第13話 一体何が起こっているんだろう?

 襲撃されたという戦乙女クランの建物を外から確認してみるが、特に壊れたり崩壊したという様子は見られなかった。今朝、任務の為に建物を出てきた時と同じ様で、特に変わりがなく見える。建物を破壊される前に撃退したのだろう。


「襲撃はどうだったの? うちの子達は大丈夫?」

「突然の奇襲だったから何人か怪我しちゃったね。でも、すぐに治療したから問題は無かったよ。その他には、大きな被害も無いかな。死人も出ていないし、建物も見ての通り無事だからね」


 ティナの話によれば、戦乙女クランには人員も建物も特に大きな被害は出てない、という事なのでまずは一安心する。


 しかし、奇襲までしてくるとは。フレーダーマウスのクランが戦乙女クランの拠点を襲ってきたのは、やはり前回のクラン会合での出来事が原因なのだろうか。挑発をして黙らせたレオノールを恨んだ結果、今回の襲撃が起こった。本当に、そうだろうなのだろうか。何度か考えてみたけれど、やはりしっくりとこない。他に何か理由がありそうだと思うけれど、その理由が分からない。


 しかし、戦乙女クランを襲撃したというのも事実だろうと思う。


「レオノールは? 中に居るの?」


 そう言えばと、クランマスターの姿を探してみたけれど見つからない。建物の周辺にも居ないようだった。こんな時、前線に立って戦うような人だから居るとしたら、ティナと一緒になって辺りを警戒していそうだと思った。


 ティナに尋ねてみると予想していない、別の答えが返ってきた。


「フレーダーマウスの奴ら、私達の拠点だけじゃなくて街のあちこちを襲撃しているらしいんだよね。だからレオノール様は、何人か戦乙女のメンバーを引き連れて直接フレーダーマウスの拠点に行ったみたいなんだ。向こうのクランマスターに、今回の事についての確認しに行った」

「なんだって?」


 そういえば拠点に到着する前に街の大通りを走っていた最中に、あちこちで黒煙が上がっているのが見えていたのを思い出す。あの様子も、フレーダーマウスの仕業という事なのだろうか。


「僕らの拠点だけじゃなく街のあちこちに攻め入っているって事? 彼らの標的は、戦乙女クランじゃないのかな?」

「うん、そうみたいだよ。しかも、クラリスからの報告によればフレーダーマウスのクランだけじゃなくて、ドラゴンバスターも一緒になって暴れてるって聞いた」


 クラリスからの情報、という事は信用できると思う。ただ、フレーダーマウスだけではなく、ドラゴンバスターまで関わってきているだなんて。話を聞いて僕は、さらに驚いていた。


「あのドラゴンバスターも、なのか。どういう事なんだろう」


 王都で騒動を起こすなんて、下手するとそれだけでクランの解散を命じられるような不当行為だった。最悪の場合、関係者や責任者は死刑という重い罰が課せられるかもしれない程の事だった。そうまでする、彼等の目的が理解できなかった。


「どういうことだろうね? 何の目的があって、彼等は街の中で暴れているのか?」

「それも分からないんだよ。ここを襲ってきた奴ら、私達がいくら話しかけても問答無用で襲ってきて、話が通じなかったんだ」


「話が通じない?」

「うん、そう。ここを襲ってきた奴ら、私達の言葉には一切耳を貸さずに暴れていたから。だから黙らせる為に、全員気絶させる必要があったんだよね」


 なるほど、と僕はティナの話を聞いて理解した。建物の出入り口付近に人が倒され山のようになっているのは、そういう理由なのかと。


 ティナにあらかた話を聞いてみたけれど、まだ王都の中で何が起こっているのかが分からなかった。今回の出来事について、まだ情報不足なのだろうと理解する。


「一体、何が起こっているんだろう?」


 もっと詳しい情報が必要そうだった。事情を聞きに行っているというレオノールが戻ってきたら、更に詳しい事情を聞き出せるだろう。それまで私は、ティナと一緒に戦乙女クランの大事な建物の前に立って、辺りの警戒と建物の防衛という緊急任務を務めていた集団に合流した。

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