第13話 フールフール嘘が降る
昨今は不況のせいか、社会全体がギスギスとした雰囲気。四月一日のエイプリルフールにしても、新聞がささやかなジョーク(釣り)記事を載せた途端に一部の読者から苦情が殺到したりと、遊び心の足りない風潮には嫌気が差します。お気楽に騙し騙されを楽しめる場所は、もはやインターネットの仮想空間にしか残されていないのかもしれません。
そんな状況も踏まえて、現在のエイプリルフールは一種の闘い。個人・企業を問わず、いかに罪のない嘘を多方面に広めるかが勝負になっています。主戦場は流行りのSNSで、Twitter、Facebook、Instagram、TikTok等、拡散力のある場所でジョークを発信。ある意味で作り手の良識が試される、知的なコン・ゲーム(信用詐欺)とも言えるでしょう。
騙される側からすれば、手の込んだジョークは
その一方で注目すべきは、一度発信した嘘を後日に真実と言い切る二重の罠、いわゆる【嘘から出た誠】。
例えば、二〇十九年四月一日に東映公式から発信された『仮面ライダードライブ』スピンオフ作品『仮面ライダーブレン』の公開予告は、ツイート内のハッシュタグ「#エイプリルフール」にそれとなく「?」マークを付記。ジョークと思わせておいて実は正式な予告という、巧妙な引っ掛けでした。
結局『ブレン』は同年の四月下旬に動画配信サービス「東映特撮ファンクラブ」にて公開開始。現在、全二話が配信中です。
また、二〇十八年のエイプリルフールに電撃結成および解散したガールズバンド「BAND-MAIKO」も、一年後に新曲を引っ提げて再登場。やはり【嘘から出た誠】の好例になります。
舞妓とハードロックの融合をコンセプトに活動する彼女らは、YouTubeなどの動画サイトで美しい着物姿を披露。新曲のプロモーション映像を流し、さらにはミニアルバム発売の宣伝をしたりと手回しが良い。鮮やかな手口です。
元々はハードロックバンド「Band-Made」が改名した派生バンドですから、これをきっかけにさぞや新規のファンが増えた事でしょう。
こういった活動は、実は昔から色んな成功例がありまして、二〇十三年にHBCテレビ(北海道放送)でPRアシスタントを務めたバーチャルアイドル、「重音テト」もそれらに該当します。
ただの美少女キャラクターかと思いきや、その実態は二〇〇八年のエイプリルフールに電子掲示板2ちゃんねるの利用者達によって形成されたジョークコンテンツ。それが有志の尽力で歌唱用音声ライブラリに昇華され、ついにはクリプトン社のボーカロイド・初音ミクと肩を並べるまでに成長したという訳です。
近年ではボーカロイドと歌舞伎のコラボレーション「超歌舞伎」にゲスト出演してましたし、元がジョークコンテンツとは思えぬ大物振り。ニコニコ動画で「嘘の歌姫」と称されていた頃が懐かしい。
なお、海外においてはエイプリルフールの午前中が嘘つきタイム、午後がネタばらしタイムと決まってます。日本では余り浸透していないルールですが、とんでもない嘘を付けば付くほど、早急にネタを割らないとトラブルになるので賢明な処置かと。それにネット上のジョーク記事は、長時間放置すると炎上案件に化ける危険を
不謹慎なジョークに定評のあるイギリス国営放送(BBC)は、毎年の様に大げさなフェイクニュースを発信してますが、どれほどクレームが来ようと全く嘘を自粛しません。むしろCG技術が発達した分、悪ノリに磨きがかかっている様な……。
伝説のコメディ番組『Monty Python's Flying Circus(空飛ぶモンティパイソン)』を輩出したテレビ局は、やる事がひと味もふた味も違いますね。その気概が逆に頼もしい。
自分が覚えてる内で傑作と呼べるフェイクニュースは、二〇〇八年にBBCが公開した「Flying Penguins(空飛ぶペンギン発見)」。南極のペンギン達が渡り鳥のごとく上空を飛び回る映像は、日本のテレビ番組でも紹介されて絶賛の嵐でした。現在のCG技術でリメイクすれば、もっと自然な動きになるかな?
当時の映像はYouTubeのBBC公式チャンネルにて、視聴が可能です。
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