ティファニーが欲しすぎる
芝生 ねこ
第1話 年下の夫
誰か、私の夫に、ティファニーのダイヤモンドバイザヤードの買い方を教えてくれないだろうか。
私の2歳下の夫は、草食男子だ。
いや、超草食男子だ。
付き合うまでも、結婚までも、なんとなく流れに乗ってできてしまった。
うちの夫は、婚約指輪も用意せず、プロポーズも用意せず、親への挨拶もせず、結婚できてしまった。
それは、私が、超お節介の肉食女子だからだ。
今までの誕生日プレゼントだって、zozo townで欲しいものを見せて、私の目の前でポチらせている。
夫が何もしなくていい流れを作った張本人が私であることは間違いない。
婚約指輪は確かに要らないと言ってしまった。
プロポーズも、私が何回も聞いていた「結婚する?」に対して,なんの特別感もない通っている居酒屋で,ついに彼が頷いてしまったことで成立してしまった。
しかし,夫は,プロポーズをサプライズでしようなんて,発想がそもそもない。
そもそも,私を驚かせようとか喜ばせようという発想がない。
夫は穏やかな毎日に喜びを感じるタイプであるのだ。わかっている。
そんな夫だから結婚したのだ。わかっている。
でも、友人の結婚式で、友達の左手薬指に光るダイヤモンドを見た時、絶対にプロポーズしてくれなそうな友達の彼が指輪の箱をパカって開けてくれた瞬間の話を聞いて、友達の照れくさそうに話す顔を見た時…
「うらやましい」
と,どうしても思ってしまうのだ。
と同時に、
「うちの夫は私と結婚するために何もしてない」
と思ってしまうのだ。
その気持ちをぼんやり抱え続けたまま、これからも彼と一緒にいるのだろうか。
このまま結婚生活を送り,死ぬ直前にもぼんやり、「あの人は、私にダイヤモンドをくれたことがない」とか思っちゃうんだろうか。
いやいやいやいや。
夫は私にダイヤモンドを送る通過儀礼をすっ飛ばしている。
いや、夫はそんなことはどうでもいいと思っているし、むしろキザに思えてしまって、やりたくないと思っているのだろう。
そんな人だからこそ、結婚したし、それでいいじゃないかって気持ちもある…
いやいやいや。
とにかく、私が、彼からダイヤモンドを送られる喜びを味わいたい。
彼にティファニーのダイヤモンドを貰うことを心に決めた。
ぜひ、私の知らないところで手に入れて、私を驚かせてほしい。
ティファニーのダイヤモンドの写真は見せた。
ティファニーの店舗があるところも教えた。
「渋谷にあるんだね、へー」
夫は答えた。
それから、早一ヶ月。
私はまだ、ダイヤモンドバイザヤードを手に入れていない。
誰か、私の夫に、ティファニーのダイヤモンドバイザヤードの買い方を教えてくれないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます