第98話

 突拍子もなく机に頭をガンガンとぶつけるイケメン。

 額を上げて流血しているところを目撃した占い師は早く代金分の占いを済ませてお引き取り願おう。そう考えたのだろう。


 タロットカードを取り出し、それぞれの恋愛運の鑑定に入る。

 カードを視認した砂川は、

「Eカードか……!」


 まだ賭博の世界にいた。

((((Eカードって何⁉︎ というか突然本当にどうしたの⁉︎))))

「えっと……それじゃカードを一枚ずつ選んでもらえるかしら」


 引き攣った表情で占いを強引に進めようとする女性。

 その言動は誰がどう見ても早く帰って欲しそうなものだった。

 

 言われた通りタロットカードを引いていく四人。

 裏向きのカードを一人ずつ捲り、占い師が解説していく形式のようである。

 まずは夏川雫。


「これは……嵐かしら?」

 表面のイラストを見て訝しげに言う夏川。

「貴女のカードは台風ストームね。恋愛に関してとてつもないエネルギーを持っているわ。けれどあまりに強いせいか、ずっと空回りが続いているのね。台風は通過したあと、周りを荒らして去っていくように貴女もそういう振る舞いをしているんじゃないかしら?」


 この占いにこの場にいる四人の心境こそが荒れる!

 まず当人に関しては、

(はい? よく分からないけれど、ほとんど外しているんじゃないかしら? 翔太くんへ向けるエネルギーは大きいかもしれないけど……でも作戦は概ね成功してるじゃない。空回りだって恋心が邪魔をして素直になれないだけで――まあ、そのせいで彼を下僕呼ばわりしてしまうようなことはあったけれど――周りに迷惑をかけていると言うのはちょっと聞き捨てならないわね)


 ポンコツ!! このポンコツ野郎!! 鑑賞している女神たちは額に手を当てて叫んでいた。

 一方、高嶺&砂川の心境は一言一句合致しており、

((さすがよく的中すると噂の占い師! ドンピシャじゃねえか!))


 お前らがドンピシャじゃねえか。神々はツッコまずにはいられなかった。

 もはや小森翔太を取り巻く五重奏は人智を超越した存在である彼らにとっても最高の娯楽になっていた。ちなみに神界での視聴率は驚異の97%超えである。

 ちなみに小森翔太たちの混沌が始まる前はバチェラーにハマっていた……閑話休題。


 さて、見事に意見が一致した高嶺&砂川だが、これまた可笑しな話、彼女たちが気になっていることは真逆であった。


「どうすれば上手く行くのか教えてくれ!」

「どうすればこの状態が続くの?」

 

 砂川にとって夏川と小森のゴールインはもはや悲願である。

 当然、夏川という台風の暴走を支配コントロールする術を聞きたい様子。

 一方、高嶺にとって夏川の暴風警報は発令されていた方が都合が良い。

 天災となって場を乱し続けている間に小森翔太の攻略に入ることがデキるからだろう。


 高嶺と砂川の視線が交わり、

「「あア″ん?」」

 誰一人楽しくないダブルデートが始まった。

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