れおおじさんのこどもたち!

 「!」

 レオおじさんの家に近づきつつある中、子どもたちの甲高く、歓声に感じられる声を聴き。

 「いっくよー!それー!」

 中には、アビーの声もあり。 

 「きゃはははは!!アビーおねーちゃん、あたちも!」

 「いーや、おれっちだい!」

 「むー!!」

 続く子どもたちは、それぞれに声を上げていて。

 それら、歓声でもあり、また軽く拗ねた声もあり。

 そうであっても誰もが上げる声は、やはり楽しいもののようだった。

 遠くからでも分かることだが、開けた場所にて、アビーはちゃんと、年上らしく、子どもたちのお守りをしてくれているようだ。

 やがて、姿見えるようになったなら、赤茶色の髪の毛の少女、アビーが、沢山の、そう、ライオンを思わせる色合いの服を着た、小さな子どもたちに囲まれていて、何か遊びをやっていて。

 沢山の子どもたちは、そう、レオおじさんとエルザおばさん、そして、レオおじさんの他の奥さんとの子供。その数、……14人。

 遊びも遊びで、中心にアビーがいて、始まったらしく、アビーは手で顔を隠して、体を屈めて。

 子供たちは、歌を歌いながら、それぞれ手をつないで回りだす。

 「「うしろのしょうめん、だ~れだ!!」」

 子供たちが、歌い終えて止まり、クスクス笑いながらアビーを見つめていて。

 「えー?!誰だろー……?ええと……。」

 歌が終わり、問われても。だが、アビーは分からずじまいで。

 困惑の声を上げていて。

 思案した結果、アビーは口を動かして。

 「わっかんないや!」

 「がくっ。」

 出されたのは、結局分からないとのことで。

 見ていた俺は、落胆し、軽くバランスを崩してしまいそうになる。

 そんな俺はよそに、視線の向こうの子どもたちはからかうように飛び跳ねて。

 「きゃははは!おねーちゃん負けー!正解は、おれっちだい!」

 からかうように、アビーの丁度後ろの子供、男の子が飛び跳ねて言い。

 「!」 

 なお、その男の子は、他の子どもとは違い、ある特徴がある。頬に、傷跡が。

 ……そう言えば、と思い出す。

 以前アビーから聞いた話だが、レオおじさんの子どもの内、長男はなんと、レオおじさんがあやしている最中に、崖から落ちてしまって。

 命に別条はなかったが、あのような傷がついてしまったと。

 レオおじさんは、一番強い子どもだと自慢していたが、ケガさせたと、エルザおばさんに殴られてしまい。

 なお、本人は気にしていないようで。

 アビーたちは、まだ、遊んでいる。

 アビーは負けたなら、顔から手を外し、上げては、いたずらっぽい笑みを浮かべて立ち上がり。

 「むー!おねーちゃん怒ったぞぉー!あたしをからかったら、捕まえて、食べちゃうぞぉー!」

 熊を思わせる、両手を上げて、今にも襲い掛からんとばかりの体勢、見せて、言っては。

 聞いた子どもたちは、それが楽しいか、また歓声を上げて散り散りに駆けて。

 「きゃー!食べないでくださ~い!!」

 「にっげろぉー!怪獣アビゴンが来る!きっとくる!!!きゃははは!」

 「うー!がおー!!」

 散り散りになり、一方のアビーは、可愛らしく吠えて、捕まえに行き。

 そんな微笑ましくも思える光景に、だが、俺まで巻き込まれるようだ。

 何と、長男が俺に駆け寄ってくるではないか。

 「あ!父ちゃんと、ウィザードの兄ちゃん!そうだ!!お兄ちゃん、背中を貸して!」

 「?!」

 長男は、言って俺の陰に隠れて。

 それだけでも、ちょっと驚きだが、そのタイミングで、アビーは跳躍して、その長男に襲い掛かろうとしていて。

 ……それは丁度、俺をも巻き込みかねない状態だ。その上、反応が遅れたこともあって、俺は驚愕するしかなく。

 「ちょ?!アビー!!!わぁあああ?!」

 「?!や、大和ちゃん?!うおぁあああ?!」

 アビーの体は、俺の眼前に迫り。

 俺は、せめて静止してくれと願う声を上げたものの、遅く。

 最早、自由落下となっていたアビーの体だ、止めようがない。

 アビーもまた、叫び声を上げて。

 「むぐぅ?!」

 俺は、ついにアビーと衝突してしまった。

 日頃の鍛錬のおかげで、倒れることはなかったが、しかし、俺の顔は、アビーの胸に埋もれてしまい。

 大きい胸と、柔らかさに衝撃は免れたが、それ以上に俺は、顔を紅葉させてしまう。

 「!!……えへへっ!大和ちゃん捕まえた!……なんちて……。」

 「……。」

 一方のアビーは気にする様子もない、ただ、遊びの延長線上で、他愛もない会話をして。

 俺は、顔面塞がれて何も言えない。

 「……がはは。アビーらしいな。」

 代わりに、レオおじさんが、若干呆れ気味に言った。

