第44話 フォロス

「ローシュ...、公共の場では、そういうことをしないでいただきたい」


 私に抱きつく兄を見て、父は冷たく呟いた。


「なんだよ...、久しぶりに妹に会えたんだからちょっとくらいいいだろ?」


 兄は少し不機嫌そうに私から離れた。

 正直言うと助かった。

 兄貴の愛情は嬉しいのだが、ここまで露骨だと少し恥ずかしい。

 それに、私からすれば同年代くらいの男の子に抱きつかれたので、胸の鼓動がドキドキしていたのだ。

 私は父の方を見ると、彼は私を見下ろすように視線を向けてきた。

 初めて見る自分の父親は、思ったよりも細い感じがした。

 痩せているとはいえ、筋肉はしっかりとついているようで、細マッチョといった感じだ。

 兄もそんな感じの体型をしているので、遠目からだとどちらかわからないだろう。

 それほどまでに体型と見た目が似ているのだ。

 ただ、近づいてから見てみると顔の老け具合でどっちかが分かるといった様子だ。


(この親子似すぎ!)


 前世ではここまで似た家族などテレビの中でしか見たことがない。

 たま〜にテレビで見る、兄弟の芸人などを見たときに似てる!と思う感覚に近い。

 私が2人を見上げていると、母さんが近づいてきた。


「ほらほら2人共、せっかく家族が揃ったんだから、今夜はゆっくりと話しましょう?」


 父さんと兄さんは、母さんの言葉を聞くと頷いた。


「そうだな...、カリンの学校の話など聞いておいた方がよいか...」


 父さんは堅物そうだが、意外と娘の心配などしているのだろうか?。

 なぜか私の学校での生活ぶりを聞いてくるので、毎日楽しく学校に行けてると伝える。


「カ〜リン!、今度に〜にとどっか遊びに行こうな!」


 に〜にと言う言葉気に入ったのかやたらと使いたがる兄貴。

 気に入ってくれたのならばいいのだが、将来的には使わなくなると思う。

 自分自身、に〜にというのは恥ずかしい...。

 今はまだ小1なのでいいが、流石に中学に入る頃には兄さんなどに変えたい。

 だが、思ったよりも2人とも話しやすいと感じたのは、やはりこの体がカリンだからだろうか?。

 初めて会ったはずなのに初めて会った気がしないという不思議な感覚を味わいながら夜のパーティを楽しんだ。





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