第7話 冗談は音楽だけにしておけ
漫画家にも色んなタイプが居ます。児童向けの健全明朗な物語を描く人、青年向けの過激な色気を描く人、新聞に掲載される様な社会戯評を得意とする人。
自分の経験してきた趣味や職業をそのまま作品に投影させる人も居るでしょうけれど、ここで紹介するのは三十四歳で夭逝するまで音楽に特化した作品を描き続けた異色の才人、Gerard hoffunung(ジェラード・ホフヌング)。漫画ファンよりも音楽ファンの間で名が広まった人かもしれません。
イギリスの風刺漫画家であるホフヌング氏は、音楽ネタのヒトコマ漫画を得意としていました。
実際に音楽方面の造詣も深く、自らの企画によるコンサートでは指揮棒を握るほどの熱の入れよう。彼の構成するコンサートは漫画と同じく笑いに重点を置いた冗談音楽で、ミュージカル仕立てで進行する為、演者たちのオーバーアクションも相当なものでした。
この辺のリハーサル風景はYouTubeで「HOFFUNUNG 」もしくは「HOFFUNUNG MUSICAL FESTIVAL 」という言葉で検索すれば、容易に視聴する事が出来ます(二〇一八年現在)。おそらく、一九五六年か一九五八年辺りのニュース映画が投稿されてるのでしょう。パブリックドメイン扱いになってるのかな?
ホフヌング氏ご自身は突然の体調不良で一九五九年に急逝してしまいましたが、彼の志を受け継いだ者たちが、今でもどこかで冗談音楽のコンサートを開催し続けております。
日本国内で彼の漫画が最初に紹介された時期ははっきりしてません。見つけやすいところで、昭和の大人向け漫画雑誌「文藝春秋 漫画讀本」昭和三十三年(一九五八年)四月号。日本語翻訳版の漫画『ここにも泉あり』が掲載されております。残念ながら内容は未確認ですが、ホフヌング氏は音楽ネタ以外の漫画も手掛けてますので、近い内に古書通販で購入し、詳しく確認する心づもりです。
それと、アカデミア・ミュージックから発売されている音楽絵本シリーズの方も、入手を考えてる最中。実は先にYouTubeの投稿動画でテレビアニメ化されたバージョンを観て、その結果、原作を読むタイミングを完全に見失ってしまいまして。これは何とかせねばなりません。「内容は知ってるし、買うのはいつでもいいか」などと思ってるといつまでも買えない。
ちなみに音楽絵本シリーズの邦題は『ホフヌングの音楽祭』『ホフヌングの音響学』『ホフヌングの音楽の手引き』『ホフヌングの ざ・まえすとろ』『ホフヌングのいすとり遊び』『ホフヌングの おもしろ・おーけすとら』『ホフヌングの ゆーもあ・ゆーもあ』などがあります。知ってるだけで七冊。他にもまだあるでしょうか。
前述のテレビアニメはホフヌング氏の死後に発表されましたが、いずれも台詞はなく、絵と音響だけで内容を理解出来るサイレント喜劇。過去のホフヌング音楽祭にも参加していたイギリスの作曲家フランシス・シャグラン氏によるBGMの効果もあって、出来映えは秀逸です。
ただ一つ留意すべき点は、これが相当昔のアニメであるという事。ポリティカル・コレクト(中立的表現)という概念が世間に浸透していない時代の作品ゆえ、エピソードによっては現代の人権感覚にそぐわないシーンも出てきます。視聴にはご注意を。
そんなこんなで、劇中のクラシック音楽と漫画の面白さを一気に楽しめるアニメエピソードとなると、お薦めは『The Hoffnung Maestro』(一九六五年)になります。
とあるコンサート会場で働く一介の掃除夫が、清掃作業中にこっそり指揮者のタキシードと指揮棒を拝借してなりきりゴッコ。人目がないのを良い事に、心の中に色んな楽曲を流し、それに併せて指揮棒を振って遊び倒します。合間に出てくる、曲の内容にちなんだ様々なイメージ映像も彼の空想によって生まれた物。
ラストにおいては、あっさりと現実に立ち返る姿が
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