第2編 異世界は問題だらけ!?
第19話 始まりは終わりである。by神里伸也
落ちてる落ちてる。まじでやばいやばい某バトロワみたいにパラシュートが開かれるのでも、グライダーみたいなのを出せるわけでも、ジェット機みたいなのが背中に搭載されてるわけでもペンダントによってゆっくり落ちるわけでもない。てか神様からもそんなこと一言は言われてない。聞いとけばよかった。そんなことを思ってももう後の祭りである。
「ど、ど、どどうすればいいの?これー」
「わかんないー」
ゆんに聞いてもどうやらお手上げ状態である。風が顔の皮膚を引っ張っている。もしカメラなどで撮っていたらネタにされかねないような顔をしているだろう。
地面まではあと100メートルもない。
「うわー!」
「きゃー」
そのまま町の中央にある噴水に大きな音を立てて飛びこむ。大きな水しぶきを上げながら。なぜ噴水に飛び込んだかというと、少しでも体にかかるダメージを減らしたかったから。ほらよくマイ〇ラとかで水に落ちると落下ダメージなくなるとかあるじゃん。
街に住む住人と思わしき人物たちが集まり始める。周りから見れば『空から降ってきた不法侵入者』ということで、人が集まるには十分な騒動であったのだろう。ついでに遠くで門を守ってる衛兵が口をあんぐり開けてこちらを見てたり、頭を押さえて渋い顔をしてるひととかいましたね。いや申し訳ない。修繕にも時間がかかるっていうのに。でもねクレームはあの神様たちに言ってくださいよ。あっだから衛兵さん怖い顔してこっち来ないで捕まえないでっ。
ーーー
あそこからどのくらい時間がたっただろうか。
「おいっだから本当のことを言ったらどうなんだっ?アアッ!?」
胸倉をつかまれる。もう何度目の暴力だろうか。考えるのも飽きたからなにも考えないようにしている。
「大体この服はなんだッ!そしてその髪の毛の色はなんだッ!どこから来たッ!どんだけの建物を壊したと思ってるんだッ」
腕が剛毛で殴るたびに毛が飛び散るこいつはどうやら拷問に慣れてないようだ。きっと一般人であったらもうこの世にいないのではなかろうか。
さっきからこいつは自分の顔だけを必要に殴り続けている。そのおかげで頭がぐわぁんぐわぁんしていて、目の焦点が定まらない。
「ちっ面倒かけさせやがって、まだ一思いに殺せれば簡単だったのによッ。お前は俺ら以下だッ。」
殴り、殴り、ひとしきり殴った後息も絶え絶えに自分のことをその3つ又の足で蹴り飛ばし、牢屋から頭を前後に揺らしながら去っていった。
もう考える気力なんて残っていない。伸也は崩れ落ちるようにして眠りにつく。ことの発端を走馬灯のように思い出しながら・・・
あの時とてつもないスピードで落下していた。あの時死を覚悟したことを今でも鮮明に覚えている。そして噴水に飛び込むときも。大きな音を立て飛び込んだし、周りにも甚大な被害が出ていたのもこの目で確認した。なのにどうしてか自分とゆんが負ったけがは擦り傷くらいで、骨折していたりとかもしていなかった。これを魔訶不思議と呼ばずになんというのか・・
あのとき来た怖い目をした衛兵に案の定つかまり、王城まで歩かされた。あの時の突き刺すようでそれでいて少し哀愁も漂う目をしていた町の人の表情が今でも脳裏にくっきりと焼き付いている。
自分は直接地下牢へ。ゆんは王城へと歩みを進めた。そして今に至る。
ーーー
夜も更け、草木も眠る丑三つ時。地下牢ではこそこそ動き回る者が一人、いや二人いた。その者たちは、迷うことなく伸也のいる牢屋の前までたどり着く。明かりもつけていないのに。その者たちは伸也を一瞥すると何か小声でしゃべり始める。それは夏の夜に寂しく響く鈴虫のようであったと後々誰かが口にしていたような気がする。2人は、ひとしきりしゃべり終わったかと思うと一度顔を見合わせ次の瞬間には黒く暗いやみしか残っていなかった。
ーーー
朝日が牢屋を
「あっここ異世界だったわ。」
そこまで自宅の部屋にいると思っていた伸也は意識を自宅から異世界にもどす。ついでに窓は天井にあったため、どっちにしろカーテンを閉めるという行為は意味をなさなかったようだ。雨が降ってきたら牢屋内水浸しになりそうだな。
心なしかで腰と首が痛い。地べたに這いつくばる世にして寝ていたからだろう。
大きな伸びをして立ち上がる。昨日ぼこぼこに殴られたはずの顔は感覚が違和感というものを覚えていなかった。この寝ていた時間で治ったのだろうか?と思いつつもここに鏡などの日用品は置いてないので確かめるすべはない。
「いいや。ゆんがいたら何かしら教えてくれるでしょ。今はひとまず出ることを考えないと・・・」
そう呟いてダメもとで牢屋の扉を押してみる。・・・あかない。押してダメなら引いてみろの原理で引いてみる。【ガチャリ】すると、まるで鍵がかかってないかのように簡単に扉があく。
「てかこの扉鍵かかってなくね?」
なんと不用心なものか。それともここからは出れないから鍵なんていらないという相手の余裕だろうか。
「ひとまず様子見でいいか」
おとなしく牢屋に戻ると扉を閉める。
ーーー
半日後あたりが夕暮れに染まるまで誰も牢屋前に来る人はいなかった。
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