「ぜろっしゅ」というプレイヤー

 大会の話をする前に、まず私自身の話をしたいと思います。けっこう長いので興味のない方はとばしてもらった方がよいかと思います。


 私は小学生の頃からカードゲームを楽しんでいました。遊戯王、デュエルマスターズ。何故始めたのかは覚えていませんが、それが最初であったと思います。


 そんな私がWS(ヴァイスシュヴァルツ)というカードゲームを始めたのは、今から約12年程前だったでしょうか。「とある魔術の禁書目録」の初弾が発売された時です。中学生の時でした。私は当時カードゲームをやっておらず、興味も微塵もなかったのですが、友人のグループがWSをするということで私も流れでWSをすることになりました。それがきっかけです。


 今思うと、あの時が一番WSを楽しんでいたのかもしれません。私はグループ内で一番強く、何十戦とやった試合の中で負けたのは一度だけでした。FT(フェアリーテイル)に負けました。悔しいというよりも、何で負けたのかわからないという感情であったというのを今でも覚えています。


 つまり、よくある「地元で負けなし」タイプの人間だったのですが、公式の大会には興味ありませんでした。カードショップにも行ったことがなく、アニメイトでパックを買ってパックから出たカードを使ってデッキを構築していました。超ライト層の人間だったので、大会に出るという考えは一切ありませんでした。


 しかし時間が経つと人間関係も変わり、WSをやっていたグループから私は抜け、一人でやるのは忍びなかったので当時仲良くなり始めていた友人を誘ってWSを続けました。それから高校生になり、その友人とは別の高校に通うことになりましたが、縁が切れることはなく、その友人が通っているカードショップに連れて行ってもらうことになりました。


 初めて行った時のことは、よく覚えていません。ただ「こういうのがカードショップなんだな」程度には感じたくらいだと思います。友人がフレンドリーな性格もあってすぐにカードショップには馴染めたと思います。それからショップ大会にも出るようになり、WSを楽しんでいました。


 楽しんでいました、が、日常生活が忙しかったのか暫く行けない時期があり、その期間は全くWSをしていませんでした。そして、ある日友人にこう言われました。「カードショップが潰れた」と。


 具体的に何があったのかを私は知りません。色々あったのでしょう。「ああ、じゃあこれでもうカードゲームをすることは完全にないんだな」と私は思いました。しかし、友人は続けて「でも新しくショップができた」と言いました。通っていたショップの店員が引き継いで新しくお店をだしたそうです。じゃあ挨拶がてら言ってみようと行くことにしました。そこから、再びWS漬けの生活が始まったのです。


 そのショップは毎週WSの大会を開いており、私はほぼ毎週参加していました。ショップにいる人たちは殆どが私よりも年上でしたが、みなさん気さくで仲良くなっていきました。この時からです。私がWS公式の大型大会に興味を持つようになったのは。


 BCF、WGP。WS公式の大会に少しづつ参加するようになりました。当然ボロ負けです。私は「昔は」負けなしでしたが、この頃には既にショップの皆さんに揉まれていたので自分の実力のほどは弁えていました。世の中、上には上がいるものでいつだって自分はそれを見上げるばかりです。


 といっても負けて悔しいと思うことはあまりありませんでした。「あー、負けちゃったぜ」くらいに思うだけでした。別に優勝を目指していたわけでもないので特にこれといって感情が沸き上がることはありません。私は「負け慣れて」いました。


 そんな中から、私が優勝したい・勝ちたいと目標を持ったのは、ホームのカードショップが変わった後でした。通っていたショップから二、三駅ほど離れて別のショップがあると聞き、そのショップに行くようになってからです。


 そのショップに初めて行った時のことはよく覚えています。扉を開けて中を見てみると、壁にはカードゲームの賞状がいくつも飾られていて、威圧感を少し覚えました。中の人達も初めて会う人ばかりで、居心地が悪かったのを今でも覚えています。


 それから、また色んな人と仲良くなり、大型大会での優勝経験がある方たちとも交流を持つようになりました。


 そして「魔法少女まどかマギカ 叛逆の物語」が発売された頃。私はこれのタイカプで優勝したいと思いました。まどマギはそこそこ思い入れのあるタイトルで、

この弾はカートン(段ボールごと)で購入しました。仲良くなった強いプレイヤーから指導を受け、テンプレ(よくある構築・デッキタイプ)とはかなり違ったタイカプ用デッキで大会に臨みました。


 結果は、一回戦で負けました。


 対戦相手はテンプレの構築で、概ね想定通りではありましたが、こちらが上手く回らず、負けました。大会が終わった後、指導を頂いた方に負けたと告げるのがかなり重苦しく息苦しくありました。


 私はWSをやめました。


 この大会が原因ではありません。元々勝とうが負けようがやめるつもりでした。大会前から色んな人に「この大会が終わったらWSやめる」と言っていました。


 私がやめようと思ったのはWSをやっているプレイヤーの空気感についていけなくなったからです。WSはその性質上他のカードゲームよりも運がよく絡みます。なので、みな運を負けた言い訳にしがちです。私は非常にこれが気に入らなかった。当然、運が原因で負けることはあるでしょう。しかし、例えそれが真実でもそこで完結してしまったらカードゲームは終わりです。負けた原因を追究し続けない。誰しもが運が悪かったのだと言う。何故「運が悪かった」のか。誰もそれを見ようとしない。

 「○○が引けなかった」――それは構築を見直すべきだ。

 「CX(クライマックス)の配置が悪かった」――何故悪かったのか?

 直前のターンのプレイングに問題はなかったか?

 更にその前のターンは?

 集中を本当に使って良かったのか悪かったのか。考えることは山ほどある。

 運が絡むゲームだとわかっているのなら確率の勉強はしたのか?

 環境のカードプールは全部覚えたのか?

 試行回数は重ねたのか?

 それらを怠ったのは――誰だ?



 私だ。私だった。だから、やめた。



 それから暫くWSをしませんでした。結局なんだかんだGF(ガールフレンド(仮))の時にカードをいただいたことをきっかけに少し復帰しましたが、大会には出ませんでした。更にDIVAミク・ハルヒのカムバック・スニーカー文庫の発売の時にカードを揃えてデッキを組むくらいで、ショップ大会にも滅多に出ませんでした。


 そしてある日、私がWSに戻ってくる時が再びやってきました。


 ――ジョジョの奇妙な冒険の、発売です。



 

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