49.これがボクの新しい布陣です!

「ふぁっ!?」


【視覚共有】で海の景色を楽しいんでたら、いきなり声をかけられたんだよ。

 声の主はユーリさんだったみたいだね。

 驚いた反動で【視覚共有】が切れちゃったよ。


「ユーリさん、何かあったのかな?」

「リーンちゃんが家の扉を出したままぼーっとしてたから声をかけたの。何かしてたの?」

「うん。新しく増えたパートナーのスキルを試してたんだよ」

「新しく増えたパートナーのスキル? 差し支えなければ教えてもらえるかしら?」

「【視覚共有】って言うスキルだよ。空からの眺めを見ることができて、とっても綺麗だったよ」

「リーンちゃんがテイムできる従魔で【視覚共有】スキルって、ひょっとして……」


 その時、セレナイトが戻ってきてボクの肩に留まったよ。

 そう言えばこの子もお手入れしてあげないとね。


「……やっぱり、ナイトオウルのネームド種なのね。第1エリアじゃ他に【視覚共有】を持っている従魔はいないものね」

「そうなんだ。やっぱりレアなスキル?」

「第2エリアまで行けば、飛行系のモンスターもそこそこ出てくるから、それらのモンスターのユニーク種なら持っているわね」

「そっか。空からの偵察ができて便利そうだったんだけど」

「実際に便利よ? 問題は、【視覚共有】を使っている間は使用者が無防備状態になることと、ダメージを受けたり驚いたりすると【視覚共有】が解除されることなんだけどね」

「そうなんだね。今度から使う時は気をつけるよ」

「その方がいいわね。まあ、街中みたいなセーフティエリアで使う分には安全だから問題ないけどね。MP切れ以外は」

「……そういえばMPが結構減ってるよ。これだと、あまり長期間使ったら、MP切れを起こしちゃうね」

「そうね、MP配分には気をつけた方がいいわ。……そう言えば、リーンちゃんって戦闘スタイルはどうするか決めたの?」

「え? ボクは運動があまり得意じゃないから、パートナー達がメインで戦ってもらって、ボクはサポートに回ろうかなって思っているよ」

「それなら、いいスキルがあるわ。【MP回復速度上昇】と【MP最大値上昇】に【回復魔法】、それから【支援魔法】ね。【MP回復速度上昇】は説明するまでもないけれど、MPの自然回復速度を上げてくれるスキルよ。ライトニングシーズーも初めから持っているわね。次に【MP最大値上昇】は、その名前の通り、最大MPを上げてくれるわ。低レベルのうちはあまり上昇幅も少ないけど、高レベルになるとかなり馬鹿にならない上昇量になるわね」

「それを聞いただけで、色々と便利そうなスキルだよね!」

「そうね。魔法型のキャラを育てるなら、先の2つは必須かもね。それから【回復魔法】はその名前の通り、回復系の魔法を専門的に覚えていく魔法スキルよ。【支援魔法】も似たようなもので、バフとデバフ……味方のステータスを上昇させたり、敵のステータスを減少させたりする魔法を専門に覚えるスキルね」

「それって簡単に覚えられるの?」

「【MP回復速度上昇】と【MP最大値上昇】は初期スキルで選択もできるから、SPを使えばすぐに覚えられるわね。ただ、【MP回復速度上昇】はSPの消費が5ポイント、【MP最大値上昇】はSP3ポイントと少し消費が多めなんだけど」

「……結構多いけど、必要経費として諦めるよ。残りの2つはどうなの?」

「【回復魔法】と【支援魔法】は基礎レベルが10以上かつ何らかの魔法スキルがレベル10以上なら覚えられるわ。基礎レベルは大丈夫でしょうけど、魔法スキルのレベルは大丈夫?」

「えーと、うん、【光魔法】のスキルレベルが10を越えてるよ」

「それなら支援型のテイマーを目指すなら、その2つのスキルは覚えておいた方がいいわね。各種属性魔法で覚えられる回復魔法は、第3エリアに行く頃には効果不足になるし、支援魔法のスキルも上手く使いこなせば、戦闘をかなり優位に進められるから」

