第218話 最強はアップデートを楽しむ㊵

 ヒヒが崩れ落ち、街戻った所で倉庫へ向かいお金を取り出す。魔法書の購入やら制作関連やらでお金に物を言わせて散財していたが、個人の露店販売で元を取り戻しつつある。

 そして、現在神殿を利用して、ドロップ品のオークションを行っている。仕切っているのは先生で、品物の名前と初期設定の値段を先生が告げると白チャで入札が行われる方式だ。


「次~。耐毒の指輪+7 300k~」

「700」

「1M」

[[ティタ] サモン最後?]

[[聖劉] 先生、オークション前に、サモンの能力説明表示して欲しい~]

「1.1M」

[[大次郎先生] あぁ、皆に見えるように一応見せるよ]

[[源次] 物理系なら入札するかな]

[[春日丸] 俺も欲しい!]

「1.1M以上いないかな? カウント~」

[[村雨] ん~。俺も欲しいなぁ~]


 5秒前からカウントを始め0になると入札者が立ち上がり先生の元へ行く。物とお金トレードで受け渡しを行い入札者が座ると次の物品がオークションにかけられる。

 オークションでまず、ティタと村雨に対するお仕置きを実行しようと決めていた。

 あの場で素直に謝れば許してあげたのに……。終わった後からでも謝罪があれば、こんなことしなくてよかったのに……などと、心にもない事を思い浮かべて、一人ほくそ笑み、刻一刻と迫るお仕置きの時間を心待ちにする。


「次~、バーストフレイム魔法書~50M~」

「200」

「70」

「はっ?」

「ちょw 本気で落としに来てるのがいるんだがw」

「210」

「無理だわ~w」

「300」


 当然だ。知らない魔法書は、お金を生み出すのに使えるのだから使わなくても欲しい! アップデート後の魔法書は、投資金額がかさばろうとも元は取れる。出し渋りは無しだ。

「305」

「320」

「……全財産超えた」

「え~。320M以上いないかな? カウントするよ~?」


 遠慮気味にカウントを開始した先生が0と言うのに合わせ立ち上がる。座る参加者の間を縫って先生の元へ行きトレードでお金と魔法書を交換した。座っていた場所に戻り、早速手に入れた魔法書を鑑定する。


=================================

 バーストフレイムの魔法書


 四次魔法職のみ覚えることが可能。

 必要Lv:40

 アクティブ、範囲魔法

 効果:灼熱の炎で範囲内全てを焼き尽くす。

    火傷の効果有。

    発動と同時に40%の確率で、モンスターに限り

    火属性の大ダメージを与える。

 範囲:着地点から20メートル四方。


=================================


 思った通り火属性の魔法のようだ。使った事が無いのでどの程度のダメージを与えるのは分からないが、範囲が広い上に今までの魔法より強力な可能性が高い。

 効果の内容は初めて見る文言もある為、四次職になってさゆたんが覚えたら実際に使ってみて貰い退陣でどの程度の効果なのか実験する必要がある。


[[さゆたん] renちゃん。魔法書売って欲しいでしゅ]

『ren。複製したの内にも一冊売ってくれw』

[[キヨシ] 俺も~]

『うちも欲しいわ~ん♪』

[[宮様] キヨシあんたお金あるの?]

[[シュタイン] 我も欲しいのである!]

[[ゼン] 魔法書っていくらぐらいするんでしょうか?]

『四次の魔法書だけど、買うの?』

『マジ? 四次の魔法なら一冊売ってくれw』


 魔法書を鑑定し終えたところで、さゆたんを始め魔法書を売って欲しいと言う声が次々上がる。四次の魔法書である事を伝えつつ、それでも欲しいのかと聞けば皆が欲しいと言っている。売るのは特に問題ない。が、複製を複製され売られるのは、せめて私が元を取り戻すまで待ってもらいたいところだ。


[[大次郎先生] ren。売るなら期日つけて?]

[[ティタ] ren。お願いが……]

[[宮様] そうね、同じ魔法書売られたら、すぐに価格が下がっちゃうし]

「次、猛毒の短剣~。10Mから」


 クラチャで先生と宮ネェに、販売開始は期日付きでと注意を受けた。

 期日については、勿論つけるつもりだ。交渉は先生か宮ネェ当たりに各クランと交渉して貰うけど。クラン用の露店については、期日明けに販売する方向で。

 クランで交渉分とクラン露店で販売した分についてはクラン資金に回す。


 既に経験値スクロールの販売で、そこそこの金額にはなっている。だが、まだまだクランハウスの改装資金には届いていないし、戦争やレイド関係についてはアップデート後の見直しで予算組み替えが必要にはなるはずなので多めに見積もっておいた方が良さそうだ。


[[ren] 一応期日つけて、今回の参加クランには販売する方向で

    ただ、うちも稼げないと困るから

    参加クラン以外の同盟とかには販売禁止にしといて?]

「12」

[[宮様] それがいいわね。後、クラン内でもお金取っていいかしら?]

「15」

「18」

「20」

[[大次郎先生] 期日については、renの元が取れ次第だよね?]

[[村雨] れん~~~~~]

「20M以上いないかな? カウントするよ~」

[[ren] 交渉は二人に任せる。クラン内は四次で装備とかの新調も

    必要になるから安い価格で売ってあげて?]

「25」

[[宮様] わかったわ]

[[大次郎先生] 交渉は私がするよ]

[[ティタ] シカトしないでー!]

[[白聖] だから、あの時謝っとけばよかったんだよw]

「28」

[[村雨] 俺のバカ!]

[[ren] よろ]

「30!」


 会話中クラチャで呼ばれるも完全無視。ティタと村雨にはお仕置きとして、一切反応しない事にしたのだ。サモン購入で資金が乏しいのだろうが、自分たちの都合しか考えない奴は嫌いなので無視だ無視。


「30M以上いないかな? カウントするよ~」


 カウントが終わり先生の元へ落札者が向かいトレードを終え戻る。そしていよいよ「次、サモン白虎ね。効果は、物理耐性、攻撃力1.2倍。200M~でいいかな?」とオークション内容を告げる。


「300」

「450」

「500」

「515」

「550」

「560」

 

 上から、黒、ロゼ、源次、ティタ、村雨、白の順で入札されている。


「700」


 700コールに驚き顔を上げそちらを見れば、なんと春日丸だった。どうしてもトレラは嫌らしい。全財産をかけてでも他のサモンを買うと言い切る彼に、クラメン達も苦笑いを浮かべる。トレラも育てばそんなに煩くないだろうが、彼の顔を見る限り限界だったのだろう。などと考えている内に、ロゼの所の大剣使いが「720」のコールを入れ、白が「800M」とコールする。

 次第に上がっていったサモン・白虎の落札価格は2.2Gだった。ロゼの所の大剣使いが落札した。


 続いたサモン・ヒヒは、能力的には遠距離用で飛距離延長、スキル時間短縮、耐火がついていた。それを白が1.6Gで落札。春日丸も頑張ったが一歩及ばず断念するしかなかったようだ。肩を落とす春日丸にベルゼがそっと肩を叩き慰める姿は、何気に友情を感じさせてくれた。


『うんじゃ、PTごとに配るからPTL取りに来てね』


 総収支から必要分の経費を引き、人数で割った一人頭26M――端数切捨てで先生がPT人数×26Mを配り終了を迎える。二度目となるレイド戦だからか、互いにお疲れ様と労いの言葉をかけ合い解散する運びとなった。





 その後の事を少しだけ……。

 オークション中無視し続けたティタと村雨は、本気でマズイと思ったのか。その日のうちに、私の私室まで謝りに来た。手土産に二抱えもあるお好み焼きを持って。

 仲間だからこそしちゃいけない事もあるよね? と聞けば、二度としないから~と今後絶対にしない事を約束させ許した。


 宮ネェに任せたクラン内の販売については、クラメンとシュタインに限り一人5Mになったそうだ。

 先生が交渉する予定の方は、現物が出来てから交渉にいくようなので今の所分からない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る