第88話 最強は覇者を志す⑳ PT戦@少数

  昨夜、やらかした二人に付き合い深夜まで狩りをしていたせいか、目が覚め虚ろな状態で室内を見回し時間を確認したところ、既に夕方で……西日がかなり傾き薄らとした月が顔を覗かせていた。

 寝起きの頭で、夕方かぁ~と考えハッと善悪のボスタイムだった! と思い出した私は、慌てて支度を整えると急いで病ゲーへとログインした。


[[宗乃助] 精錬どうだったでござるか?]

[[ren] ノ]

[[ティタ] あぁ……また消えたし!

     30本で+10=1本とかマジで萎える~TT]

[[白聖] 100M消えた。そしてゴミしか付かなかった……精錬やっぱクソだw]

[[黒龍] 結果、聞く? 宗乃助……精錬]

[[ゼン] こんにちわ~]

[[さゆたん] ノ 黒、シロ、ティタ>だから辞めろって言ったでしゅwww]

[[大次郎先生] ren。おそよw]

[[宮様] 三人とも夢見過ぎだからww]

[[ren] 善悪60Fボス]

[[ヒガキ] こんにちわ]

[[†元親†] よっすw 参加!]

[[キヨシ] おはよw いくわー!]


 クラチャで挨拶を流すタイミングでどうやら、ティタが武器を消滅させ。黒たちが精錬をしていたようだ。ぶっちゃけ30本で+10出来たならいい方だと思うが……精錬に関しては、どんまい。次ガンバレと言うしかない。


 善悪のボスと流せば、即座に食いつく金欠二人。その他のメンバーも参加すると返事を貰い参加者は、善悪の塔入口に集合するように伝えた。


 倉庫から鍛冶屋、雑貨屋を経由して補給などを終えた私は、善悪の塔入口へ向かうためポータルで【 プラークシテアー 】に移動する。

 ポータルを降り移動するためのNPCへ向かっている最中、ふと気になりクラチャでさゆたんに消失した装備についての情報を聞いてみた。


[[黒龍] だぁ! 精錬マジクソ過ぎ!]

[[ティタ] はぁ……また1からか頑張ろう]

[[白聖] 黒必死すぎwww]

[[キヨシ] ティタ。大丈夫だ! 俺なんて既に100本はやってるけど

     +10すらできてないからw]

[[ren] さゆたん。消失した靴って何?]

[[大次郎先生] キヨシ>お前は強化の仕方を見直せw 生贄いれろ?]

[[宮様] キヨシって、1個ずつでしょ? 出来る訳が無いわよw]

[[さゆたん] +17 スペルス マジック シューズでしゅよ?]

[[キヨシ] 生贄入れるだけの余裕が無いwww]

[[†元親†] マジ?? +17?]

[[ren] 相場300~450M?]

[[宗乃助] +17は痛いでござるな……]

[[さゆたん] 大丈夫でしゅ。renちゃんから移動速度の+19借りたでしゅよw

      詠唱は3秒ぐらい違うけど、防御力は一緒でしゅ~w]


 黒が必死過ぎて面白い……なんて事を思い。聞いてみれば、やはりメイン装備だったらしく最低でも300Mの代物だった。

 NPCへ到着して善悪の塔の入り口へ50,000ゼルを支払い移動する。


 そこには既に、チカ、キヨシのコンビが来ていた。

 その顔色は非常に悪い……だが、チラチラとこちらを見てくるキヨシ。何か言いたそうにモジモジするチカの様子に、面倒そうなことを頼まれると言う予感をヒシヒシと感じた。


 こう言う時の予感は当たる……できる限り、二人からゆっくりと距離をとる。


 数十秒後、次々来るクラメンたちに心底感謝しながら、全員が揃ったのを確認した私たちは今回も、2PTに別れ連合を組んだ。

 相変わらず賑やかなクラチャをBGMに、善悪の塔51Fから60Fまでを時間にして約40分ほどをかけ登る。

 

 54Fから55Fの階段に到着したところで、ディティクションを打ち上げバフの更新を行った。

 トランスパレンシーを入れ直し55Fに登ったと同時に、密談が届いていることに気付き何気なくタップした。


”キヨシ” ren~。お願いがあるんだよぅ~!