「……なんだか、少し難しそうなんだよ」

「そこは、経験を積んで慣れるしかないわね。……まあ、これが私のお薦めスキルなんだけど、決めるのはリーンちゃんだからあくまで参考程度にね」


 うーん、ユーリさんのお薦めなら従っておいた方がきっと便利だよね。

【MP回復速度上昇】がSP5、【MP最大値上昇】がSP3、【回復魔法】と【支援魔法】はSP6かぁ。

 合計で20もSPを使っちゃうけど、必要経費、必要経費……


 さて、無事、お薦めスキル4つを覚える事ができたよ。

 最大MPはまだレベル1の段階なのに、10ポイントも上昇してる。

 MPの回復速度は……気持ち上昇してるかな。

 5秒くらいで1ポイント回復だったのが、4秒くらいで1ポイント回復になってる。

 ボス戦みたいな、長時間戦闘になったら大きな差になるよね。


 回復魔法と支援魔法は、今度、狩りにでたときに試してみようね。


「それにしても、最初に会ったときにライトニングシーズーしか連れていなかったリーンちゃんが、これだけの従魔を連れているなんて感慨深いものがあるわね」

「そうなのかな? ボクとしては、ボクの野望のためにひた走ってきただけだけど」

「十分にすごいわよ。今の時代じゃ、一般的なテイマーは強力な課金パートナーを連れて、サクサクレベル上げをして、すぐに第1エリアをクリアして次のエリアに進むからね。第1エリアのモンスターをテイムして歩いているのは珍しい事よ」

「そうなんだね。こんなに可愛いモフモフ達がいるのに、気にとめないなんて人生損をしてるよね」

「流石にそこまでは何とも言えないんだけど。まあ、ゲームを楽しむという面では、サクサク進めていくのもありだと思うし、ゆっくり自分のペースで進めるのもありだと思うわ。リーンちゃんはこれからも自分のペースで楽しんでね」

「うん。そのつもりだよ」


 ボクの場合、他人のペースにあわせるのはイマイチ得意じゃないんだよね。

 特に知り合ったばかりの人にはあわせにくい。

 ……そう言う意味では、野良パーティの募集とかは参加できないかも。


「さて、そろそろお昼ご飯の時間じゃない? ログアウトしなくても大丈夫?」


 あ! すっかり忘れてたんだよ!


「大丈夫じゃないよ! それじゃあ、ユーリさん、これで失礼するよ」

「ああ、その前に。ガイルから、聞いたんだけど、あなたのリアフレがこのゲームを始めるって本当?」

「本当だよ。問題がなければ、今日の午後からスタートするんだって。ガイルさんには一応許可をもらってるけど、瑠璃色の風このギルドに誘っても大丈夫だよね?」

「ええ、体験入団という事でなら構わないわ。それで、その子はテイマーかサマナーだと聞いてたけど、本当?」

「ドラゴンを欲しがってたから多分間違いないよ。ログアウトしたら確認してみるね」

「そうね。お願い。どちらにしても、私が指導役になることは確定だけどね」

「そうなの? このギルドってサマナーさんはいないの?」

「サマナーもいるけど、彼、年度末作業で大忙しなのよ。だから、まともなログイン時間が取れなくてねぇ……」

「それで、ユーリさんが教えるんだね」

「そう言う事ね。一時期はサブジョブをサマナーにしていた事もあるから、それなりには詳しいわよ」

「サブジョブ? なにそれ?」

「基礎レベルが20まで上がったらわかるわよ。それまでは説明してもわかりにくいと思うわ。……それで、お昼にしなくても大丈夫?」


 ああっ! 話し込んでてすっかり忘れてたんだよ!!


「大丈夫じゃないから、午前中はこれで落ちるんだよ! またね、ユーリさん!」

「ええ、またね。あまり慌てないようにね」


 無事ベルの森の目標だった、フォレストキャットとナイトオウルを手に入れたボクは、とっても満足だったんだよ。

 午後からは沙樹ちゃんもゲームを始めるらしいし、楽しみがまた増えるね!

 それでは、今日もおいしいお昼ご飯のためにログアウトしようね。

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