第99話 幼馴染への信頼はとても厚い

 いや、実はアルフォンス様とカイくんの仲が少し心配だったのだけど……。

 まさかこんなに短い時間で、アルフォンス様とカイくんの仲が改善してしまうなんて……流石としか言いようがない。

 そのことは、自分に任せろと言っただけはある……!!


 でも私の方がアルフォンス様と長く過ごしていたことを考えると、なんだか少し寂しいような気も……。


 そんなことを考えながら、少しぼんやりしているとカイくんから「ところでリア、例の件はどうしたんだ?」と声を掛けられた。

 おっと、そうだった……。


「あ、うん、それなんだけどね……」


 答えようとしつつも何となく気になって、チラッとアルフォンス様のことを見る。すると彼はそっぽを向いているものの、私たちの話の内容が気になるのか、耳がピクピクしていた。

 わぁー、お耳が動いてる、かわいいなぁ……。


「おい、続きは」


 私がアルフォンス様の様子にほのぼのしていると、カイくんが少し苛立った様子で続きを催促さいそくしてきた。

 あ、いけないいけない……。


「実はその件を調べてる途中で、少し気になることがあってね。そのことをお城の人に聞こうと思って、部屋を出てきたんだ」


 私がそう言い終えた瞬間。カイくんが何か答えるより早く、アルフォンス様がばっと勢いよく私の方を振り向いた。

 わっ、ちょっと勢いが凄くてビックリしたぁ……。


「そ、それならば!! 私が話を……」


「そうかそうか、それじゃあ一緒に話を聞きに行こうなー」


 しかしアルフォンス様の言葉を途中で遮ったカイくんが、私の両肩に手を置いて、クルッとアルフォンス様のいるのとは反対方向へと、私ごと歩き出そうとする。

 うん……? これはどういう状況かな……。


「待て、なぜ私を無視してリアを連れて行こうとする!?」


「え、何か言ってました? いやー、全然聞こえなかったな」


「き、貴様ぁ!!」


 ……さっきのカイくんのアレは、どうみてもわざとだし。

 ハッ!! 分かったコレは仲が良いゆえの、やり取りと言うやつでは!?

 うん一見、喧嘩っぽくも見える部分がポイントだね、たぶん。

 すっかり仲良くなってて、いいなぁ……。


「あー、それでリア。その内容というのは、私に聞くのではダメなのか?」


 今までカイくんの方を見ていたアルフォンス様は、何故かグッと拳を握りしめた後、私に視線を移すとそんなことを聞いてきた。


「いえ、別に大丈夫で……」


「ああ、ダメだ」


 すると今度は、私の言葉を途中で遮ったカイくんが、物凄い笑顔でそんなことを言った。

 んんー、カイくん?


「貴様には聞いていないのだが!?」


「俺が答えちゃダメとも言ってないだろ?」


「ふざけてるのか!?」


 正直、私としてはアルフォンス様に話を聞くのでも構わなかったのだけど……カイくんがわざわざダメって言うことは、何かしらダメなんだろうな。

 たぶん……。


「……アルフォンス様では、ちょっと難しいですね」


「待ってくれ、明らかに最初言おうとしていた内容とは違う気がするのだが」


「……ごめんなさい」


 私がそう言うとアルフォンス様は、何か言いたげにしつつも、それ以上何も言ってくることは無かった。

 そうしてその場が静かになると、一人だけどこか楽しそうなカイくんが、私とアルフォンス様の間に割って入ってこう言った。


「では、話もまとまったところで、我々は失礼いたしますね殿下」


「……アルフォンス様、失礼いたします」


「…………ああ」


 アルフォンス様がそう頷くと、カイくんはにっと笑いながら、アルフォンス様にむかってヒラヒラと手を振ったのだった。

 わぁー、ホントに仲が良さそうだなぁ……。


「まぁ、殿下は適当にごゆっくりどうぞー」


「…………」


 カイくんがああ言うから断ったけど、私たちが立ち去る時のアルフォンス様の姿は、どこか寂しげに見えた。

 やっぱり、最終的に仲間外れにしたようなカタチにしてしまったせいかな……。

 ああ、アルフォンス様のもふもふの耳、しゅんとしてたな……。


「で、聞きたいことって言うのはなんだよ。一体何が分かったんだ?」


「ああ、うん、それなんだけどね……」


 アルフォンス様のことは気になるものの、それはそれとして話さなければならないことがあるので、気持ちを切り替える。


 それから話をする前に………うん、周りには誰もいないね。

 周囲を確認した後に、他の人に話を聞かれないようにするため、遮音しゃおん効果と認識阻害にんしきそがい効果のある魔術結界を張る。

 これで話の内容は漏れないし、廊下で立ち話してても、まわりからは不自然に見えないはず……。

 まぁ、ここまでする必要はないかも知れないけど、念のためにね……。


 そうして私が準備を済ませたことを察したカイくんは、ちょうど目が合うと無言で話を始めるように促したので、私はそのまま本題に入ったのだった。

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