんを私の後継者にしようと思っているのなら諦めて、あの子には自由に生きてほしいの、自由を奪われこの地に縛りつけられるのは私だけでいい、大丈夫、魔女を完全に消す方法はきっと存在するから...」


 彼女の意見を汲んだ上で敢えて言わせてもらう。


「あれから7年あったのよ...、結果はどうだったのかしら?」


 その質問した時の沈黙は数秒なのに妙に長く感じた。

 数秒経ったのちに彼女は口を動かす。


「残念ながらないわ...、でも待ってて姉さん、私絶対に魔女を倒せる方法を見つけて見せるから!」


 そう言いながら無理に明るく振る舞う彼女。

 私だって妹を信じてあげたい、だけれど実際に対峙した私達だけがわかるあの存在の恐ろしさを再び復活させる事だけはあってはならないと私は考えている。

 あれは、決して人の手に負えるものではないのだから...。

 その後、私たちは妙な雰囲気になったテラスで、パニラ様が見つかるのを待ちました。

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