　私は登校中に彼女に出会った。

　栗毛の可愛らしい短髪が似合う彼女は、私に気がつくと挨拶してくれた。

「おはよう！リタちゃん！」

　その言葉だけでノックアウトしてしまいそうになる私だったが耐える。

「お...おはようカリンちゃん...」

　オドオドしながらでも挨拶できたので、内心ではガッツポーズをする。

「昨日は、お人形ありがとう！お礼に私の気に入っている本をあげるね！」

　と、一冊の短編小説を渡してきたのだが、どう見ても市販の本には見えず、オリジナル感が満載であった。

　そう思うと胸が熱くなりま、ポロポロと涙が自然に溢れふ出してきた。

「ちょ！、どうしたの！、もしかして気に入らなかった...？」

　彼女の顔ががっかりしたようにうなだれたので、私は涙を拭きながら「違うよ」と呟いた。

「ただ...、うれしかったから...、それにこれはあくびしただけだよ...」

　あくびなどしていないが、本心を隠すために敢えてそう言った。

　彼女もそれを聞いて「そうなの？ならよかった」とほっとしたような顔をしたので安心する。

　その後二人で一緒に登校した。

　彼女から貰った本を片手に握りしめて、私は束の間の幸福を感じていた。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい