第231話 デートの帰り
お待たせしました。
昨日は投稿できず申し訳ございません。
近況ノートに書きましたが、大雨の影響で6日の夜に避難しておりました。
取り敢えず、私は大丈夫です。
というわけで、遅くなりましたがお楽しみください!
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「あぁ~楽しかったぁ」
「それなら良かったよ」
すっかり暗くなった空。いつもより星が少なく見える。何故なら、王都がいつもより明るいからだ。
親龍祭の期間中は夜も賑わう。街明かりのせいで星空が見えにくい。でも、その代わりに王都の街並みや人の笑顔が輝いている。とても綺麗だ。
アルスと手を繋いで街を歩く。
夕食はもう済ませた。お腹いっぱい。楽しかったデートも終わり。そろそろ帰る時間だ。
賑やかなエリアから離れて、静かな住宅街に足を踏み入れる。
「あれっ? そう言えば、シランはなんであたしのアパートに居たの?」
ふと思い出して、首をかしげるアルス。住宅の明かりがアルスの
あれっ? 説明してなかったっけ?
……言ってないかも。
「実はアルスの部屋のお隣に知り合いが住んでるんだ」
「へぇー。そうなんだ。ソノラさんだっけ? なるほど。シランの女か」
何故そこで俺の女だと断言する? 俺はまだソノラに手を出していないぞ。
というか、ソノラを知っているのか?
疑問が顔色に表れていたらしい。アルスが悪戯っぽく笑って簡潔に説明した。
「引っ越しの挨拶したから」
なるほど。ソノラと顔見知りか。そりゃお隣さんだから顔を合わせる機会もあるか。一人暮らしをしていることもわかるはず。
でも、何故俺の女発言?
「お隣さんはよく家を空けてるから。シランのところに行ってるんじゃないの?」
「それはない。ソノラは働いてるし、孤児院にもしょっちゅう通っているから」
「『男女に友情は成立しない!』ってラヴリー先生が言ってた」
「恋愛小説家の言葉を全部信じないで!」
「じゃあ成立してる?」
「……」
俺はスゥーッと顔を逸らした。やっぱり、とアルスが楽しそうに呟く。
成立しているとは言えない。ソノラの友情以上の感情はちゃんと気付いている。
嬉しいことは嬉しい。でも、超面倒くさくてドロドロした陰謀渦巻く貴族社会に巻き込みたくないと思ってしまう。ただでさえ俺は複雑な立場なのに。
「お隣さんとは仲良くしておこうっと」
「……そうしてくれ」
「はーい」
アパートが見えてきた。まだ少し遠いのにアルスが立ち止まる。
「ここでいいよ。お隣さんとバッタリ会ったら面倒なことになりそうだし、フウロとラティがいるかもしれないから」
フウロさんとラティさんは厄介だ。二人に見つかって、突き殺されて撲殺されたくない。痛いのは嫌なのです。
そんな凄惨な未来は避けてやる!
「わかった。今日はありがとな。楽しかった」
「あたしも。またデートしようね!」
チュッとキスしてきたアルスはバイバイと笑顔で手を振るとアパートに帰って行った。
アルスが部屋のドアを開けるのを見届けてからその場を立ち去る。
女性の声が聞こえた。背筋にゾクッと震えが走る。
絶対にフウロさんとラティさんだ。殺気の籠った視線が周囲を探った気配がした。
多分姿を見られていないと思う。危なかったぁ。俺はそそくさとその場から離れた。
夜の街を歩いていると、自然と傍に寄ってくる女性がいた。冒険者風の女性。腰には
「殿下、あの女性は?」
「あぁーうん。ご想像通りだよ、ランタナ。俺の彼女の一人」
「やはりですか……」
「何も言わないのか?」
「逆にお聞きしますが、何か言って欲しいのですか?」
一日中俺を護衛していた近衛騎士団第十部隊部隊長の呆れと諦めの視線。じっとりと濡れたジト目。今更です、と顔にはっきりと書かれていた。
俺は夜遊び王子。娼館に通い、多くの女性と遊んでいることで有名だ。
本当に今更だな。女性が一人二人増えたところで、誰もが『それがどうした?』と言いそうだ。『また新しい女か』とため息をつかれ、蔑みの視線で睨まれるだけだ。
ランタナはため息をついたものの、瞳に侮蔑の光はない。
「何も言って欲しくないです。そして、アルスのことはジャスミンたちに言わないでください!」
バレたらお説教。黙っていてもお説教。せめてちゃんとお説教される覚悟を決めてから自分のタイミングで言いたい。
「私たち近衛騎士団は何も言いませんよ。意味がないと思いますが」
「えっ? どういう意味だ?」
「女性の勘を嘗めてはいけません」
「……」
俺はスゥーッと視線を逸らした。ついさっきも同じ行動をした気がする。
やっぱりランタナもそう思う? 婚約者たちは気付いていると思う?
女性の勘って何であんなに鋭いのだろう。
明日はソノラが出場するコンテストに皆で応援&揶揄いに行くから、早く寝たいんだけどなぁ。無理かもなぁ。
いや、まだバレてない可能性もわずかに残っているはず! 俺はそれに賭ける!
その時、酔っ払いの大声が聞こえてきた。歩行者に絡んで迷惑をかけているらしい。
「俺はなぁ~! 貴族の血を引いてるんだぞぉ~! 曾祖父が男爵なんだぞぉ~ どうだぁ~偉いだろう~。俺の言うことを聞けぇ~」
俺は隣にいるランタナに視線を向ける。
「見たことあるか?」
ランタナは首を横の振る。
「いいえ。平民でしょう」
だよなぁ。俺も見たことが無い。
貴族の血を引いている平民は実はとても多い。貴族は後継者問題のために多く子供を作る。そして、継げなかった子供は大人になって貴族位を外れ、平民になる。
まあ、家や領地経営に関わることが多いけど。
酔っ払いの男に貴族の血が流れているのかもしれない。でも、見るからに平民の酔っ払い。
平民にその発言は不味い。貴族や王族と騙るのは罪となる。最悪の場合は死刑だ。
「さっさとどうにかして警備隊に渡すか」
「そうですね。酔いが醒めれば冷静になるでしょう」
そう言うと、素早く酔っ払いに近づき、これ以上発言させないように男を気絶させるランタナさん。行動に一切迷いがない。脳筋だぁ。
酔っ払いを警備隊に引き渡し、俺たちは夜の街を歩いて帰るのだった。
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その頃、女性陣は―――
ジ「ふふふ……」
リ「うふふ……」
エ「ふふっ……」
ヒ「なんで皆不敵に笑ってるの? 綺麗な笑顔なのになんか怖いんだけど! 目が笑ってないんだけど!? こうなったら私も! ふっふっふ!」
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