第9話 公爵令嬢は再び思い出す
部屋に戻ってティータイムを終えた私は、再び机と向かい合っていた。
リッカってば、ポテチと一緒に甘いお菓子も用意してくれるという、スーパープレイをかましていた。
リッカロッカ…恐ろしい子!
甘い物としょっぱい物を交互に食べると0カロリーだと誰かが言っていたのを、ふと思い出した。
そんなわけないんだけど、そう思い込みたくなる程、甘いとしょっぱいの無限ループにハマるのは必至だ。
そんな事は置いといて、夕食までの時間、朝の続き、つまり俺の記憶をまとめておこう。
大学に入学した俺は、ファミレスでキッチンのバイトをしながら勉学に励んでいた。
元々ショートスリーパーで、一日4時間も寝れば充分だったので、バイトをしていても勉強に支障が出る事はなく、勉強とバイトの両立が出来ていた。
ただ、生活環境はというと、だいぶ不規則というか、だらしない食生活になってしまっていた。
ファミレスの賄い以外は、ほぼジャンクフード。
バイトのない日は一日3食インスタントラーメンという日もままあった。
給料日前でお金が足りなくなりそうな時は、スーパーの一袋30円のうどんに麺つゆをぶっかけて、給料日までをしのいでいた。
食生活が荒れると太る人と痩せる人がいるけど、俺の場合は後者で、乱れた食生活を続けていくうちに、元々細身だった俺は、栄養失調で更にガリガリになっていった。
大学卒業時期には、周りが心配するほど痩せこけて、骨皮筋衛門だった。
大学院に行ってからは、更に生活が不規則になっていった。
院に泊まり込んで徹夜で研究に没頭する事が多くなり、食事や睡眠を取るのを忘れる事が多くなっていった。
段々と家に帰るのも面倒になってきて、家に帰らなくなった。
そうしたら、使いもしない家の家賃を払い続けるのが馬鹿らしくなって、家具を処分して、アパートを解約、大学院に泊まり込みのフリをして住んでいた。
大学院を卒業してからは、研究所に就職。
流石にアパートは借りたけど、風呂なしトイレ共同の激安アパート。
更に、家具はほぼ用意せず、布団が敷いてあるくらい。
元々酷い生活をしてたんだけど、更に不規則で杜撰な生活になっていった。
そんな生活を長年続けていたもんだから、段々と風邪を引いたりお腹を壊したりと体調を崩す事が増えていった。
ただ、どんなに体調が悪くても、自分の好きな事をするには 好きではなくてもしなくてはならない仕事を完璧にする必要があった。
自由とは、義務を果たした人が得られる、制限範囲内で最大限に表現できるものだと俺は思っている。
だから、食う寝る時間も惜しんで、求められた多くの仕事をこなして、数々の結果や成果を出していった俺は、次第に自分の好きな研究が出来るようになっていった。
そしてあの4連休。
研究所を借り切って、食べる事も寝る事も忘れて研究にのめり込み、切りのいい所まで出来たと気が抜けた瞬間、眠気と疲れに一気に襲われて、今朝に至る。
…改めて見ると、俺の人生、というか生活ぐっちゃぐちゃだな。
あーあ、俺が夢だったんなら、もっとたくさんジャンクフード食べときゃ良かった。
もし私が夢なら、ジャンクフードの有り難みと美味しさをこれでもかと堪能してやる。
もし転生したのだったら…
俺は死んでしまって、切りのいい所までで途中のままの研究は放置されて、長らく会っていなかった家族や数少ない友達には何も言えてない…
自業自得なんだけど、こんな事ならもっと生活に目を向けてやればよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます