第125話 冬の大会①

冬のインハイが始まった。

というより先週末から始まっている。

何故なら夏の大会と同様に俺たちはシード校として今週末の2回戦からの参戦となるからだ。正直前回の成績が良かっただけにマークもされているだろうしちょっと緊張している。先輩達も居ないしね。


ちなみに例年川野辺高校と全国出場を争っている森下学園は、抽選の結果俺達とは逆のブロックに入ったので幸か不幸か決勝まではあたらない。

夏の大会では俺たちの勝利で全国大会に出場することが出来たけど、その後の練習試合では1勝2敗で結局負け越している。強敵であることは確実だ。

藤原とも"決勝で会おう!"とお互いエールを送りあった。

お互いベストを尽くし約束通り決勝で全国大会出場を争いたいものだ。


「よーし集合!森下学園も気になるが、まずは週末に控えた倉北との試合だ。

 夏もギリギリの勝負だったはずだが、お前たちもやる事はやった。気合い入れて勝ちに行くぞ!」

「「おお!」」


今日は試合前最後の通常練習。牧村コーチの言葉を受け練習にも気合が入る。

練習は実戦形式でミニゲームを中心に行った。

夏の大会に比べると3年の先輩たちが抜けた穴は大きいけど俺達2年も1年も成長しているはずだ。

倉北も部員の強化だけでなく、外部の高校から選手をスカウトするなどして戦力を増強してと聞いているし1回戦も大差で勝ったようだ。

前にも増して強力になってはいるようだけど絶対に勝つ!


「裕也 パス!」

「おぅ!」

[シュパ]

「ナイスシュー!健吾」


裕也や福島とのサインプレーによるコンビネーションもいくつかバリーションを作った。前回の大会では先輩達の活躍も大きかったけど、今回は俺達が前面に立って試合を組み立てないと。


「由良!足が止まってるぞ!」

「栗田 出足が遅い!」

「吉見 シュートのモーションはもう1テンポ早くだ!」


コーチからの指示も熱がこもっている。

コーチも来年は就活だろうから今ほど練習にも顔は出せなくなるはずだ。

だからこそもう一度全国に連れて行ってあげたい。

・・・・でも流石に疲れてきたんだけど。


女子も牧村コーチの熱が伝わったのか、三上コーチが選手を鼓舞し練習している。


「ほら村田!もっと走れ!!」

「小早川!シュートだ!」

「浜野、シュートの精度が落ちてるぞ!」


コーチの声が体育館に響く(結構怖い・・・)

楓に村田さん、それに浜野さんや鮎川さん。

女子はある意味チームの柱でもあった恩田先輩が抜けたことで男子よりも大幅に戦力が落ちている。あの人はオールラウンドのプレイヤーだったことはもちろんだけど、カリスマ性というかリーダーシップも凄かったんだよな。

その後を継がなきゃならない村田さんも辛いところではあるけど浜野さんや楓含め3人で上手くフォローしあってはいるみたいだ。


---------------


「ふぅ~疲れたね」

「ほ~んと 今日ははじめっから走りっぱなしだったもんね」

「うん。私もシュートばっかりしてたから腕が痛いよ」


と楓に村田さんと浜野さん。

女子もスピード重視のチーム編成だから練習も走り込みが多いんだよね。


「お疲れ。俺達も今日の練習は気合入ってたよな」

「だな。試合前日だし軽く流すのかと思ったらいつも以上の練習量だったな」

「でもまぁ・・・あれくらい動いておかないと不安ではあるよな」


そうなんだよな。

去年も倉北学園との試合は僅差での勝利だったし不安は大きい。


「楓達の相手も夏に試合あったよな?」

「うん。2回戦であたって勝ったけど、相手のPGが凄く上手かったんだよね。

恩田先輩が上手く抑えてくれたから勝てたけど、あの子2年だからこの大会にも出てくるんだよ」

「そ。恩田先輩程は出来ないかもしれないけど、今回は私が抑えなきゃ!」


と村田さん。ちょっと肩に力が入りすぎな気がするな・・・

恩田先輩の後を継がなきゃって思いが強すぎるのかも。

と福島が村田さんの横に移動し、そっと頭を撫でた。


「ふぇ?な なに太一急に!」

「一人で背負いすぎだ。真面目なのは悪いことじゃないけど綾子が恩田先輩になる必要はない。一人で無理に抑えなくても小早川や浜野、柚木、吉見ってチームメイトが居るんだ。綾子はPGとしてチームのみんなを上手くまとめられれば勝利につながると思うぞ」

「太一・・・・」

「そうそう!一人で背負うことないよ綾」

「うん。3Pシューターの美玖ちゃんに任せなさい!」

「そうだよね。ありがとうねみんな・・・その太一もありがとう」

「お おぅ」


決めるときは決めるね福島君。

というかよく村田さんの事を見てるよな。

でも、もしかしたら自分自身に対しても同じ思いがあるのかもな。

恩田先輩とはタイプが違うけど、小宮先輩も戦術眼があり仲間の力を引き出すのが上手い先輩だった。福島もその後を継ぐのはプレッシャーあるんだろうな。

俺と裕也。それに長谷部に吉見、由良。

同じ2年として俺達も福島を盛り立てて勝ちにつなげないとな。

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