第147話

 ミオは言葉少なに部屋を出た。ドキドキして興奮が止まない。




 あたりを駆けずり回りたいぐらいだった。




 しかし、これは滋養剤の力を借りたまがい物の身体、そして興奮だ。




 滋養剤がなければきっと這うことだってままならない。




 革の袋から、滋養剤の粒と四つ取り出し飲み込んだ。明日には効くだろう。これでなんとか正気を保ってジョシュアと別れることができる。




 残りは、あと一粒しかない。




 誰もいない中庭でジョシュア待っていると、やがて緊張した面持ちの愛おしい人がやってきた。何も言わずに自分のサイティを脱ぐと、ミオのも脱がせる。




 ジョシュアの目はどこまでもミオを見据えていて、外だというのに事が始まってしまいそうな雰囲気だった。




 ミオは、急いで水を被る。ジョシュアも、我に返ったようにそれに倣った。




 部屋に戻ると、マデリーンの中庭や青の部族の村で嗅いだ濃密な花の匂いがした。




「いい匂い。随分、濃厚な香油ですね」




 小机には香油の瓶の他、アシュラフの離宮にもあったクリームの瓶が置いてあってあれが情事に使われるのだと認識して、ミオは顔を反らした。




 ジョシュアが、ミオの身体に巻かれたタオルの結び目を解いていく。そして、自分のも取って抱き寄せてきた。猛った雄同士がコツンとぶつかる。




「ん、んぅ……」




「…あぁ…」




 それだけで、二人は蕩けた声を漏らしていた。




 ジョシュアが、さらにミオに腰をこすりつけてくる。水をたっぷりかぶったはずなのに、興奮で体温を上げていて愛おしかった。




「ミオさん、関係を進ませて。少しだけでいいから」




 求められ寝台に寝かされた。




 死ぬ前に誰かとこんなことができるなんて、一か月前には想像もつかなかった。

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