第25話 癖

 多分、それは≪彼≫の癖だった。


「歩かないの?」

「歩いてるだろ」

「そうじゃなくて、隣」


 振り返れば、≪彼≫はいつも私の後ろを歩いていた。


 最初は隣が嫌なのかと思ったけど、そうじゃない。

 ≪彼≫は家族相手に対しても、似たような対応をしていた。


 同い年の男子と比較すれば、そこまで身長が高いわけではないのに、

 いつも列を作れば、席替えをすれば、

 決まって≪彼≫は後ろにいた。


「いい。後ろでいい」


 後から考えれば、≪彼≫の病気が≪彼≫にそうさせていたのだろう。

 だけど、それだけじゃない気がする。


 なんとなく、≪彼≫は、

 自分自身に引け目を感じて生きている。

 

 そんな気がした。

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