アフターストーリー21 合格発表

2月某日の朝。

場所は田辺家のリビング。

今日は川野辺大学の合格発表日ということで朝から俺と楓はリビングにノートパソコンを並べて広げていた。

もちろん合格発表のサイトを確認するためだ。

俺達の後ろでは母さんが緊張した面持ちで2人を見ている。


大丈夫だよな・・・という不安な想いを抱きつつも指定のアカウントでサイトにログイン。

大丈夫だ。きっと2人共合格だ。

緊張しながら確認した結果は・・・2人とも合格。


「やったな楓」

「ケンちゃんこそ♪」

「2人ともおめでとう。今日はみんなでお祝いね」


そう言いながら早速母さんは五月おばさんに電話をするためスマホを取り出していた。

って楓本人に合格の連絡させてやれよ・・・


俺も楓も第2志望で他の大学も出願はしていたけど前々から志望していた大学だし2人揃って合格できたのは凄く嬉しい。

それに川野辺大ならバスケ部の先輩達や亮兄、雫姉もいるしね。

ん?ってことは亮兄と雫姉は先輩ってことになるのか・・・何だか変な感じだな。


[ピン]

と俺と楓にほぼ同じタイミングでスマホからメール着信の音が鳴った。


「あ、夏川さんからメールが来た!合格だって!」

「こっちは藤原だ。森田さん共々合格だってよ!」

「そっか!じゃあ4月からはみんな川野辺大学で同級生だね」


藤原や森田さん、夏川さんとはラウムで一緒に勉強会とかもしてたしな。

みんな合格出来て本当良かったよな。


うしろを見ると母さんが五月おばさんと何やら電話で話し込んでる。

時折聞こえてくるキーワードは確実に受験とは関係ない。

楓の合格を伝えるために電話をしたはずなのに・・・長電話になりそうだな。

俺達は母さんをリビングに残し俺と楓は学校に合格の連絡を伝えに行くことにした。


「じゃ制服に着替えて来るね」

「あぁ支度できたら連絡くれよな」

「うん♪」


俺と楓はそれぞれの部屋に戻り制服に着替え久々に2人揃って川野辺高校へと向かった。

最近学校には行ってなかったけど、この道を楓と一緒に歩くのもあと少しなんだな。そう思うと少し感慨深い。


「でも、良かったねみんな合格出来て」

「そうだな。福島と村田さんも合格したって言ってたよな」

「2人とも凄いよね。でも綾とはずっと同じ学校だったら少し寂しいな」

「そっか村田さんと楓は俺が引っ越した後もずっと一緒だったんだもんな」

「うん」


俺が一緒に居たのは帰国してからの2年だけど楓は村田さんとも裕也ともずっと一緒だったんだもんな。

でも


「俺が一緒だろ?」

「そ そうだよね!ケンちゃんが一緒だもんね!」


そう言いながら楓は俺の腕に抱き付いてきた。

そして嬉しそうに微笑みながら俺に話しかけてきた。


「ケンちゃん・・・大学に合格したらケンちゃんに相談しようかと思ってたことがあるんだけど・・・いいかな?」

「ん?なんだ?」


相談?なんだろう?


「その・・・ケンちゃんの呼び方」

「呼び方?」

「うん。"ケンちゃん"って呼ぶの・・・大学通う様になったら流石に恥ずかしいかなって・・・・だから変えようかと思って」


確かに・・・親しみがあっていいけど、まぁ正直なところ大学以前に今でも結構恥ずかいけどな(まぁ慣れたけど)


「あぁそうだな。確かに少し子供っぽいかもしれないしな。構わないよ」

「うん。それでね・・・何て呼べばいいかな?」

「え?呼び方か?普通に名前でいいんじゃないか?」


それか藤原達みたいに健君とかかな。

これだとあんまり変わらないか?


「け 健吾・・・君?」

「っ!!」


少し恥ずかしいのか顔を赤くして俺の名前を呼ぶ楓。

思わず俺も照れて目を逸らしてしまう。


・・・何だよこれ。

普通に名前を呼ばれてるだけなのに凄く恥ずかしいんだけど。


「あ あぁいいんじゃないかな」

「う うん。でも・・・何だか照れるね」


おっしゃる通りです・・・

破壊力あり過ぎるぞ。


「と とりあえずさ、2人の時だけ"健吾"って呼び方にして少し慣れよう。

 だから高校ではもうしばらく今まで通りで行こうぜ」

「そ そうだね"ケンちゃん"。うん、こっちの方が何だかしっくりくる」

「確かに・・・」


何やってるんだろな通学中に俺達は。

と少しバカップルぶりを反省していると


「よぉ田辺、小早川」

「お、長谷部、それに湯川さん。何だか久々だな。2人も学校か?」


長谷部と湯川さんに声を掛けられた。

2人共何だか晴れやかな表情だ。ってことは


「"も"ってことは2人も合格の報告か?」

「そう言うことだ。長谷部たちもだろ?」

「あぁ。4月からはまた一緒だな。よろしくな2人とも」

「こちらこそ」

「あ、でもさ道の真ん中でイチャつくのは程々にな。在校生が見てるぜ」

「うっ・・・」


校舎の方を見ると通学中の生徒や校舎の中に居る生徒達が俺と楓をチラチラ見てる。俺も楓も学内ではそれなりに有名(いろんな意味で)だからな。

・・・はい。反省します。




長谷部と湯川さんと一緒に4人で職員室に向かった俺達は、それぞれの担任の先生に川野辺大学の合格を報告した。


「良かったな。田辺、小早川。

 2人の成績なら大丈夫とは思ってたけど安心したよ」

「ありがとうございます。田中先生」

「にしてもさぁ~

 仲が良いのは悪いことじゃないし2人が付き合ってるのは学内でも有名だけど・・・朝っぱらから校門の前でイチャつくのは感心しないぞ」


先生も見てたんですね・・・・すみません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る