第302話 なるほど・・アニム王は健在なのですね



ギルド前に到着。

入口の大きな扉が音もなくスムースに開く。

レアたちはそのまま入っていったが、セーラは驚いていた。

こ、こんな大きな扉が音もなく開いたぞ。

そして、中を見てさらに驚いた。

空港のエントランスのような作りで、SF映画か何かを見ているようだった。

それほど多くの人がいるわけではない。


ホールの奥には上に行くらしい、SF映画で見たようなエレベーターのようなものがある。

レアがこのホールの受付らしきところに歩いて行っているのを確認して、すぐに後を追う。

受付が1つあった。

レアがライセンスカードを受付のパネルにかざしている。

そのまま受付から離れて、大きなパネルのある方へ近づいて行く。

セーラたちも後に続く。


レアは掲示板を見ていた。

画面にいろいろな情報が表示されている。

レアの近くにセーラたちも来て、一緒に掲示板を眺めている。

レアが掲示板を見つつ説明していた。

「セーラさん、これは掲示板というものです。 いろいろな情報や依頼が表示されますの。 おっと・・私の番が来たようですわ」

ライセンスカードを見てレアが言う。


セーラはただレアの動きに付き従っていただけだった。

何がどういう風になっているのか理解できていない。

進んでいるのか遅れているのか、文明レベルが把握できない。


レアが受付の人にうながされながら席についた。

「ようこそギルドへ。 どういったご用件でしょうか?」

受付係がそこまで言った時だった。

パネルの名前と真正面の顔を見て固まってしまった。

!!

「こ、こ、これはレア様ではありませんか。 よ、よくぞご無事で・・」

その声に、奥の部屋でガタンとやや大きな音がしたかと思うと、バンッと勢いよく扉が開いた。

ギルドマスターが飛び出してくる。

受付係の横に駆け寄ってきた。

「こ、これはレア様、よくぞご無事で。 私はこの地区担当のギルドマスターのトリノです」

ギルマスがうやうやしく挨拶をする。

早速アニム王に報告すると言って、挨拶だけすると奥の部屋へと消えていった。


セーラは言葉を失っている。

このレアという人、とんでもない人なんだという感覚を改めて肌で実感した。


レアは席で座りながら受付係に質問をしていた。

「あなた、お聞きしますが、アニム王のいる居城は近いのかしら?」

「あ、え、あ、はい。 飛行船で2時間ほどかかります」

・・・・

受付係は、最小限の言葉しか話すことができないようだ。

レアも何か話してくるのではと、微笑みながら待っていたが言葉がない。

仕方ないのでまた質問することにした。

「わかりました。 で、アニム王の居城ですが、どこにあるのでしょうか?」

その言葉に受付係が緊張しながらもパネルを取り出す。


「失礼します」

そういうとホログラムのような映像を出していた。

「レア様、今我々のいる場所がこちらになります」

北米の現在の場所が赤く点滅する。

「そしてアニム王の居城、帝都はここになります」

日本の場所が赤く点滅した。


セーラは目の前で地球の仮想球体が現れ、レアに説明しているのを見て衝撃を受けていた。

まさかあんな飛行船が行き交ってる文明で、これほどのテクノロジーを見せられるとは思わなかった。

どういった仕組みで動いているのかもわからない。

ただ、すごいという言葉しか浮かばない。

ホール奥にあるエレベーターも、先ほどから幾度となく上下している。

夢じゃないよな?


レアはその状況を聞きながら考えていた。

帝都が無事運営されている。

この場所まですでにギルドネットワークが完成しているようだ。

これは早々に帝都に移住した方がいいだろうと。

「ありがとう。 よくわかりましたわ」

レアがそういうと、奥からギルマスが出てきた。

「レア様、アニム王もお喜びでした。 何かお困りのこととかございますか?」

ギルマスが丁寧に聞いている。

「いえ、今のところはありませんわ」

レアは優雅に席を立つ。

「レア様、どちらへ行かれるのでしょう?」

ギルマスが不思議そうな顔で見る。

「いえ、今お世話になっているところへ戻りますの。 今日は、この街がどういったところか調査に伺っただけですから」

レアは背中を向けてギルドを後にする。

ギルマスも受付係も言葉を出すことなくただ見送っていた。


建物の外に出てゆっくりと歩きだす。

セーラが急いで追いかけて来た。

「レア様、どちらへ行かれるのですか?」

「あら、セーラさん。 調査は終わりましたわよ。 ご報告のために戻ろうと思っていますの。 お声をかけずに申し訳ありませんでしたわね。 少し気分がたかぶっていたものですから」

