そろそろ、契約更改が気になる季節の新井さん
埼玉 000 000 100 1
北関東 000 010 001× 2
勝 碧山 7勝14敗 負 上野 8勝8敗
本塁打
埼玉 川山37号ソロ(7回表)
北関東シェパード14号ソロ(5回裏)
北関東が劇的なサヨナラ勝ち。北関東は5回、シェパードのソロホームランで先制すると、同点で迎えた9回の2死2塁のチャンスに、新井がレフトへサヨナラタイムリーを放って試合を決めた。
先発の碧山がテンポのいい投球で9回1失点の好投。7勝目を挙げた。敗れた埼玉は好投した投手陣を援護出来ずに痛い敗戦。4位東北にゲーム差なしに並ばれてしまった。
試合後談話
勝利投手の北関東先発、碧山。
「今日はいい間合いで投げることを意識しました。セットポジションからの投球も、思ったよりもしっくりきて、ストライク先行でいけたので、バッターのインコースを思い切り突いていけた。今日みたいなピッチングは自信になります」
先制ホームランの北関東、シェパード。
「ピッチャーがガンバッテいたので、ホームランを打ててヨカッタ。次もウテルようにガンバル。パイオツカイデー」
同点ホームランを放った埼玉4番川山。
「打ったのは高めの変化球。上手く捉えることが出来た。今日は打線全体が力んでいる感じで裏をかかれて抑えられてしまった」
今シーズンも残すところあと8試合。
1ヶ月前までは、あと30試合以上もあるよ。だりいなあなんて思っていたのだが、早いものでもう10月になってしまう時期。
そんなに試合をこなしたっけなどと思ってしまう感覚に陥るが、阿久津キャプテンには、それだけ毎日が充実している証拠だとそんな風に言われた。
東日本リーグも西日本リーグも、上位のチームは目に血が走っている状態でペナントレースの佳境となった戦いに身を投じているのだが………。それに比べて最下位が確定しているうちのチームは穏やかだ。
この日は火曜日のナイトゲーム。横浜ベイエトワールズとの2連戦。いつものように午後1時過ぎにクラブハウスへとやってきたが、最近は隣接する室内練習場から打撃練習をする音は聞こえない。
夏場まではよく俺を含めて若手の連中が、昼飯をクラブハウスでかきこむようにして済ませたら、順番に並んでマシン打撃をしたものだけど。
最下位が確定してしまった今、その時の熱気みたいなものがなくなってしまっているように思えた。まあ、みんなどこかでやってるはやってるのだろうけど、疲れがMAXになるか時期でもあるしね。
まあ、年間144試合ある長丁場なプロ野球の流れとしては自然といえば自然なのだが、なんだかそれが少し残念には感じたりもする。
そんな考えは俺が入団1年目のルーキーだからなのだろうか。
「おはようございます」
「お、新井か。おはようさん」
クラブハウスの食堂にて。ちょっと遅めの昼飯にきつねうどんとシャケのおにぎりをお盆に乗せた俺は選手の中では唯一姿の見えた鶴石さんの向かい側のテーブルに着いた。
時折ブラックコーヒーを啜りながら、スポーツ新聞を広げている。
「すごいな、お前の打率。4割8厘かよ」
鶴石さんがスポーツ新聞越しにそう呟いた。
「ええ。まあ、俺にはそれしかないんで」
「もったいないよ。もう10日でも1軍上がるのが早ければ規定打席に到達して、歴史が変わるところだったかもしれないのにな」
確かにそれはそうかもしれないが、規定打席に届かないから今も楽に打席に入れて自分のバッティングが出来ているという部分は大いにあるからね。
打率4割になるかならないかの瀬戸際の1打席で冷静なバッティングが出来るかどうかと考えたらかなり難易度は高そうだ。
「まあ、規定に乗らないにしても、なんとか打率4割はキープしろよ。そうすれば暮れの契約更改で年俸が跳ね上がるだろうからよ。今お前いくらだっけ?」
「320万っす」
「そうか。……お前はホームランがないからな。打率4割で10本くらいホームラン打ってれば見映え良くて、3000万くらいにはなるかもしれないけどな。………社会人1年目というのを考えると、いいとこ2600ってとこかな」
プロ15年目。年俸6800万円の鶴石さんの年俸査定はそんな感じだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます