でも先輩だよ?

「そういえばなんでセレナちゃん先輩にタメ口なの?」


 俺とルナがパソコンで執筆しているとブルースカイが突然思い出したかのように聞いている。


 あーそういえばそうだな。

 俺別に先輩後輩で敬語使うの気にしてないからなぁ。

 どちらかといえばあの生意気な態度の方が気になる。


「なんでって、そりゃそいつが私より人気がないからよ」


 出たよ、自信過剰な発言。

 それで俺の心えぐってんの知ってんのかね。

 面白いじゃなく人気って言ってるから反論もできないし。


「えー、でも先輩だよ?」


 先輩ってだけで人気については否定してくれない。

 これが書籍作家さんとの差か。


「葵そいつの作品読んだことあるの?」

「ないよー」

「読めばわかるわ。尊敬する必要が全くないことが」

「お前最初から尊敬してなかったけど?」


 そうだ、こいつは最初から生意気な態度しかとってない。

 俺に冷たい態度をしてくる。

 というかこの部は実力至上じゃないから作品で尊敬とかでもないんだけど。


「私より人気がないのなんて元からわかってることよ」

「俺はいいけど他にはそういう態度やめとけよ。ほんとに人気作家にやったらどうすんだよ」

「へー、人気ない自覚あるのね」

「まぁ書籍作家さんと比べるとな」

「……先輩書籍作家とか関係なく普通に人気ないですよね。私知りませんでしたし」


 なんでわざわざそういうこと言うかなぁ。

 俺のこと傷つけるのってそんな楽しいか?

 俺は悲しいよ、こんな後輩ばっかじゃ俺ほんと辛いんだけど。


「まぁとりあえず読んでみます。セレナちゃんがこんなにも否定的なのも気になりますし」

「そうか、何作かあるけどどれからでもいいからな」

「……私はお勧めしないけど。無理だけはしないようにね」


 おい、どういう意味だ、コラァ!

 無理しないようにって小説読む人にするセリフか?


 そうしてブルースカイが俺の作品を読み始めたので俺とルナは執筆に戻ると思っていたが、ルナが話しかけてきた。


「目の前で自分の作品を読まれてるけどどういう気持ちなのかしらね」

「ん? ああ、そりゃ最初は恥ずかしかったけどこの部に居たらもう慣れたよ」

「そういうものかしら」

「なんならお前の作品今読んでやろうか?」

「あなたの駄作で恥ずかしくないのかってことだったんだけど……」

「駄作って思ってんのお前だけだからな!」


 怒鳴って少し前のめりになってしまう。

 俺とルナは机の端と端にいるから勢いで体が前に出てしまった。

 なんで端と端なのかといえば俺がいつも通り端っこに座ったらルナがその反対の端に座ったからだ。

 あと、ブルースカイはルナの隣に座ってる。

 だから俺一人。別に悲しくないよ。


「ちょっと近寄ってこないでよ」

「なんでだよ、こんな遠いんだからちょっとくらい関係ないだろ」

「それ以上近づいてきたら……妊娠するわ」

「しねぇわ! わかってて言ってんだろ!」


 流石にそういうの創作上の話ってわかってるよな?

 二次元のこと鵜呑みにしてないよな?


「そんなの当然よ。わかってて言ってるに決まってるでしょ」

「……それはそれでタチ悪いわ」


 そのときふとパソコンから顔をあげてこっちを見てきているブルースカイと目が合う。

 俺とルナが言い争いをしているのにブルースカイが話に入りたそうにしているようだ。

 口喧嘩に入りたいなんて珍しいやつだな。


「……先輩、セレナちゃん妊娠させないでくださいよ?」

「いや、させないからな!」

「させたくないんですか? こんな美少女なのに?」

「そういう話じゃないから!」

「大丈夫よ、葵。これの性癖は年上だから」

「……」

「……」


 なんでそれ言うの?

 別に言う必要なくない?

 ほら、ちょっと引いちゃってんじゃん。

 なんでこいつ後輩に性癖の話してんの?って顔だよ。


 もうやだ、この話続けてたら俺の身が持たない。


「そ、それで俺の作品読んでくれたのか?」

「まぁとりあえず短いの一つ読み終わりましたけど」

「お、そうか。どうだった?」

「……あれを読めたのね。つまんなかったでしょ」


 ほんとこいつブレないな。

 なんでそんな俺の作品否定したいの?


 ブルースカイが読んだのは早かったし最近投稿始めたあの作品かな?


「先輩のは……その、なんというか、残念ですね」


 ちょっとオブラートに包んでくれてるけど面白くないってのがはっきりと伝わってくる。

 だって哀れんだような目でこっちを見てきてんだもん。

 やめてその目。悲しくなるじゃん。


「内容もそうですけどなんで何作か出してどれも完結してないんですか?」

「え、だって新しいの思いつくから」

「完結させれないのに新しいのばっかの人って読んで貰えなくなりますよ?」

「い、一応全部進めてるから。完結目指してるから」


 読まないとか言わないで。

 酷評だって我慢するから読んでください、お願いします。


「つまんないのに無駄に大量生産するなんて、無意味な行為よね」


 心の中で泣く泣く土下座してるとルナから罵倒の声が聞こえてくる。

 こいつはほんと毒しか吐かない。

 もうちょっと優しく言って。

 なんでそんな俺のこと全否定すんの?


「わかった、完結させればいいんだろ。とりあえず一つ完結させるよ」

「そうすべきですね」

「完結しても人気は増えないわよ」


 ルナの毒舌は無視する。

 だってこいつの聞いてたら俺の心折れるから。

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