第2話 公爵令嬢は思い出す

原田輝行は、裕福でも貧乏でもない一般的な家庭の三人兄弟の長男。


3歳下と6歳下に弟がいる。


父親は工場の作業員、母親は保険会社の営業員。


性格は好奇心旺盛。


趣味は実験、研究。


知らない事を知るのが楽しくて、出来ない事が出来るようになるのが嬉しくて、『わからない』事を調べるのが大好きだった。


幼少期の俺は、扉があれば開いて、穴があれば手を突っ込んで、隙間があれば物を入れて、蓋があれば開けて、ボタンがあれば押して、知らない事やわからない事は「なんで?」と何でも聞いていたから、母親は相当手を焼いたらしい。


特に、父親のお気に入りの腕時計を分解した時は、悲鳴をあげていた。


ちゃんと元に戻したのに、この時は人生で一番叱られた。


でも、この性格、母親に迷惑ばっかりかけてた訳じゃなくて、ちゃんと役にも立っていたんだよ。


両親とも帰りが遅くなることが多かったから、小学校の頃から家事が出来るようになってた。


物覚えがいい方で、何事も極めたい性分だったから、いかに早く、いかに上手に、いかに効率よく、いかに楽に出来るかを常に考えてたから、家事スキルは中学生の時点で母親を超えた。


すごく感謝されてたけど、何となく悔しそうにも見えて、何かを諦めた顔もしてた。


学業はというと、運動はボチボチだったけど、勉強は小1から高3までずーっと1番だった


特に好きだったのは美術と理科。


モテ期は小学校の頃で、自由研究で小型の手動洗濯脱水機を作った時。


中学以降は、ネクラのオタクだと思われてて、バスのタイヤの上の席的なポジションだった。


別に、ネクラでもオタクでもなくて、単に自分の好きな実験や研究に没頭してただけなんだけど。


工作や自由研究はいつも先生が目を見開いて、なんかどこかに展示かエントリーするから持って帰るなと、よく没収されてた。


そんなこんなで、「この学力と創造力と探究心はうちの大学が最も必要としている」とか言われて、入学金、学費免除で大学が決まった時、両親と先生方が大喜びで垂れ幕作ってた。


お互いの喜びの視点は違ってたんだけども。


で、大学に行く事になるんだけど、学校が遠いから下宿したいと両親に言ったら、「通学費なら出すけど、下宿代は出さん」て言われた。


俺が下宿するのを嫌がったのは、家事をする人がいなくなるからだったと思う。


仕方がないから、バイト生活で下宿代を捻出することにした。


そしたら案の定、俺のいなくなった家は大変な事になったらしくて、度々呼び出しを喰らった。


でも「頑張れー」だけ言って、大学入ってから成人式の時以外一度も家に帰らなかった。


俺は俺で、初めの頃はちゃんと自炊してたんだけど、ここで出会ってしまった、人生最大の友と。


そう、ジャンクフード。


なんてったって、時間とコスパが最強。


しかも激ウマ。


インスタントラーメンは、たった2分茹でるだけで完成。


お値段驚きの5食300円。


安売りの時に買えば、もっと値段を抑えることが出来る。


外食だって、早い!安い!美味い!の三拍子。


牛丼はワンコインでお釣りが出るし、ハンバーガーに至ってはたったの100円。


カップ麺やスナック菓子を常備して、小腹が空けば、いつの時間もコンビニのカウンターフーズと本格100円コーヒーがお出迎え。


忙しい時はどこにいても電話一本で出来たてピザが手元に届く。


なんて素晴らしいんだ、ジャンクフード!




とか考えてたら食べたくなってきた。


この世界には、ジャンクフード的な食べ物はないのかな?


後で調べてみよ。


フランドールになってまだ初日なのに、ふとジャンクフードが懐かしいと思ってしまった。


そうしてジャンクフードに想い浸っていたら、いつの間にか家庭教師の先生方が来ていた。

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