第25章 賀原絹代の気持ち
〜賀原絹代の気持ち〜
私が誰かに執着するなんて、特定の人に対してまた会いたいと思うなんて。
私にもこんな感情があったんだ。
なぜ私は初めて会ったライさんに対して、あんなにも饒舌になったのだろう。緊張の糸が切れて、気持ちのダムが崩壊したみたいだった。
これからも会いたいと要求する私に対してライさんは
「春花さんが望むなら、喜んで話し相手になります。」
といってくれた。
私は改めて自己紹介をした。
「ホントの名前は、賀原絹代です。よろしくお願いします。」
「絹代さんですね、わかりました。」
「連絡先を教えてください。」
私がお願いすると、
「すみません、連絡先を交換するのは多分ルール違反になります…。僕は本来、女性スタッフとコンタクトを取ったりしません。
僕達の個人的な繋がりがバレたら、僕も絹代さんもペナルティーを受ける事になると思います。最悪クビになるかもしれませんが、どうしますか?」
「あ…そうですよね、どうしましょう。」
「絹代さんが仕事の時、僕はいつも側にいます。絹代さんは知らないと思いますが僕はいつもホテルの近くで待機しています。スタッフに何かあった時の為です。」
「知りませんでした。」
「ですから、絹代さんさえ良ければ、仕事が終わってから会いませんか?」
「お忙しく無いのですか?」
「お客様がスタッフを尾行していないかを確認したり、スタッフの方から要望があって、お客様に説明やサービス内容の念押しをする場合もありますが、スタッフの安全が確認できれば僕はその場を離れるだけですから。
ただシフトが午前の場合は、午後にもう一件セキュリティーに行く事もあります。でも、午後からのシフトならそれ以上シフトが入る事はありません。それに、お客様に謝礼を渡すのはだいたい2・3日後ですから。」
「私達はいつもライさんに見守られていたのですね。本当にまったく知りませんでした。」
「それが仕事ですから。」
「では、午後からのシフトの後に会いましょう。A駅はどうですか?そこで落ち合いましょう。田山さんとの受け取りが済んだ後だと、30分はかかりますがいいですか?」
「大丈夫ですよ。ではA駅の南口にしましょう。」
友達と呼ぶには余りにも おぼつかない、そんな関係性に不慣れな2人だった。
私は目立つのが嫌で、着替えをロッカーに入れて、仕事の後に着替えるようにした。黄色いワンピースは余りに目立ち過ぎる。
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