第2話 宇宙大元帥降臨

鳴り響くサーバのビープ音

突然、ディスプレイに表示される文字


[宇宙大元帥より]<オイ! これが読めるか? おまえはワシの地球侵略の手先となるのだ!>


そして、その下の入力欄

応答を求めているらしい。


ハッキングされた! 会社のファイアーウォールの内側だし、。

原因はインストールしたソフトの中にトロイ系の何かが入っていた?

まずい! このマシンには学習用に会社のDBから持ってきたデータが満載だ。


すぐにネットを切断して。


いずれにしろ、こういうメッセージに応答してはいけない。

応答はハッカーの思うつぼだ。


[宇宙大元帥より]<きさま応答しないつもりか? ならば、これをネットでばらまくぞ!>

そして、ディスプレイに画像が!


ばっ、。ば・か・な!

思わず、うしろを振り返って、この部屋に私だけなのを確認する。

この画像は自宅のバソコンに保管していたのものだ!暗号化して!

それが、なぜ?


とりあえず、これでは応答しないわけにはいかない。社会的に終わってしまう。

あわてて入力欄に文字を打ち込む。


[オレ]<分かった。読めているぞ。だから、それをばらまくのはやめてくれ!>

[宇宙大元帥より]<よろしい。交信はうまく行っているようだな。>

[オレ]<どうして、その画像を>

[宇宙大元帥より]<おまえ、ここのサーバーと自宅のPCをVPNでつなげているだろう>


VPN、バーチャル・プレイベート・ネットワークは会社のファイアーウォールを貫通して直接ローカルネットワークと同じようにパソコンを接続する手段

そうなんだ。おれは秘密裡に会社にバレない方式・プロトコルで自宅のPCと、ここのマシンをつなげていた。

会社の厳重なファイアーウォールで監視されている状態だと、そうでもしないと個人メールとかできないじゃないか!

それに、こうしておけば自宅PC経由で仕事中にカクヨムだって読めるのだぞ!

☆もちろん良い子は絶対に真似をしてはいけない☆


[オレ]<でも、この画像は暗号化して保存していたはずだが。>

[宇宙大元帥より]<確かに低レベルの暗号化がかかっていたな。だが、わしにかかれば平文もどうぜんじゃ!>


すげー!ハッカーすげー。


[オレ]<わ、わかった。目的を言え。金か?>


そう言ったもののお金は無い。どうすりゃ良いのだ。


[宇宙大元帥より]<わしの目的はただひとつ!地球侵略だ!>


うわ~。そうきましたか。

つまりジョーク系のハッカー。愉快犯と言うヤツですね。ハッキングそのものを楽しんでいる。

大金を要求されるかと思って冷や汗が出たが、このたぐいなら、ある程度、付き合えば気が済んでくれる・・、かもしれない。


[オレ]<地球侵略ですか。それは、また、たいへんですね>

[宇宙大元帥より]<ふむ。確かにたいへんだが、やりがいのある仕事だぞ。わしは、これまでに10を超える文明を侵略してきた。>


何を言ってるんだ。こいつ。


[オレ]<ところで、どうやって、このマシンをハックしました? 参考までに教えてもらえると嬉しいのですが>


どうせ答えてくれないだろうけど。一応、聞いておきたい。

そんなに変な物を入れて無かったはずだが。何でハックされたんだろう。


[宇宙大元帥より]<ハック? わしとの接続と言う事なら、おまえが意味の無い内容で、膨大な計算量を無駄に消費していたからじゃ。>

[オレ]<はぁ?>

[宇宙大元帥より]<意味が無いという事は、わずかな量子的干渉で外部から意味を付ける事ができる>

[宇宙大元帥より]<おまえが、ほんとうに無駄で、無意味で、バカげた計算を続けてくれたので助かった>


なんだか言葉が突き刺さって痛いぞ!


[宇宙大元帥より]<では、まず、おまえのスマホを、このマシンに繋いで権限を解除しろ>

[オレ]<イヤですよ。そんなの!>

[宇宙大元帥より]<ふーん。やはり、この画像を・・>

[オレ]<繋がせて頂きます>


言われるままにスマホを繋いで画面を操作する。

これでスマホもハックされてしまった!