 気は済んだか、アビーはひょいっと俺から降りて。

 俺の方は、ようやく視界が広がったと、安堵して。

 「……ええと。大和ちゃんごめんね、突然。」

 そんな俺に、アビーは申し訳なさそうな顔をして、俯き加減に謝り。

 俺は、首を横に振って、気にしていないという素振りを見せる。 

 「ちょっと、楽しくなっちゃったから。えへへ。」 

 付け加えに、続けては。

 俺は、まあ、アビーらしいやとレオおじさんと同意見、そっと笑う。

 一方で、レオおじさんの方は、今度は子どもたちに覆われていて。

 帰って来た父親に、子どもたちは甘えているみたいだ。

 大勢の子どもたちに覆われながらも、姿勢を崩すことはない、がっしりとその場に踏ん張って。

 かつ、その力強さ見せるように、力こぶを見せていた。

 「うぉっと!がははは!!相変わらず、元気だ!父ちゃんも負けんぞ!!」

 頭にまで、子どもたちに覆われながらも、言ってみせる。

 そこらへん、さすがだと言わざるを得ない。

 「!」

 気付くことには、アビーに。向き直っては。

 「俺が言うのもなんだけど、アビー、レオおじさんのお子さんのお守り任せっきりで、その、ごめんね、それと、ありがとう。」

 俺が言うべきものではないが、俺は俺で、自由に動いていて、アビーに子どもたちのお守りを任せて、何だか申し訳ない、お礼と謝罪を告げたが。 

 「?どうしたの?気にしてるの?変な大和ちゃん。いいよ!あたしは、皆と遊べて、とっても楽しいもん!あたしの好きなことだから、大和ちゃん、気にしないで!」

 そんな俺が不思議とばかりに、首を傾げては、察し、にっこり笑っては気にしていないと言った。

 「そっか。」

 アビーらしいや、ならば俺も、笑みを浮かべて返す。

 「ほーらー!あんたたち!さっさと帰ってきな!もうすぐ、暗くなるよ!」

 「!」

 そんな折、俺たち、いや、子どもたちに向かって声が掛けられて。

 この場にいた一同、一斉にその方向を見ると。

 エプロン姿が似合う、ライオンの女の人がいて。

 肝っ玉母ちゃんを思わせる、いでたち、エルザおばさんだ。

 「!わー!エルザお母さん!」

 「かーちゃーん!!!」

 母親の姿見るや、子どもたちは歓声交じりにレオおじさんから飛び降りて、駆け出していく。 

 子どもたちに覆われていたレオおじさんは、姿をようやく晒し。

 どうも、疲れたといった表情で。

 「ふー……。やれやれ。沢山子供を持つと、大変なもんだぁ。」

 言葉にも、滲み出てくる。

 そうした上で、腰や肩を叩き、疲労を解消しているようで。

 「あんたも!ぼさっとしないで!」

 「へーい。母ちゃんも厳しいぜ……。」

 何てしていたら、遅いとエルザおばさんに言われ。

 仕方なさそうに、声を上げて、レオおじさんも歩を進める。

 「……じゃ、あたしたちも帰ろっか。」

 傍ら、アビーが言ってきて。

 「!あ、そうだね……。」

 帰路につく言葉に、俺もまた頭を縦に振る。

 と、その言葉に、後ろ姿見せていたレオおじさんは、耳をピクリとさせ、立ち止まり。

 「おおっと!そーだ。……お前さんたちも、家に来るか?予定がなければ、だけどよ?色々と、見せたいものがあんだ。」

 「!」 

 顔をこちらに向けては、思い出したと言ってきて。

 もちろん、俺もまた、その言葉によって、思い出す。

 さっき、レオおじさんと写真を撮っていたら、何だか、気になることがる、という様子で。

 聞けば、見覚えのある構図だったとかで、それを見せようと提案してきたのを思い出した。

 思い出したなら、思い出したらでアビーの方を向き。

 「……だ、そうだけど……。どうする?」

 と聞くと。

 「!」

 アビーは、予想していたんかったようで、少し驚きに体を跳ねて。

 「うん!いいよ!」

 そうであっても、戸惑いすぐ変えて、にっこりと笑んで、同意した。

 見た俺は、レオおじさんに向き直る。 

 「行きます。」

 そう言って、レオおじさんと同じ方向に歩を進ませて。

 「おっし!……ととと。母ちゃん、いいか?」

 俺が向かうと分かり、笑みを浮かべながら俺の視線を追ったなら、先にいる、エルザおばさんに今度は聞く。 

 予定が決まったはいいが、さて、エルザおばさん的にはどうなのか。

 「!」

 視線が向けられたと、エルザおばさんは気付き、また、レオおじさんが何を求めているかをも、察し、そっと笑って。

 「ああ!いいさね!!アビーちゃんも、大和ちゃんも。二人とも、あたしにゃ自分の子供のようなものさね!なははは!」

 レオおじさんが喜ぶ答えを、言った。

 

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