17
「トイレ行ってきなよ。」
「…うん。」
ホームに設置されたベンチに項垂れるように座る彼に、私は声をかける。
小さく返事をするけど、立ち上がる気配はない。
気持ち悪くなるほど飲むって何なの。
これだから酔っぱらいは困るのよ。
動かない宗田くんを置きっぱなしにして、私はブツブツ悪態を付きながら自販機でミネラルウォーターを購入した。
ピザといいミネラルウォーターといい、今日は出費が多い。
ペットボトルのキャップを開けて、ミネラルウォーターを宗田くんへ手渡す。
「ほら、宗田くん。お水買ってきたから飲みなよ。」
「ありがとう。」
素直に受け取ってゴクリと飲む。
その喉仏の動きにドキリとしてしまった私は、たぶん宗田くんの酔いがうつったのだろう。
こんな酔いつぶれて迷惑極まりないのに、何故だかドキドキするなんて、どうかしてる。
「帰れる?」
「大丈夫だよ。」
こんなに不安になる「大丈夫」という言葉は初めてだ。
宗田くんはフラリと立ち上がったかと思うと、一歩踏み出す。
全然まっすぐ歩ける気がしなくて、私は思わず手を出した。
「家どこ?送るよ。」
ちょうど宗田くんちの最寄り駅はこの駅だ。
駅は知っていても家は知らない。
「悪い、仁科。」
宗田くんは力なく笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます