束縛姉とお嬢様妹

重箱湯桶

第1話 僕と家族

「ねえ近江。あなたは私だけのもの。どこにも連れていかないわ。あぁ近江、大好きよ。姉弟で結婚できないなんて誰が決めたの」




「お兄ちゃん、私を遠ざけないで。いつもひどい妹でごめんね。ごめんねお兄ちゃん、お兄ちゃん大好き」





















 僕の名前は蒼井近江(あおいおうみ)。蒼井家の長男で15歳、高校1年生だ。長男といっても最も年上の子供というわけじゃない。かといって最も年下の子供でもない。



 僕には二つ違いの姉妹がいる。17歳、高校3年の姉、蒼井愛日(あおいあいひ)と13歳、中学2年生の妹、蒼井栗(あおいりつ)。



 僕が物心ついたときから、蒼井家には父親がおらず母方のばーちゃんの家で暮らしている。


僕の父さんは頭はいいけど酒が大好きで、お酒が入ると止まらなくなる人だったらしい。


 僕が5歳のときにお酒で会社に迷惑をかけクビになったそうだ。以来父さんは病院でお酒を断つ治療を受けているらしい。



僕の母さんは、優しい思いやりのある人だ。口数は多くないけれど、他人を思いやれる温かい人だ。


 頭がよくてプライドも高い父さんを内助の功でずっと支え続けてたんだけど、父さんが会社をクビになったときとうとう堪忍袋の緒が切れて縁を切り、僕たちを連れて実家に帰った。




 シングルマザーになった母さんだけど、大学時代から続けていた執筆活動が功を奏していまやちょっぴり有名な小説家だ。


 でも母さん的にはまだまだらしい。今も新刊を鋭意執筆中で取材に出かけている。


母さんは「自分のやりたいことを謳歌しているだけだよ。わがままでごめんね」なんて言うけれど、本当は僕たちが経済的に苦労しないように頑張ってくれてるんだってことくらいは僕にもわかる。




 ばーちゃんも母さんと同じ温かい優しい人だった。でもばーちゃんは僕が小学校に上がるころに亡くなった。お姉ちゃんはワンワン泣いていた。妹はシクシク泣いていた。母さんは、お葬式では涙は流さなかったけど家に帰ってから一晩中泣いていた。


 僕は泣かなかった。とても悲しかったけど、父親のいないこの家では僕が彼女たちを支えなければならないと思ったからだ。


 僕は蒼井家の長男で蒼井家のたった一人の男だから。

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