第30話 先生の思いと母の願い
ヒソヒソ……ヒソヒソ…
つまり、療育教室の終わりが近づくと言うことは、私がこうしてみんなと会えて話せて笑って泣いて…と言う当時の唯一の「居場所」ともお別れになってしまうということを意味していた。
みんなも同じ思いだった。
10組の親子のうち、市外からの通園だったのは私を入れて2組。
後は市内在住。。
通園していた療育センターは市の施設なので、基本的に市内在住の人が利用できる。
私ともう1人ご住んでいる地域は、当時まだ発達障害の支援の場所が 形としてなかったので、市外枠で入れてもらっていた。
今の外来療育教室が終了すると、市内在住組は希望すれば センター内の別の支援教室に移行することができた。
私は、市外だったのでその教室を利用するのが難しかった。
断られはしないのだけど、市内在住が優先で、すでに待機待ちが何人もいたので無理に近い状況だった。
最後に向けて、現状の我が子の状態、今後の事などについて何度も懇談が行われた。皆それぞれが次のステップを選択しなくてはいけなかった。
私たちはどうすれば??
先生方は、何度聞いても とても言いづらそうに地元の支援を受けれるように動いた方が良いと言われる。
でも、私たちの住んでる所はその支援が受けれる場はないんですよ?
探してみたら、相談窓口はありましたよ。。
窓口じゃなくて、今の療育支援を継続して受けさせてもらえる所がないと、この半年がもったいないよ。。?
支援は途切れるものではないよね?
正論はそうでも、厳しい現実は変わらなかった。
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
私たち親は考えた。
みんなが自分の事のように考えた。
もちろん、その頃には 先生方ともすっかり打ち解けて仲良くなり、何でも相談できるような関係になっていた。
…ある1人の保育士の先生に尋ねてみた。
「お願いすれば、この教室の支援を別の何らかの形でセンター内で受けれるように対応してもらえる可能性ってありますか?」
先生は、少しびっくりされた顔をしたけど嬉しそうな切なそうな表情で、
「お母さんたちの強い思いは、何かを変える力になるかもしれませんね……」
ゼロ……ではない?
まずは声をあげてみようか…
私たちの声は届くの?
声をあげれば何か変わるかもしれない??
今から考えると、そんな願い事がすんなりと通るはずがないんだけど。。
でも、当時の私たちは 切羽詰まっていて、必死だった。
このまま何もせずにはいられなかった。
子供のために、自分たちのために、支援を途切れさせるわけにはいかなかったんだ。
お母さんたちの思いは迷うことなく1つになった。
教室が終わる前に、みんなで直談判してみよう!!声をあげよう!
支援を終わらせないで!
センター内のどんな隅っこの部屋でもいい。
もっと短い時間になったってガマンする!
お願いです!私たち親子を引き続き助けて下さい!
支援をしてください!!
…残す教室はあと2回。。
次の教室の終わりに、みんなで先生方に直訴だね。。。
さっそく段取りを決めよう。。
時間がないね。。
ヒソヒソ……ヒソヒソ……。
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