閉鎖都市

⚠注意 KEEP OUT KEEP OUT

　　─アクアリューム監視モニター映像─

　　　　　　　　　　　　　　　　　１９:１５

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●REC

それは最悪（さいあく）の目（め）覚（ざ）めだった。

何か悪い夢を見ていた気がする。

僕は寝（ね）ぼけた頭でベッドの中で目（め）覚（ざ）めた。

見た事の無い医療施設（いりょうしせつ）で目覚めていた。

看（かん）護（ご）婦（ふ）なのか女性が１人、

僕の側（そば）の椅子（いす）の上で寝ていた。

「すみません」

僕はその女性を恐（おそ）る恐（おそ）る起こした。

珍（めずら）しいブロンドの髪が目を引く美人だった。

女性は目を開け僕を見ると口を開いた。

『ソウヤさん大丈夫（だいじょうぶ）ですか？』

なぜか女性は僕の名前を知っていた。

面識（めんしき）のない女性の一言（ひとこと）で不（ふ）信感（しんかん）がつのる。

そのとき部屋に入って来た、

背の低い赤目の少女が僕を見て駆（か）け寄（よ）って来た。

『兄貴（あにき）！』

そう言って短髪（たんぱつ）の少女は、

僕にしがみついてきた。

兄貴と言ったのか？

僕に兄妹（きょうだい）はいない。

少女は瞳ひとみに涙をため優（やさ）しく僕の頬（ほほ）をなでた。

これはいったいどんなドッキリなんだ？

こいつはヤバイと心の中の何かが、

警告（けいこく）していた。

この人達（ひとたち）とかかわるとヤバイと！

『カラスさん』

ブロンドの女性が赤目の少女をそう呼ぶ。

『ファナ、兄貴（あにき）は大丈夫（だいじょうぶ）なのか？』

赤目の少女は男勝（おとこまさ）りな言葉で

そう女性に話しかけていた。

僕は急（いそ）ぎ記（き）憶（おく）を整理（せいり）する。

僕は今日普通に学校に通（か）よい普通に下校（げこう）した。

その後の記憶がすっぽり抜けていた。

確（たし）か列車に乗って。

その時.不思議な銀髪の少女の顔がよぎった。

ノワール。

幾千（いくせん）の世界で僕を導（みちび）く少女。

頭にバイザー目元（めもと）を覆（おお）う機械をつけ、

肩（かた）にぺルボペット型（がた）ロボットを乗せた少女。

それは記憶の残滓（ざんし）。

ダメだ思い出すな！

その時、激（はげ）しい頭（ず）痛（つう）とめまいが襲おそう。

それと同時に、

果（は）てしない不安と恐怖が込み上げた。

『ここはどこですか？

　君はいったい誰？』

その言葉を聞いた短髪（たんぱつ）の少女は、

絶望（ぜつぼう）に満（み）ちた顔で僕を見つめていた。

「兄貴（あにき）、俺の事覚えてないのか？

俺を１人にしないんじゃなかったのか！！」

悲（ひ）憤（ふん）をにじませ出た言葉は、

どこまでも苛（か）烈（れつ）で、切実（せつじつ）で、絶望的（ぜつぼうてき）だった。

「ごめんなさい分かりません」

それを聞いた少女は、

死刑判決（しけいはんけつ）を受けたように瞳孔（どうこう）が縮（ちぢ）まり、

狂喜（きょうき）の表情で笑（え）んだ。

🔜┣━━━━━━━━━◆──────┨