第12章 病院
白を基調とした病院内は清潔感あふれ、輝いていた。
我々は指定された裏口から入り、院長に会った。
院長はさわやかに笑いかけながら挨拶をした。
「院長の早瀬です、どうも。」
白い歯がキラリと光る、端正な顔立ちのイケメンだった。
「賀原絹代さんの事をお聞きになりたいと?」
「ハイ、賀原絹代さんがご遺体で発見されました。ご存知ですか?」
先輩は院長の顔を見つめながらこう聞いた。
「え?そんな……。いえ、知りません。知りませんでした。」
院長は手で顔を覆った。
「賀原絹代さんはこちらでアルバイトをしていたんですよね?どんな仕事内容です?」
「あの、その、外国人男性の健康な精子を採取するお手伝いをしてもらってました。すごく人気があって。担当マネジャーから、ずっと連絡が取れないとは聞いていましたが…。
まさか亡くなったなんて。信じられません。仕事に嫌気がさして居なくなってしまったのかと思っていました。いつ?いつの話しですか?」
「昨年の12月15日です。その日の事を覚えていますか?」
「え?あ、いや、えぇと。スケジュールを………。あ、診療日でした。あ、あの、こう言った事をお聞きになると言う事は、事件なんですか?」
院長は額の汗を拭った。
「そうです。何か周りの人や客との間でトラブルはありませんでしたか?」
「え!え?いや、えぇと。特に聞いてません。あ、あの子は【
大人しくて、素直で、人気があったんです。男性達から。一番人気だったと思います。常連客もいました。口も硬いし…。いや、まさか…。ちょっと待ってください。
担当マネジャーを紹介します。」
院長は奥の部屋に入り、誰かに電話を始めた。
電話を終えた院長は汗を拭きながら、
「案内します。」
と言った。
院長は部屋を出ると、バックヤードを通って同じビルのひとつ上の階へ我々を連れて行く。
「おぉ、便利ですね。」
先輩が感心していると、
院長は
「あ、風営法もちゃんとしてます。」
と言いながら扉をノックした。
扉には【田山調査事務所】と書いてある。
院長は
「診療時間がありますから、すいません、あとはコイツに聞いてください。失礼します。」
そう言って扉を閉めて出て行った。
部屋には中年の男が一人立っていた。
我々に近づくと男は
「田山です。」
と言いながら握手を求めてきた。
少し強面だが、彫りの深い日本人離れしたイケメンだ。
我々は各々握手をし、ソファーに腰かけた。
先輩が
「田山さんのルーツはどちらですか?」
と聞くと、
「日本と、多分東ヨーロッパ。ちょっと中東もはいってるかな?複雑なんだよ、俺もわかんない。」
と田山が答えた。
「はぁ、そうですか…。あぁ、早速ですが田山さん、賀原絹代さんはご存知ですか?」
「春花ちゃんね、驚いた。どうして?かわいそうに。」
「それを調べています。昨年の12月ごろですが、賀原さんに変わった事はありませんでしたか?」
「12月ねぇ、うん、その頃から連絡取れなくなった。」
「昨年の12月15日ですが、賀原さんはこちらでアルバイトをしていましたか?」
「確認するから、ちょっと待っててよ。」
田山はタブレットを取り出して操作している。
「あー、入ってるね。12月15日。2時から2時間コースで。そう、この日から連絡取れない。待ち合わせにも来なかったし。」
「会う予定があった訳ですね?」
「うん、終わったら受け渡しまでが仕事だから。」
「何をです?」
「精子。」
先輩は少しだけ姿勢を正して、
「その話し、我々にも分かるように出来るだけ詳しく教えてください。」
と田山に頼んだ。
「あぁ、そうだね。この仕事はじめたのはだいたい2年くらい前だよ。あのプロジェクトのお陰で需要があったからね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます