38.モフモフ以外を仲間にするか、それが問題です
ワイルドストロベリーを量産するためには、避けて通れない問題【農業】スキル。
自分で手に入れて自分で畑を管理すればいいかと思ったけど、ボク一人で管理するのはとても大変な事がわかったよ。
そうなると、自分で管理するよりも誰かに管理してもらった方がいいらしい。
そんな問題を解決してくれるのが『アントの卵』から生まれてくるアントの進化形『ワーカーアント』らしいのだよ。
ワーカーアントに任せれば、ボクがログインしていない間も畑の管理をせっせとしてくれるらしく、畑の手入れや種蒔き、収穫まで自動で行ってくれるとか。
さらに、ワーカーアントは生産作業でもレベルが上がっていく上に、畑の生産物の中にワーカーアントのエサになる野菜類を育てさせておけば食事も自動で食べてくれるという、なんとも手がかからないアリさんらしいのです。
そのため、農業系プレイヤーでも上位陣は似たような性質を持つパートナーを仲間にしている事があるらしく、アントの卵が手に入っている現状はなんとも幸運なのです。
でも、問題は……
「……ユーリさん、ユエさん。アントってモフモフじゃないよね?」
「……気にするところはそこなんだ」
「でも、畑を使って色々育てたいなら、ワーカーアントはお手軽で優秀だよ?」
「優秀なのはわかるのですよ。でも、モフモフじゃない仲間を増やすのに抵抗が……」
「そこまでモフモフが好きなんだね……」
「このゲームを始めたきっかけがモフモフ天国を作る事ですので」
うーん、悩むんだよ。
確かにワーカーアントがいれば、難しい作業はせずにワイルドストロベリーが手に入る。
でも、モフモフじゃない仲間で従魔枠が1つ使ってしまう。
あと、虫系は結構苦手。
実に悩ましい問題なのだよ。
「うーん、リーンちゃん。ここはワーカーアントを仲間にしておくべきだと思うのよ。畑で育てられるのはワイルドストロベリーだけじゃないわ。薬草関係とか野菜類、それに果物関係も育てられるの。ワイルドストロベリーの量産を考えるなら、そういったアイテムも量産することを考えて見るのも大事よ」
「そうだね。それにアントの卵だって、マーケットで買おうとすると数万はするアイテムだからね。手に入ったのはラッキーだよ」
「むむむ……そう言われると有効活用しない訳にはいかない気がしてきたよ」
非常に都合のいいパートナーなんだよね、ワーカーアント。
……モフモフだけで全てを埋めるって言う計画が崩れるだけで。
うーん、どうしよう。
「そういえば、ユーリさんやユエさんも似たようなパートナーはいるの?」
「私はいないわね。前に庭を見せたと思うけど、畑みたいな生産系施設は設置していないから」
「私はいるよ。色々と手に入りにくい食材アイテムを育てさせてるの。買う事もできるけど、安くはないから育てられるなら育てた方がいいんだよね」
ユーリさんはいなくて、ユエさんはいるのか……
ますます悩むんだよ……
「迷っているなら、とりあえず育ててみたらどうかしら。どうしてもダメだったらテイマーギルドで引き取ってもらえばいい事だし、畑自体もそんなに高い買い物じゃないからね」
「そうだよ。まずはチャレンジしてみることも大事だよ」
うーん、先輩二人は仲間にする派だね……
そんなにお薦めされるなら、仲間にしてみるのがいいのかもね。
……アリのお世話とかどうすればいいかわからないけど。
「わかりました。それではアントを孵化させて、ワーカーアントを目指してみるよ」
「そう、決めたのね。それなら早速、孵卵器を買わなくちゃね」
「ふらんき?」
「モンスターの卵を孵すためのアイテムよ。テイマーギルドに行けば売ってるわ。Eランクになっているなら買えるから、早速行きましょう」
「待ってほしいんだよ、ユーリさん。今はまだハイネさんが庭の改装をしているところなんだよ」
「ああ、そう言えばそうだったわね。鍵を使って呼び出した家は、家主が一定以上離れると強制的に消えちゃうし、ハイネさんが作業中だと家を空ける訳にはいかないわよね」
「そういうことだね。だから、もうしばらくはこの家から出て行けないよ」
「そうね。それじゃあ、焦っても仕方が無いし、ここでお茶でもしましょうか」
「そうだね。そうしましょう。リーンちゃんの話も聞いてみたいし」
「そんなに面白い話もないと思うよ。……ところでお茶にするってどうするの? テーブルも椅子もないよ?」
「それは私が用意しているわ。ちょっと待ってね。……よっと。はい、これで準備完了」
ユーリさんが取り出したのは丸いテーブルと椅子が3脚だったよ。
そう言えば、家具を出したりしまったりする時って重くないのかな?
「ユーリさん。家具の出し入れや移動って重くないの?」
「家具の移動や出し入れは、重量をほとんど感じない設定になっているのよ。そうじゃないと、あんな2階建ての家より大きな木を出し入れできる訳ないでしょ?」
「……そう言われると、その通りだね」
ハイネさんが今でも作業をしているであろうログハウスの裏手には、ログハウスよりも背が高い木々がいつのまにか何本も立っていたよ。
多分、あれも家具扱いなんだよね。
遠目に見る限り広葉樹っぽいけど、詳しいことは近付いてみないとわからないよ。
「それじゃあ、ハイネさんの作業が終わるまでお茶にしましょうか」
「そうだね。リーンちゃんも座って一緒にお話ししましょう」
「わかったよ。それでは失礼します」
そのあとは、しばらく色々なことについて話を楽しんだよ。
ボクがネームドモンスターのファーラビットをテイムした件では、ユエさんにとても驚かれたけど。
何でも、同じようにファーラビットを捕まえて動きを封じようとする人は結構いるらしいね。
でも、ほとんどの人は捕まえるのに失敗して、反撃で戦闘不能になるらしい。
ボクが成功したのはとても運がいいことだったみたいだよ。
それから、ユエさんにもパートナー達を色々と見せてもらったよ。
ボクがモフモフ系を所望したので、モフモフ系のパートナー達を呼び寄せてもらった。
ボクも連れている犬系やユーリさんに見せてもらったライオン、虎と言ったパートナーの他にもたくさんのモフモフを見せてもらえたよ。
特に気になったのは、ペルシャ猫。
何でも、ボクのライトニングシーズーと同じで、初期から強力な魔法を使える代わりに、弱い威力の魔法は使えないんだって。
初期の種族名は『アイスペルシャ』って言う種族らしいよ。
それにアドバイスとして、とっても有益な情報をもらえたよ。
何でも、特殊スキルに分類されるスキルの中には、パートナー達が覚える事ができるスキルもあるんだって。
そんな特殊スキルの中に【手加減】も入っているらしいのですよ!
シズクちゃんが【手加減】を覚えてくれたら、テイムがとっても楽になるね!
でも、パートナーに【手加減】を覚えさせるには、『モンスターの最大HPの50%以上のダメージを1回の攻撃で与え、なおかつ瀕死状態にする』という条件を300回達成しないとダメらしいよ……
プレイヤーは100回だったのに、パートナーだともっと厳しくなるのは辛いね。
他にも色々パートナーについてアドバイスをもらったり、パートナーについての話をしていたら、ハイネさんがやってきたよ。
「待たせたな。庭の改装が終わったから確認してもらえるか」
さてあて、あの何もなかった庭がどうなっているのか楽しみなんだよ。
ハイネさんの改装なんだから、きっとすごい事になってると思うよ!
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