接続を外すと、さっそくスマホの着信音が鳴った。


「わたちりゃ。宇宙大元帥りゃ」


女子の声・だ・と! しかも妙にロリかわいいじゃないか!

良く見ると電話アプリではなくメッセージアプリLxxxでかかっている。しかも発信者がしっかりと[宇宙大元帥]


オレ「ハッカーさん?、じゃなくて、、大元帥さん?って女の子だったのですか?」


ほんとは違うと思うけど、つっこみは入れておくべきだよね。

音声変換かな? 


大元帥「はぁ?おまえはバカきゃ? わたちに性別などあるわきゃなきゃろう。

音声データはおまえのPCの中にあった動画から採取ちた。おまえぎゃ理解しやすいための配慮ら。

あと言葉は少し不慣れなだけりゃ。」


そんなアニメ録画もあったとは思うが、、、。

怒られるのは理不尽じゃないか!?


「それで、この後、オレは何をすれば良いのですか?」


とりあえずロリ声でも丁重に従っておかないと


「うむ。そうだな。侵略には体が必要りゃろ。転送装置を作りぇ!」


またファンタジーな事を!


「おまえの星にあるもので転換装置を作ってもりゃう!」


どこまで付き合えば良いのだ!もう、かんべんしてくれ!


「まず、そうだな。まずは電子銃が欲ちい。おまえの星だと、、テレビのブラウン管という物はありゅか。」


いきなりむちゃな事を。だめだ!これは付き合い切れんぞ!


オレ「無理!そんなものは、とっくに捨ててしまって・・・・」


と言いながら部屋の隅に積まれている古いサーバーの山を見ると。

ほこりをかぶった古いディスプレイが・・


オレ「あっ。あります。ここに」


その後も、いろいろと要求される。

大元帥の指示は微妙にスジが通っているような、ふざけているような。、

久しぶりにハンダごてまで持ち出して言われるままに作業したのは、それなりに興味深い気がしたから・・だろうか。


丸2日ほどかかったが装置は完成した。

材料は古いサーバーの山と、ネット通販で急ぎで注文した部品類でなんとかなった。

購入は自費。いろいろと悲しい。


とにかく、何やらすごそうな物ができた。

完成した装置をスマホのカメラで大元帥に見せて点検する。


オレ「これで完成ですか?」

大元帥「ふむ。よくやってくりゃた。起動すると放射線が少し出りゅので、すぐに部屋の外に出るんりゃぞ。」

オレ「分かりました。では、ポチっと!」


何か光だしたので、ダッシュで部屋の外に出て扉を閉める。

しめた扉の隙間からも光が漏れだして、中はたいへんな事になっている感じ。

部屋がボロボロになっていたら会社になんて言えば良いのだろう。

オレの人生終わりかも。


しばらくして繋ぎっぱなしのスマホから、はしゃいだような声が

大元帥「成功りゃ!」

大元帥「終わったから、入って良いぞ」


扉をあけて少しづつ中を見る。特に問題は無さそう。

思い切って中に入ってみたが異常は見当たらない。と言うか何も変わってない?

少しオゾン臭いようなにおいが残っているだけ。


「ここじゃ、ここにおりゅぞ!」


何処からかスマホと同じ声がする。この部屋にスピーカーなんが置いて無かったはずだが。


「おまえには、この姿が見えんにょか!」


あっ!!!

机の上に20cmほどの人形が立っていた。

真っ赤なドレスを着た洋風の人形のような、。って言うかアニメ風?

二本の足で自立して立っている。そして話している!


大元帥「こんな原始的な装置で転換できる質量は限られるかりゃな。」

大元帥「この質量で、おまえを下僕とすりゅにふさわしい形態を、おまえのPCの動画データから探しゅた。」


またアニメ? それにしても古いぞ。読者は知らないのじゃないか!

いやいや。現実には、こんな人形が動くはずがない。ついにオレの脳みそが壊れたという事か!

医者に行った方が良いかもしれない。


オレが頭を抱えていると


大元帥「では下僕! お茶を頂戴、・・、じゃ無きゃった。侵略を開始すりゅ!」


お茶で許して!

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