第13話 異世界の家

 私は朝食を終えると、探索を開始した。

 アアルを頭に乗せて、気分は冒険者にでもなったような気さえする。

 自分の家なのに、異世界の家というだけで冒険心をくすぐられる自分は、すっかりラノベの主人公のようだった。


「よし、アアル!一緒に探検しよっか!」


「クピピィ〜」


 私に挨拶をし返すように小鳥は鳴いてくれたので、少し嬉しくなる。


「っとその前に食器を洗わないとね〜」


 私は食器を持って台所にあるシンクに置いて水を出す為に蛇口に手を置く。

 ある程度の生活の知識は、学校や親から学んだので分かっているつもりだ。

 例えばこの世界の蛇口は、魔力を込めるとオンオフが切り替わるタイプの物であり、水関連はだいたい全部これに該当する。

 蛇口部分に魔道具と呼ばれる丸い石の様な物が付いているので、それに触りながら魔力を込めると水が出てくるのだ。

 最初は魔力を込めるということがよくわからなかったが、やってみると意外と簡単で、すぐに当然の様にできるようになった。

 ささっと洗ってしまうと、今日の楽しみである家の探索を始めた。

 まあまあ大きい家だが、探索すればすぐに内装のチェックは終わるだろう。

 まあせいぜい2階がある程度の一般的な家なのだが、前世ではマンション暮らしだったためか、一軒家は広く感じる。

 まずは二階にある自分の部屋に戻る。


「やっぱりぬいぐるみが多いな...」


 元のカリンの趣味なのか、動物のぬいぐるみが多い。

 自分にはこういう趣味はないので、大きくなったら本物のカリンには悪いが全部捨ててしまおうと思う。まあ、自分の部屋は何度も入っているし今更探索することもないかなと思いつつも、隠し扉とかないかなと考えてしまう。

 ベッドの下や本棚の隙間をくまなく探すが、やはりそんなものはない。

 私は残念そうに自分の部屋を出て次、の部屋に向かう。

 私の部屋の横にある、母さんの部屋だ。

 自分の母さんの部屋なのだが、なんか少し気まずい。

 やはり自分の親といえど、餅月林華からすれば赤の他人なのでやはり悪い気はする。

 でも、好奇心には勝てない。

 私は母さんの部屋に入って見た。

 小綺麗にまとまった机の上に、怪しい魔術書の本が数冊乗っている。

 試しに読んでみようとすると、難しい文字やイラストでちんぷんかんぷんだった。


「母さんってこんなの読んでるんだ...」


 凄いとは思うけれど、何が凄いか言えと言われると答えられない。

 例えるなら、小学生に大学生の論文を聞かせる様なものだろう。

 子供に判断出来る領域を遥かに超えているので理解ができないのだ。

 頭が痛くなってきたので、本をそっと閉じた。


(大人になったらもう一回読んでみよう...)


 今の自分には難解すぎる文章なので、大人になったら読んでみようと思う。

 本を読むのは好きな方なので、勉強本以外であればぜひ読んで見たい。

 この本も魔法に関する情報で興味はあるのだが、今は我慢だ。

 せっかくの本も自分で読めないのであれば意味がないから...。

 母さんの部屋には本棚とベッドくらいしか置いておらず、キャピキャピな母さんからは思いつかないくらいの知的な部屋というイメージだ。


(意外と私の母さんって頭いいのかな?)


 よく見ると難しそうな本が多く、簡単なタイトルの本は一切ない。

 でも、この本の表紙を見ているだけで気分が悪くなってきた。

 難しい文字を見すぎたのかな?、なんかえらい...。

 頭を抑えながら、ゆっくりとドアに近づいていく。

 母さんの部屋から出ると、咳を混み始めた。


「なに...?、やっぱり...なんか変...」


 足がおぼつかず、呼吸が乱れる。

 胸に手を当てて必死に呼吸する。

 嫌な汗が身体中から滴り落ちるのが、本当に心地悪い。

 吐きそうにまでなったので、私は自室に這いずりながら戻る。

 出来ればトイレに向かいたかったのだが、一階に行くまでの元気がない。

 ベッドに入る元気すらもなくなったので、床で目を閉じると、そのまま意識が遠のいて行く。


(まずい...死ぬ...)


 冗談ではない、本気で死ぬと思える。

 意識を保とうとするが、それができないほどの眠たさを感じる。

 今日はしっかりと眠っていたのに、もう眠たさを感じるなんて異常だ。

 普通8時間ほど眠った後に、3時間だけ起きてもう眠気を感じるだろうか?

 身体に力が入らず、冷たくなって行くのが分かる。

 死ぬ、間違いなく眠れば死ぬ...。

 だが、瞼が重くなるのを止めることができない。

 ついに耐えられなくなった私は、永遠の眠りにつくかの様に静かに寝息を立てた。











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