第16話 公爵令嬢は成認式に出る 2

さて、開場の時間になり、どんどん列が前に進む。


思ったよりも早く自分の番になり、受付の人と挨拶をする。


「早速なのですが、こちらの魔導具に手を当ててください。」


そう言って、係の人は机の上の魔導具を指した。


小さなレジスターが背合わせになっている様な形で、レジキーのある辺りに大きく魔法陣が書かれている。


そこに手をかざすと、魔力の有無、属性、魔力量が反対側に表示されるという。


こちら側からは画面は見えない。


何これ、めっちゃ気になる!調べたい!


「この魔導具、後日お借りする事は出来ませんこと?」


「大変申し訳ございません。

この魔導具は、成認式の時以外使用を禁じられておりまして、例え国王陛下であってもこの魔導具の持ち出しはする事が出来ないのです。」


ちぇっ、借りられないのか。


「普段はどちらへ保管されているの?」


「申し訳ございません、その質問にはお答えする事が出来ません。」


「この魔導具を操作して良い方というのは、決まっていらっしゃるの?」


「成認式を任された王国直属の魔導師のみでございます。」


「この魔導具は」


「失礼致します、お嬢様。

次の方がお待ちになっておいでです。」


しまった、つい好奇心に駆られて質問攻めにしてしまった。


「ごめんなさい、これで宜しいですか?」


そう言って魔法陣に手をかざす。


すると、係の人が何か慌てた様子で他の人を呼んでいる。


どうした、機械トラブルか?


あ、魔導具トラブルか。


「あ、ありがとうございました。

先へお進み、一番前のお席へお座りください。」


私が質問攻めにしたせいで少し時間を食ってしまったけど、入場は無事終わった。





次の目的は大きめの個室を借りる事。


成認式の会場には、貴族や遠方から来た人用に個室や大部屋などの待機部屋がある。


私自身には特に必要ないけど、ある目的の為にどうしても使いたかった。


「ねえ貴方、こちらで一番大きな最上級部屋を借りたいのだけど、用意して頂けない?」


こういった交渉は、お母様に任せた方がいい。


「大変申し訳ございません、只今最上級部屋は既に全て使用中でございます。」


私が後ろに並んだり、入り口で質問している間に、いい部屋全部取られちゃったみたい。


でも、出来れば最上級部屋がいいんだよ。


「どうしても今の時間だけ使わせて頂きたいの。

お礼も後程致しますので、何方かに交渉して頂けませんこと?」


「か、かしこまりました。

少しばかりお時間を頂戴致します。」


こうしてお母様が交渉してくれているうちに、私とリッカは別行動をとる。


とある人物を20人程連れてくる。


見つけ次第声を掛けて、定数を集めてお母様の元へ。


戻ってきた頃には、お母様は交渉に成功していた。


「連れて参りました、お母様。」


「では、部屋へ参りましょう。

皆さん、付いていらっしゃい。」


そう言って、最上級部屋の中に入っていく。


そこは、バスケットゴール程もある大きな部屋。


装飾や照明も最高級品を使ってある。


大部屋より大きな個室ってどう使い切るんだよ。


連れてきた人たちは、目を見開いてキョロキョロしている。


その人物とは、ドレスを着ていない子供達。


折角の晴れ舞台にドレスを用意出来なかった貧しい家の子や孤児院の子達を集めて、私のドレスを着せてあげる。


勿論、私が今後着ようと思わないフリフリドレス。


「折角の成認式だというのに、貴女達はドレスを用意する事が出来なかったのね。

余計なお節介かもしれないけど、もし私の着ていたドレスで良ければ、これを着て成認式に参加してみない?」


それを聞いた子供達は、顔をパァッと明るくし笑顔になった。


同伴していた親達がひどく驚いた様で、


「お節介だなんてとんでもない!

本当によろしいのですか?」


と声を震わせながら言った。


「勿論よ。

お古になってしまうので流行とはズレてしまうかもしれないけど、このドレスは差し上げるから、来年以降ドレスを着れない子達に譲ってあげて頂けると嬉しいわ。」


「これはフランドールの案よ。

お礼なら娘に言ってあげて頂戴。」


「…ありがとうございます!

この御恩は、一生忘れません!」


親達はそう言って涙を流していた。



豪華な部屋でメイドにドレスを着せてもらう。


お姫様の様なシチュエーション、女の子ならきっと誰もが憧れる。


一生に一度の思い出を素敵なものにしてあげたい。


決して、フリフリドレスを大量に処分したいとか、そういった理由ではないよ?


実際、ドレスを着て髪を結ってもらった女の子達は皆んな、幸せそうなとてもいい笑顔をしている。


「喜んで頂けて良かったですね、お嬢様。」


「ええ本当に、私も嬉しいわ。」


「皆んな素敵な笑顔ね。

こっちまで笑顔になってしまうわ。」


私達も笑顔になっていた。



子供達を会場へ送り出した後、急いで部屋を片付けて、元々部屋を使っていた方にお返しする。


そして、私たちは会場へ行き、席についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る