”†元親†” ren……真剣に頼みがある。


 あー。見なきゃよかった……。本気でそう思い深い深い溜息をひとつ零し二人へ返事をする。


”ren” お願いって何?

”ren” 頼みって何?


”キヨシ” さゆの装備の……

”†元親†” あー。あのさ……さゆたんの……


 どうせ、さゆたんの装備の補填の手伝いだろう? とは思うも、もしかしたら違うかもしれないと考えて何かを聞いた……が、やはりさゆたんの事だったらしく、歯切れ悪い感じで狩り行くのを手伝って欲しいと言われた。


 確かに二人で狩りに行くと言っても前衛と言うよりは、壁役が欲しいところだろう。その気持ちは分かるのだが、私はこれでも後衛の部類に入るはずだ。

 

 だが、今回は相当に反省している事だし、無碍に断るのも可哀そうかな? とほんの少しだけ優しさを見せ、ひとつだけ条件をのむのならばと伝えた私に、二人は即座に飲むと返事をした。

 私が伝えた条件は ”時間がある時なら手伝う” と言う至極簡単なことだった。


 狩りをするのは好きだし、今日の夜にはクランハウスの結果もでる。それ次第では資産がハウスにほぼほぼ持っていかれることにもなる。

 それ故、毎日狩りには行くつもりなのだが、毎日二人を連れてとなると、なんというか気分的に嫌だったため、時間がある時ならと条件を付けたのだ。

 わかった。と素直に返した二人の返事を見て、密談のタブを閉じた。


 60Fへ到着し、三つのチームへ別れボスを探し徘徊した。グランドロールが居なくなってからと言うものここのボスは放置されている事が多い。おかげで多少時間を過ぎてもボスが残っておりいつ来ても狩れる。


 いつも通りと言うか、今回チカとキヨシがしっかりとやる事をやったので、いつも以上に安定してボスを狩り終えた途端、私とティタ以外のクラメンが二人を驚愕したように見つめ「どうした? 頭でも打ったのか?」と各々が二人を心配していた。

 ドロップは、ゼルとスクロールのみだったが……こればかりは、仕様なので仕方が無いと思っておく。


[[ティタ] スキル書もでないぃぃぃ!]

[[†元親†] なんでだぁ。魔法書がない(涙]

[[キヨシ] うぉぉぉぉ。ゼル増えたぜ~w] 

[[大次郎先生] お疲れ。全員、帰還してな?

       それと今日のトーナメント戦どうする?」

 

 先生の帰還指示に、我に返ったらしい皆が帰還するのを見送り最後に私も帰還した。魔法書スキル書に関しては本当に運でしかないため、年単位で通えばでるよ? と伝えておいた。


[[ティタ] 昨日、シロが言ってたやつでいいんじゃない?]

[[さゆたん] 3・3・4で別れるでしゅか?]

[[白聖] 俺はなんでもいいよw]

[[†元親†] おー。おもろそうw]

[[宮様] そうね。別れて出てみましょう]

[[宗乃助] 賛成でござる]

[[大次郎先生] だったら、ゼンとヒガキも入れようw]

[[キヨシ] なんでもいいぜ~w]

[[ゼン] は?]

[[ヒガキ] え?]

[[大次郎先生] 二人入れれば丁度4で別れられるでしょ?w]

[[黒龍] 二人も参加させるのはありだな。PKの練習になるしな]


 トーナメント戦についてクラチャで会話をする。

 折角だからと、昨日シロが言っていたように少数でPTを組み出場することになった。


 組み分けはどうする? と来たティタに先生が、適当でいいんじゃない? と言ったことから傍にいた宗乃助、シロ、ゼンさんにPT勧誘を飛ばしこの4人で参加することにした。


 折角なのでゼンさん、ヒガキさんも入れようと先生が言い強制的にPTへ入れられた二人は、焦り無理ですと何度も何度も言っていたが、全てスルーされていた。


 もし、このゲームにスルーと言うスキルがあるのであれば、うちのクラメンは私含め全員限界突破した上、MAXまで上がっているかもしれないとひとり脳内で妄想しつつ笑った。

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