第21話 城内探索
城にたどり着く。城の位置は入場門から見て最奥、城下町よりも一つ小高い山の上に位置している。城下町は明かりが和やかでどんちゃん騒ぎをしたら楽しいだろうな・・・と思うような明るさ。それに対して城の方向を見ると、わいわいとした楽し気な雰囲気はなく、厳かな雰囲気を感じさせる明るさが出ている。今からその場へ行かなければならないと思うと、途端に空気がピりつき緊張感が生まれると同時に胃痛がキリキリと自分を苦しめる。
「そういえば助けるという一心で忘れてたけど学校でもクラスの前とかでしゃべるの苦手だったな・・・」
やる気に満ちていたはずの気合がほかのことを考えすぎた挙句ぷすぷすとしぼんでゆく。
ここで一つ深呼吸。
「すーはーすーはー。ん?・・・ひっひっふーひっひふー」
・・・それは深呼吸じゃないラマーズ法じゃん。とかなんとか言って自分に突っ込みを入れる。
まだ自分で冗談を言えるってことは平気なんだと自分で解釈。そしてほかのことをできるだけ考えないようにして、城へと入場する。
気づいたときには城のエントランスともいえる部分に自分は立っていた。何度も周りを確認し、入り口が正面の扉しかないことを確認すると同時につかまってもいいや見たいな投げやりの気持ちで城へと突入したのは覚えている。
明かりは煌々と焚かれているのに対して全くの音がしない。城内はいろいろな人が昼夜行きかっていると勝手に思っていたため少し拍子抜けした気分になりつつも、逆にこの無音さが不安と寂しさを煽る。
城内には兵士なんてものは存在しない。まるで城内には兵士なんてものはいらないと言っているかのようである。
無言、無動作のまま城内をぐるりと一周見渡す。例を挙げるとするならば、初めて行った人の家で家主から入っててよとか言われて入ったはいいもののどうすればいいのかさっぱりわからず硬直状態のままあたりを見渡すだけのものと化すみたいな・・・。
「ここからどうしよう。」
城というだけあって大きさは思っていた以上にあった。ついでに言うと、それだけの大きさがあるということは、それだけ探すだけの場所があるというわけで・・・下手に城内をひっかきまわすとそれだけ人とエンカウントする率が高まるのは目に見えている。そして自分にはそれをごまかすだけのトークスキルというものは傍から存在していない。急に他人に話しかけたら硬直。きょどりとともに、大鬼ごっこ大会が始まりそうである。
「まずいったん考えを落ち着かせよう。」
そう呟いて部屋の角を探す。よくさ、考えをまとめたいときって広い部屋でうーんって考えるよりかは、すみっこで体育座りとかして考えたほうが考えってまとまらない?秘密基地とか言って小さな小部屋とか見つけるとそこに入りたかったり、小部屋がある家にあこがれをもったりとかしない?
・・・
てなわけで部屋の角を探す。この城はどうやらエントランス兼ホールみたいになっているらしく床はふっかふかのじゅうたんが敷かれている。そしてじゅうたんにはチリ、ホコリがなくとてもきれいな状態で維持されている。実を言うと、靴を脱いだほうがいいのか?という葛藤を少し強いられもしたのだが、よく映画とかで見る泥棒や盗人は靴を履いたまま侵入し、家じゅうを物色しているのを思い出し、自分もおんなじ様なものだからいいか・・・なんて思って靴を履いたまま今に至る。
そんなことはどうでもいいんだなんて心の中で思いながら(頭を左右に振りながら)部屋の角をめザ・・・・
そこで記憶が遮断された。
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