第407話 おっさん、やっぱ容赦ないな



武装ロイドの右腕に光の渦ができ、そのままキラキラと光の粒になって消えていく。

光が消えたところには何もない。

武装ロイドの右腕が消滅していた。

黒い霧もない。


武装ロイドがゆっくりと振り向き、テツを真正面にとらえる。

「よくもあなた・・モレク猊下からいただいた大事なものに傷をつけてくれましたね。 あなたは・・あなたは・・うがぁぁぁ!!! イリュージョン!!」

アサシンの武装ロイドが叫びながら迫って来る。

「モレク?」

誰だそれ?

俺の頭の中に一瞬言葉が浮かんだが、目の前の敵に集中

!!

俺は呼吸を整える。

ふぅ・・コォォォ・・。

遠くでテツの姿を見ているロイヤルガードのメリッサがつぶやいていた。

「・・あれは、神の息吹・・」

その直後、テツの身体を白く輝く光が覆う。


武装ロイドとの距離が縮まる。

武装ロイドは左腕を俺に突き出し、黒い針のような突起を撃ち出していた。

俺は右側に避け飛燕を上から振り下ろそうする。

!!

な、これは・・俺は何を見せられているんだ?

俺は思う。

今目の前にいるのは確か黒い武装ロイドのはず。

だが、この感覚と映像は・・一瞬の間にいろいろなものが浮かぶ。

俺が見せられていたものは、家族の笑顔の映像やフレイアの姿。

それらが笑顔のまま俺に近づいてくる。

まるで本物の人がそこにいるかのような感覚だ。

嫁はいない。

・・

わかっている。

そんなはずはないのだと。

しかし、これをリアルに見せられれば誰でも躊躇するだろう。

誰も自分にちかしい人を傷つけられるわけがない。

だが、俺が変わっているのか欠落しているのかはわからない。

実際にありえない現象という理解がある中、こんなものを見せられても、確かに心は揺らぐが意思を強く持てば問題ないだろう。

テツは気づいていないが、実際にはほとんどの人がそこをアサシンに付け込まれていた。

だが、アサシンの誤算があったようだ。


アサシンはすぐに左腕を戻し、黒い針の形を変形さえて盾を形成していた。

だが、その盾を斬り裂いて俺の光る剣が振り下ろされる。


ズバン!!


武装ロイドの左肩辺りから右足の付け根に向かって、光る剣が突き抜ける。

突き抜けたかと思うと軌道を変え、水平に武装ロイドの右わき腹から光の剣が抜けた。

すぐに俺はバックステップをして構えている。

武装ロイドは動かない。

少しすると、斬られたところから蒸気のように黒い霧が噴き出している。

!!

これはもしかして・・。

すぐに俺は後ろに向かって声を出す。

「誰か、浄化魔法をお願いします!」

!!

その声に、騎士団員たちが動いた。

「「「ホーリーバニッシュ!!」」」

神聖術師たちが魔法を放つ。

白い光が武装ロイドを覆ってゆく。

・・・

武装ロイドから噴き出していた黒い霧が、キラキラと輝きながら浄化されているようだ。

・・・

・・

武装ロイドがゆっくりと重そうに動く。

俺の方へ歩いて来ようとしているようだが、重い鉄の塊が動いているように見える。

音はしないが、きしむ音が聞こえそうだ。

「・・が、ぐ・・あなたは・・ぐぐ・・いったい・・」

アサシンがしゃべっているらしい。

「・・私のイリュー・・ジョン・・あなたにも見え・・た・・はずです。 はぁ、はぁ・・あなたは・・なんなの・・で・・」

俺はそのまま武装ロイドに向かって歩いて行き、飛燕に光をまとわせて縦真っ二つに武装ロイドを斬った。


それを見ていた優がつぶやく。

「おっさん・・やっぱり容赦ないな」

レイアは無言で見ている。

俺は飛燕を収めると後ろを振り向く。


武装ロイドはアサシンと共に蒸発していった。


騎士団員や優とレイア、ルナさんに・・誰だっけ? 

あの変な話し方の女の子たちが見えた。

ゆっくりと優たちの方へ俺は歩いて行く。

俺が近づくに従って、ザワザワと騒ぎ出し一気に噴き出した。

「「「ワァァァ!! やったぁぁああ!!」」」

「「倒したぞぉぉ!!」」

「「あの邪悪な存在を倒したぞぉぉ!!!」」

・・・・

かなり大騒ぎしていた。


優たちの方へ歩いて行きにくくなるな。

近寄って行くと騎士団員たちにお礼を言われる。

「テツ殿、ありがとうございます」

「助かりました、本当にありがとうございます!」

・・・・

・・

「・・いえ、私の力よりも浄化魔法をかけてくださったおかげです。 その方たちにお礼を言ってください」

俺がそういうと、騎士団員たちがハッとした顔をして神聖術師の方へ駆け寄って行った。

俺は優たちのところへ到着。


優の顔を見つめる。

「優、大きくなったような気がする。 ただいま」

俺はまずそう言ってみた。

「あのね、ただいまってねぇ・・まぁ無事で何より。 それよりもおっさん人間やめたのか?」

優が笑いながら聞く。

「あはは・・まさか。 ちょっと強くなってきただけだよ」

俺が答えていると、横からレアが近寄って来て話そうとしている。

「あ、テツ様、おかえりな・・・」

「テツ、無事に帰って来たな」

ルナがレアの言葉に被せて話してくる。

レアは口をパクパクさせながらルナに文句を言っているようだ。

・・・

ルナが片手でレアの口をうるさそうに押えている。

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