第7話 終わりの証明論よりマトリョーシカを用いたか

 時間の壁を越えたタイムマシンが、イルカのように空間へと飛び出した。そこは銀色に輝く建築物が立ち並び見覚えのある黒い空が広がっていた。

 そのままタイムマシンは土の上へ雑に着地する。


「あいた!」


 タイムマシンの中を転がるツルハシ。

 特に怪我もせず彼は立ち上がった。


「あれ? シャベルちゃん?」


 船内を見渡すが彼女の姿が見当たらない。

 辺り探しても見つからず、すると突然タイムマシンのシャッターが開いた。

 開くと、目の前に水色髪のがいた。


「ツルハシ大丈夫!? ちゃんと生きてる?」


 美少女はツルハシを知ってる様に名前を呼ぶ。呼ばれた彼は美少女を細目で見つめ驚いた。


「……もしかして、シャベルちゃんか!?」

「そうよ! でもその略称は止めて!」

「えらいちっちゃくなってどうしたんや! まさか衝撃で凹んだんか?」

「そんなわけないでしょ! タイムトラベル理論で同じ存在が同一世界で被った時、移動した対象は消滅し現地の人物が残るの! 記憶は上書きされるのよ!」

「はー……よおわからんわー」

「とにかく来て!」


 幼いシャベルはツルハシを連れて一件の大きな家へ招かれる。

 家から水色髪の中年夫婦が出てくる。


「パパ! ママ!」

「おお、どうした我が娘よ! な、なんだそこの薄汚い地底人みたいな男は!?」


 夫婦はシャベルの両親らしく、シャベルを受け入れるが、父親はツルハシを見るなり家族を守るように警戒する。

 シャベルから紹介してくれた。


「私のパパよ。この地球で一番頭が良いって言われてる科学者よ!」

「どもーツルハシ言います」

「パパ大丈夫よ。この人のお陰でタイムマシンが作れたの」

「その口振り……わかった中に入りなさい」


 家へ上がらせてもらいシャベルがことの顛末を説明した。ツルハシを庇い一緒に連れてきた説明を行った。


「なるほど、地底人とはいえ娘が世話になったらしい。非常に気が進まないが感謝しよう」

「何や、ずいぶん嫌そうやな」

「気分を害したなら謝ろう。だが、謝らない。地底人に謝るなんてプライドが許さないのだ」

「めんど! 上層人は皆こんな感じなんか?」


 シャベルが話していた様に上層人は自分より階層の低い生物を見下す価値観が根付いていることをツルハシは感じた。

 シャベルが話を続ける。


「とにかく、貴方の人情? って奴で私の目的は達成したわ。その……ありがとう」


 彼女は恥ずかしそうにお礼を述べた。


「は? 目的達成?」

「そう、私はパパとママがいた時代に戻って平和に暮らすことよ」


 ツルハシは外を見ると、空は黒く染まっていた。

 この黒に彼は見覚えがある。

 空が割れた時の黒そのものだった。


「これって、シャベルちゃんの地球はもう空が完全に割れとるってことやろ? 世界は救われとらんやん! まだ終わっとらんで!」

「いいのよ……私達の科学力ではこの崩壊は防げないって証明されたから」

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