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その後はたわいもない話でひとしきり盛り上がって、お開きとなった。
可憐ちゃんと二人で帰りたい小田くんは、私たちに「消えろ」とばかりに目で合図する。
なんとなく希望は薄そうに思えるのだが、可憐ちゃんには申し訳ないけど、少しは小田くんに協力してあげようかと早々に別れた。
お会計多めに出してくれたしね。
帰り方面が同じの私と宗田くんは、人がまばらの電車に揺られながら外を見ていた。
窓ガラスに反射して映る私を見ながら、宗田くんが口を開く。
「この前は悪かった。今日は飲み過ぎてないよ。」
「わかってるよ。この前だって、私を庇ってくれたからでしょ。」
飲み過ぎて潰れてしまったあの日のことを思い出して、私は笑った。
そうだ、いつも言いそびれてしまう。
今日はちゃんと言おう。
「いつもありがとう。」
ちゃんと、宗田くんを見て言った。
窓ガラスの私を見ていた宗田くんが、こちらを見る。
視線がぶつかると、何ともいえない空気感が漂った。
「仁科、好きだよ。」
そのまま視線が絡まった状態で、熱っぽく言われる。
ぐっと息を飲むのをきっかけに、心臓が痛いほど脈打つのがわかる。
それに伴って、顔に血液が集まってきて熱くなってしまう。
やばい、今顔真っ赤だ。
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