第9話 新たなる決意そして始まり
「ちょっと重すぎたかのぉ.....」
絶望が心を支配する。負のオーラを纏い悪いことばかり考えてしまう。
『この世界は呼び出されて、自分はおまけ。元の世界には自分が生きた証がない。今まで生きてきた16年間はただの夢として記憶の中におぼれ消えてゆく。』
『ああいっそいなくなってしまえば楽になるのかな。』
世界が暗転していく。まるで自分の人生の色を表しているみたいに・・・その世界は黒と白でしかできていない。
結局、地球という世界でも、異世界の世界でも自分の居場所はなかった。
ーーー
「そんなことないっ!」
背後から声がする。
驚いて後ろを振り向く。
自分の背後にいて、神様たちの前では決して話そうとしなかった
「そんなことないっ。例え周りが伸也君を仲間外れにしても居場所をなくしても。私は、私は、ずっと君の隣で笑う!困っていたら一緒に考える!」
全身が震える。目頭が熱くなる。自分はわかっていなかった。今まではいつも一人でいた。そのことを自分も甘んじて受け入れ、自分の意見を正当化することで改善しようとしてこなかった。
でも今は違う。元の世界の記録から抹消されても、夢の中だと否定されても語りあえる人が一人だけいる。一緒に遊んだり、話したりしたことはないにしても、同じ教室で、別々の視点から記憶を共有できる人がいる。それさえあれば現実をげんじつとして残しておけるのではないだろうか。
「すーはー、すーはー」
心が乱れているときは深呼吸をする。そうすれば心が落ち着いてくるし心に余裕ができて深く考えることができる。
白黒だった世界が多彩な色を帯び始める。赤、青、黄、紫、青、燈、藍
感知できる視覚がもとにもどってゆく。
「ありがとう気持ちが落ち着いたよ。」
「これからよろしく。ゆん」
自分はゆんさんのことをゆんと呼ぶことにした。他人としての立ち位置から一歩前進したような気がしたから。
「うん!こちらこそよろしくね!」
このとき笑顔で答えるゆんの笑顔はまぶしくて、つい目を細めてしまう。
だから見逃してしまう。一瞬見えた一筋の黒い雲を。
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