第9話 プライドと思い込みを捨てた思いやりはただ単純なヒアリングで突破口を見つけ出す。
その後、ツルハシを筆頭に新型タイムマシンで更に過去へ、天井を突破していった。
上層階には高度文明が存在し、ツルハシとシャベルは現地人達とコンタクトを行っていく。
シャベルの言った通り、上層階に行けば行くほど住人達のプライドが高くなり偏屈になっていった。
「そこを何とかお願いしますー!」
ツルハシの地に付く勇ましい土下座により、人に頭を下げて願いをこうという彼等には理解しがたい行為で圧倒していった。
一緒に同伴したシャベルも、必死なツルハシの姿を見続けた。
土下座をした所で聞いてくれる輩ではなかったが、地球の割れる人種の危機を回避した気持ちは共有出来た。
しかし現実はそう甘くなく、技術力不足の問題をどの地球も抱えており、過去の地球、更に過去の地球へ遡ってもその問題を打開出来る文明はなかった。
過去へ遡り積めて、ツルハシとシャベルは今までの中でも最も完璧で美しく高度な文明に遭遇した。
「何かようですか? 地底人の方々」
その存在は余りにも美しく光瞬き、光の丸い球体となっている人類だった。
ツルハシは透かさず服を脱ぎ土下座を行う。
「お願いしますー! どうかワイ等に力を貸してや!」
シャベルも練習した土下寝を行う。
「お願いし……ます」
プライドを噛み締めるように願いをこう。
それを見た球体は驚きよろけた様に見えた。
「ああ……何て浅ましい姿なの……こんなにも酷いものは初めて見ました。どうか頭を上げてください」
顔を上げたツルハシ達は事情を説明する。
すると光の球体は理解を示してくれた。
この美しく世界の住民は大変長寿であり、長寿であるが故に滅亡の概念へ関心を秘めている住人達だと説明してくれた。
地球が割れる現象を食い止める術を知っていたがあえてそれを行わず、自らの定めとして自然淘汰に身を委ねたのだという。
「しかし、貴女方は自然の摂理に抗い、地底から我々の元まで訪れた。そして貴方のプライドを捨て、心のそこから沸き上がる必死さに感銘を受けました」
「せやったら!」
「皆と相談させて頂きます」
光の天井人にツルハシ達は導かれ対談することとなった。
対談が終わり、タイムマシンで彼は自分の地球へと帰還する。
「良かったわね! 割れる地球のスパンを延期させられることになったわ! 止められるかわわからないけど」
「大丈夫! きっと上手くで!」
「何か確信があるの?」
「ワイの勘や」
「もう、貴方はそればっかりね」
溜め息を混じりに時間が経ち大人の女性になったシャベルは、小さくふと呟く。
「ありがとう……ツルハシ」
「何や? 何か言うたんか?」
「何でもないわよ! ほら、貴方の地球へそろそろ着くわ。貴方も若い姿に戻るからぎっくり腰も治るわよ」
「ああ……長いようで短い冒険やった。土下座からきたぎっくり腰ともお別れと考えると寂しくなるわー」
冗談混じりに二人は笑う。
ツルハシは、彼女の肩を優しく叩く。
「シャベルちゃん良くやったわ。自分は世界を救った英雄や。世界を救おうとする自分の意思でな」
「……それは違う。貴方が、人にとって一番大切な……人の真ん中にあるもの教えてくれたからよ」
「人の真ん中?」
「ふふん! 人を尊重する……思いやりやで!」
シャベルは彼に笑みを浮かべ、機内は光に包まれた。
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