第66話 絶望を前に
「右手が使えない以上、もう《
冷静に
「《
俺は激情に駆られるまま言葉を投げつけて言い捨てると、
「フン――ッ」
軽く間合いを詰めてきた《
大きな放物線を描いた俺の身体は再び地面に激突し、そのまま地面を転がってゆく。
「かはっ――こんにゃろ……滅茶苦茶やりやがって……なんつー腕力だよ」
もう一度身体を起こすものの、くっ、立ち上がることにすら疲労を感じはじめている……!
「ふむ、事ここに至ってもなお、《想念》を使いこなせないのか――正直失望したよ」
「このクソが……っ」
「そんな極上の《想念》を持ちながら、そして強固な戦う意志を持ち合わせながら、なぜだ? 何のために君は鍛錬を重ねてきたのだ。その全てを今ここで披露せずに、いったいいつ見せるというのだ?」
「てめぇは俺が、討滅する! 俺が今、ここで……っ!」
「はぁ、もういいよ、もういい」
《
ヤツが初めて見せた飛び道具。
だがあまりにも雑すぎる攻撃のそれは、手負いの身体でもかわすことはたやすかった。
本当に俺という存在そのものに興味がなくなったかのような、無造作極まりない攻撃だったからだ。
「んなもんに、当たるかよ……っ」
続けてもう一発、同じような攻撃が飛んでくる。
しかしまたもや無造作に放たれたそれには、先読みも意図も何も存在せず、避けるのは余りに簡単で――簡単すぎて――つられるように俺も無造作に避けた――避けようとしてしまい――。
かわそうとした、その刹那だった。
「マナカ――?」
――すっと俺の視界の片隅にマナカの姿が映りこんだのは。
あの高い木の上からどうやってか降りてきたマナカは、運悪く《
「あの馬鹿――っ!」
全てを理解したその時にはもう既に。
考えるよりも先に俺は全力をもって身を投げ出していた。
すでに回避を終えかけていた身体を無理やりもう一度、射線上へと飛び込ませる――!
完全なノータイム。
義務感ではなく、強迫観念でもない。
それは純然たる己の意思。
心のままに行った本当に自然な行動で。
マナカを庇うように射線から動かなかった俺を、《
「くは――っ、ごふ――っ」
右肩口から左脇腹に抜けるように、袈裟掛けに鋭い衝撃が駆け抜ける。
遅れて鮮血が盛大に吹き上がった。
あまりに綺麗なそれを見て、まるで赤い噴水のようだと、他人事のように思ってしまった。
ザックリと斬られた俺はたたらを踏みながら、しかしこらえきれず。
俺はゴフッと、大きな血の塊を吐きだした。
そのまま腰くだけになって、しりもちをつきながら仰向けに地面へと崩れ落ちる。
天地が入れ替わった視界に、慌てて駆け寄ってくるマナカが見えて。
俺はそのまま上半身を抱き起こされていた。
ったくこいつは――
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