第5話 際立つスケルトン
最近やたらと透明な飲料水が発売されてます。ミネラルウォーターさながらの透明度で、実は炭酸飲料だったりミルクティーだったり。誤飲の原因になるので個人的には感心しませんが(糖尿病患者が飲んだら大変)、こういった飲み物が出回るのはそれなりに需要があるからでしょう。
飲料水に限らず、デザインを透け透けにして評判になった商品は過去にもありました。例えばAppleのiMac G3(iMac第一世代/一九九八年発売)。流線形CRTディスプレイで初期のカラーはボンダイブルー一色のみ。後にカラーバリエーションが刷新され、グレープ、ストロベリー、タンジェリン、ブルーベリー、ライムの五色に固定されました。別名「キャンディーカラー」。これらのスケルトンを基調にしたカラーリングは、二〇〇一年まで続きます。
これらのiMacを横から見ると、まるで半透明の三角おにぎり。そして付属するマウスはまるで半透明の丸いモナカ。あんまり丸すぎて、もしこれがワイヤレスだったら前後の区別が付かなくなったに違いありません。
さらにタワー型パソコンのPowerMac G3に至っては、殆ど半透明のオカモチ(ラーメン屋の出前持ちが使うアレです)。白物家電のデザインじゃあるまいし、よくあそこまで冒険出来たものです。だからこそ、当時のAppleの経営状況が上向きになったという説もありますが。大衆に受け入れられたんでしょうね。
その後、Appleの成功にあやかって携帯電話やゲーム機、プラモデルの類にもスケルトン・タイプが登場しました。平成生まれの人はご存じないであろう銀塩フィルム式の使い捨てカメラや、パソコン用の物理メディアFD (フロッピーディスク)のボディさえも、ピンクやブルーの半透明にしてしまう商魂は恐ろしい。ブームの追い風という奴です。
さて、そんなスケルトン・ブームもとうに過ぎ去った平成末期の現在。しかしながら、洋服のファッションと同じく流行は数十年ごとにぐるっと一回りして戻ってくるので、油断はなりません。果たして今後の展開はどうなりますやら。
技術力の進歩に伴って今やどんなジャンルの品も半透明化出来る様になり、以前ほどの稀少性はなくなりましたが、消費者の心を捉えるデザインであるのは確かです。
一過性のブームとは関係なくスケルトン・タイプを提供し続けてるのは、楽器メーカーくらいではないでしょうか。判りやすい例で、XJAPANのYOSHIKIが使っているKAWAI製クリスタルグランドピアノ。六百二十万円もするので一般庶民には縁遠い存在ですが、たまにシティホテルのラウンジや地方都市の文化ホールで見かける事もあります。
他にも透けてるバイオリンとかギターが流通しているはずですが、性能はさておき、透けてるというだけでステージ映えしそう。気楽に買える廉価版のオモチャだと、百均に半透明カラーのリコーダーが並んでいたりしますね。
今までの人生で現物を目にした事がない幻の半透明グッズと言えば、一部地域のコンビニで限定発売された『日清カップヌードル スケルトン』(一九九九年)。透明のプラスチック容器に中身を詰めた、ただそれだけの商品です。
通常の発泡スチロール容器に比べて熱伝導率が高く、片手で持って食べるには少々不便だったみたいですが、横から眺めると小学校の科学教材みたいで面白そう。
熱湯を注いで三分待つ間に、麵が対流の後に徐々にほぐれ、かやく(具)と共に水分を吸収して膨れ上がる様子をじっくりと観察してみたい。本気で再発売を願います。
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