レアは実際に上機嫌だった。

これで、あの下等種族の街を離れることができる。

そう思うだけでウキウキしていた。


「レア様・・何かわかりましたか?」

セーラはえて聞いてみる。

「ええ、この街は私のいた世界のシステムで運営されているということをご報告しなければなりませんね」

レアは軽く答える。


セーラは少し、いや、かなり警戒をしていた。

もっと低級な文明社会だと思っていた。

だがどうだ。

街の見た目とは違い、そのシステムは魔法というものを取り入れて、遥かに高度な文明社会を構築しているではないか。

もしかして、私が飛行船と思っていた乗り物も、実は見た目だけで違う代物かもしれない。

セーラは情報を修正していた。


レアたちは門衛に挨拶をして外へ出た。

セーラたちも装甲車に乗り城壁の外へ出る。

「セーラさん、わたくし、今とても気分が良いので先に帰らせてもらい報告させていただきますね」

「え?」

セーラはレアが何を言っているのかわからなかった。

レアはそういうと、セーラの前から消えた。

いや、消えたのではない。

移動したのだ。

だが、セーラには見ることもできなかった。

ただ、レアの移動したであろう土埃だけは遠くまで舞い上がっていた。

セーラたちも急いで装甲車で後を追う。

レアたちはすぐに大統領の街に到着し中へ入っていった。

そのまま、まっすぐにホワイトハウス改に向かい、大統領以下ジェームズたちに報告をする。

・・・・

・・

「なるほど・・わかりました。 レア様、一つ伺いたいのですがよろしいですか?」

ジェームズが聞いてくる。


「どうぞ、ジェームズ様」

レアは優しく微笑みながら言う。

「はい。 その街ですが、我々と友好的な関係を築けますでしょうか?」

ジェームズはそれが気がかりだった。

相手が我々に自分たちのルールを押し付けてくるやからでは、敵対するしかない。

そうなれば、余計な仕事が増える。

友好的な関係が保てればそれに越したことはない。

そして、我々の知らない情報をもらえればそれでいい。

そのうち力を蓄えて、我々が世界のルールを作っていけばよい。

ジェームズの頭にはそんな考えが浮かぶようになっていた。


「そうですわね。 アニム王自身は争いを望まれる方ではありませんわ。 大丈夫だと思います。 ですが・・」

レアがそう答えながら少し言葉を強くする。

「ですが、相手に対しては鏡のように接する方ですわよ。 それに、職によっては相手の嘘を見破る職もありますので、正直なお付き合いでしたら、お互いに発展できるんじゃありませんこと」

レアはきちんとクギを刺した。

こういった下等種族は、力をつければ野心の火種を消すことができないだろうと思っていた。

事実、ジェームズも大統領もそう考えていた。


ジェームズは心臓がつかまれたような感じを受ける。

一瞬だが呼吸が止まったかもしれない。

嫌な汗が背中ににじみ出た感じだ。

だが、そんなことを感じさせるわけにはいかない。

気持を切り替えて、顔を上げる。

「わかりました、レア様。 ありがとうございます。 我々も良き隣人になれるように国づくりをしていきたいと思います」

ジェームズは微笑みながら返答する。

そして続けて、レアにお礼を言う。

「レア様、調査していただきありがとうございました」

ジェームズは立ち上がり謝意を示していた。

レアも席を立ち、自分たちの家に戻って行く。


時間は10時頃。

レアたちの報告が終わると、セーラたちも帰って来ていた。

セーラはすぐにジェームズに報告に行く。

政務室に案内される。

大統領、国務長官、国防長官など重職が並んでいた。

トーマスが口を開く。

「セーラ大尉、少し帰りが少し遅い。 どういうことか」

「ハッ。 申し訳ありません。 装甲車の全速力の移動で帰って参りましたが、レア様たちの移動に追いつくことができませんでした」

セーラが事実を報告する。

「は? 何を言っているんだ君は・・まぁいい。 で、どうなのかね?」

トーマスが聞く。


トーマスがここでセーラの情報から、レアの身体能力に気をつけていればよかったのだが、今は街の情報が聞きたかった。

ジェームズ達もジッとセーラを見つめる。

「はい。 私の見た印象ですが、街はものすごく進んだ文明です。 見た目は中世風なのですが、システムは魔法を取り入れており、SF映画のような感じだと思っていただければわかりやすいと思います」

セーラは上手うまく言葉が選べなかった。

だが、そう伝える以外に言いようがない。


大統領やジェームズ達はお互いに顔を見合わせて、ブツブツ言っていた。

「ふぅ・・で、セーラ大尉。 君が見た感じでいいのだが、もし我々と戦争となった場合どうなるだろうか?」

トーマスが聞く。

「・・国防長官。 街を見た限り、行き交う人が持っている武器は、剣や弓、杖などばかりです。 銃などを持った人物はいませんでした。 ギルドと呼ばれる情報機関のホールに入っても同じでした。 ただ、その装置がよくわからないのです。 進んでいるようでもあり、中世風でもあるのです。 移動には飛行船を利用していました。 それ以外に空を飛ぶような乗り物は見えませんでした」

セーラは見たままを報告している。


「飛行船?」

ジェームズがつぶやくように聞く。

「はい、飛行船です。 それでどうやら人を運んでいるらしいのです」

セーラがそう答えると、室内では失笑が起こっていた。

「そんな文明レベルで・・」

「問題ないだろう・・」

「身体が丈夫なだけの種族なんじゃないのか・・」

「・・バカバカしい・・」

・・・・

・・・

ザワザワとしている。

「いえ、決して文明レベルが低いという見解は・・」

セーラが慌てて発言するが、トーマスやジェームズがセーラの言葉をさえぎってしまう。

セーラは嫌な感じを覚えたが、それ以上発言する機会をもらえなかった。

「わかった、セーラ・マクダネル大尉。 ご苦労だったな」

大統領がそういうと、トーマスがセーラを下がらせた。

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