第409話 聖櫃にて



モレクが黒い石に向けて手をかざすと、モレクの手の下にタッチパネルのようなものが浮かびあがる。

!!

フレイアは驚いて見ている。

そして、思わず言葉を出していた。

「・・あなた、まるでこの空間を知っているかのような動きね」

モレクはその言葉を聞きながらパネルに触れていた。

パパパ・・と触れると、黒い石がゆっくりと音もなく下へ移動して行く。

周りの空間は深い闇のような感じで、フレイアには下に行っているのか上に行っているのかわからない。

まして移動しているのかどうかさえもわからない。

・・・・

・・

しばらくして、黒い石の動きが停止したようだ。

フレイアにはわからなかったが。


モレクは黒い石から降りると歩き出す。

すぐ目の前に黒い大きな扉が現れた。

フレイアが見たところ、石とも金属ともわからない、魔石でもない、見たこともない物質のようだ。

モレクがそっとその壁に触れると、白い閃光が起こる。


バチィーーン!!


モレクの手から煙が出ていた。

「・・フッフッフ、拒みますか」

そうつぶやくとフレイアを引き寄せて、フレイアの手を取り扉に触れさせた。

フレイアにあらがうすべはない。 

黒い扉は蒼く輝くと、ゆっくりと音もなく開いてゆく。


扉の中は真っ暗だった。

モレクとフレイアが一歩入ると、ほんのりと光が降り注ぐ。

部屋全体がまるであるじの帰還を喜んでいるかのような感じだ。

フレイアはわけがわからない。

ただ、何かが起ころうとしているのはわかる。

それも想像もできない何かが。

「モレクさん・・だったわね。 いったいあなたは何をしようというの?」

フレイアがおそるおそる聞く。

「・・ハイエルフ殿。 この場所は聖櫃せいひつです。 ここで邪神王の復活ですよ」

モレクは答える。

「この扉に入るときに、あなたは弾かれていたわね。 なのに今は何ともないの?」

「ええ、私では器になりえないからですよ。 あなたは器として認められたのです。 さて、時間も惜しい。 早速始めますか」

モレクはフレイアを部屋の奥の方へと押しやる。


フレイアを乗せた乗り物が、ゆっくりと部屋の奥へと移動する。

あるところで停止。

乗り物がパッと消え、フレイアがその場で立ちつくす形となった。

・・・

動けない。 

声も出ない。

フレイアは目を開けたまま、その場でいるだけだ。

隷属の首輪はすべて乗り物と一緒に消えていた。

それなのにフレイアに自由はない。


な、何?

何が起こっているの?

私、どうなるの?

動けない・・こんな・・いやぁぁああ!!!

フレイアは心の中で叫んでいた。


モレクはそのフレイアを見て、両手を向ける。

「ハイエルフ殿、これでお別れですな。 ありがとうございます」

そう言って詠唱をしようとした。

・・・

ん?

今、軽い振動があった。

モレクは左手をかざすと、ステータス画面のようなものが現れる。

パッと映像が映った。

先程到着した山頂の映像が見える。

どうやら戦闘が起こっているらしい。


見ていると、しきりにモレクたちが入って来た岩に攻撃を加えている。

アニム王だ。

「ふむ。 余計な刺激を与えて、半端に邪神王が復活されても困りますね」

モレクはつぶやく。


◇◇


モレクが聖櫃に入っていく前。

アニム王たちが山頂に到着していた。

山頂に停泊している飛行船がある。

急いで駆け寄って行く。

当然、邪神教団員たちが邪魔をする。

無条件で戦闘が始まった。


アニム王たちとは戦闘と呼べるレベルにならなかった。

邪神教団員が攻撃をしかけてくるのを振り払い排除していくだけだ。


アニム王は到着すると、すぐにわかった。

魔素の流れが滝のように落ちていく場所。

その近くへ行くと、大きな岩がある。

その岩を少し調べてみたが、よくわからない。

時間もないだろう。

岩を攻撃してみた。

!!

アニム王は驚いた。

岩には何の変化もない。

ただの岩ではないのだろう。

そう思い、攻撃をしかけていたところだった。

そんな時に、空間に声が響く。


『王様、そんなに乱暴にしなくても入り口をお開けしますよ』

モレクの声がすると、岩のところにスッと下へ続く空間が現れる。

アニム王は少し迷ったが、迷っていても仕方がない。

アニム王、アリアンロッドなど神聖術師など5人ほどで中へ入って行った。

ウベールは山頂で邪神教団の排除に当たることになった。


◇◇

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