第2話 カップ麺、いただきます。
一時間目は正直、時間ぎりぎりの滑り込みセーフだった。
当たり前だがもちろん授業は、真面目に受けたさ。
講義も終わって、ガヤガヤと人が教室から出ていく。
「ふあわ~うあぁ~。――――」
少し背伸びをしていた皐月の前に、ワカメパーマに黒縁メガネの男が近づいてきた。
「おう皐月!今日はちょいとばかし遅かったんでねーの?」
「いやー、それがさなんか変な手紙がポストに入っててさぁ。」
ほらこれ。と、机に先ほどの便せんを置いた。
「なんだなんだ、ラブレターかあ?どーれどれ、皐月君の唯一の友人であるこの僕が直々に見てしんぜよう。」
「ほかにも友達くらいおるわ!」
まったく心外だ。
とはいえ、ほかに名前らしい名前もあがらないのが悲しい・・・。
こいつとは入学式の時からの仲だ。
講義も大体同じものを履修してたことから、なんとなく一緒にいたのが始まりである。
「何したんだよ、お前?」
「俺だってなんのことやらさっぱりだ。」
皆目見当もつかない。
「宛先間違いとかは?」
「それが、これ見てよ」
便せんにはしっかり『卯月里 皐月様』の文字。
「お前の名前だな。」
「ちなみに悪戯の線も考えた。でも悪戯にも思えないんだよなぁ」
「そりゃそうだ、一体全体どこの暇人がそんな無駄なことするっていうんだよ。」
陽キャとして大学に君臨しているやつらならともかく、からかったって毒にも薬にもならん俺らだ。
わざわざこんな手紙を、あえてバリバリの陰キャの俺の家まで届けるメリットなんてない。
「よく分からんが、捨てるか?」
「いや、とりあえず待っとく。」
なんかあったとき警察にもっていけるしね。
ぐうー
盛大に腹の虫がないた。
「そろそろ腹減ったな。僕、どっか適当に食ってくるんで、また。」
なるほど、いつの間にか結構な時間が経っていたようだ。
あばよー。と去っていくヤツの後ろ姿を見つめる俺。
俺も昼めし食いにいったん家に帰るか。
下宿先のアパートまで歩いて10分くらいだから…
時計を見る。
12時30分
俺もそろそろ帰ろう。
「なに食おっかなあー。カップ麺まだ残ってたっけなぁ…。」
ポツリとつぶやき、家路を急ぐ俺であった。
にゃー・・んなーんごろごろ・・。
「—――後ろからずっとついてこないでよ!ばれちゃうじゃない!」
ふにゃふにゃうにゃーん。
「あーまた見失うー!」
これもまた、俺の耳には届かなかった以下略。
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