第63話

 押えていた宿の七日間が過ぎた。


 テーベの街に来て以来、ミオは一度も砂漠キツネの巣穴への案内をさせてもらえなかった。


 たっぷり愛撫をされて明け方に眠りにつけば、次、目覚めるのは夕方で、もうジョジュアが砂漠へと出てしまっていた日もあった。


 用意された食事を摂って、体力が回復すると、目が冴えてくる。


 一人で部屋に居られなくなって、街の入り口まで迎えに行く。


 ジョシュアは青いサイティの案内によって毎回、砂漠キツネの巣を見つけることができているようだが、日に日に顔つきは暗くなっていた。


 何か、深く思い詰めているような。


 その憂鬱を晴らそうとでもいうようにミオの身体をむさぼり、そしてクタクタにする。


 まるで、ミオの体力を失わせて、砂漠キツネの巣の案内からわざと遠ざけているかのようだった。


 今夜もまた、ジョシュアの帰りは遅かった。


 窓を開け、星の位置を見ておおよその時間を知る。


 帰りが待ちきれなくなって、また、街の入り口まで来てしまった。 


 愛しい人を街の入り口で待つが、それらしき二頭のラクダは今夜は一向にやってこない。


 刻々と星の位置が動いていき、ついには砂漠の地平線の向こうがうっすらと白み始めた。


 こんなにジョシュアの帰りが遅くなるのは初めてで、心に思い浮かぶのは毒蛇に噛まれたのだろうか、盗賊に襲われたのだとうかとよくない想像ばかり。

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